第15話 新たなプレイヤーとクエスト:アリの巣退治1


「深山、起きてるか? あんたに客が来ているぞ。防衛ゲートで待たせている」


 翌朝、朝食をとっているとジェーンが扉をノックして来客が来ていることを知らせてくる。


「そいつは名前を名乗ったか?」

「プレイヤーと名乗っていたぞ、あとノース・ダイナーのメッセージを見たって言ってたわ」


 ジェーンから客が来ていると言われたが、この世界に俺の縁者はいない。

 すぐにドアを開けずに誰が来たかドア越しに問うと、ジェーンは来客がプレイヤーと名乗り、ノース・ダイナーのメッセージを見たと言っていたと答える。


「深山さん……他のプレイヤーさんですよ!」

「……確かに俺達の客だ。会いに行く」


 ジェーンの言葉を聞いて俺と桐山はノース・ダイナーのメッセージを見たプレイヤーに会いに行く。


 地上の廃材で作られたバリケードゲートの前にぼろ布を何枚も繋ぎ合わせたフード付きのマントで身を包んだ人物がいた。

 フードを深くかぶり、更に下に俯いて誰にも顔を見せないようにしている。


 バリケードの見張り台にいた防衛隊の人員がフード姿の人物に俺達が来たことを知らせるが、フードを脱ぐ様子はない。


「深山、あやつ知り合いか? 顔すら見せようとせぬ。声からして女性のようじゃが……何を聞いてもお前達に会わせろとしか言わぬ」


 防衛隊長のグランパが深山に声をかける。

 俺達に会いに来たフード姿の人物が何を言っても顔を見せようとしない事、とにかく俺達に会わせてくれとしか言わないと伝えてくる。


「ああ、俺達の客だ。まずは車の中で話し合う。集落にはすぐにいれさせない」

「わかった……何かあれば叫べ」


 車を指さしながら集落に入れさせず、車の中で話すというと、グランパはゲートを開けるように合図しながら何かあった時には叫べと言った。


「ふーん、あんたたちがプレイヤー?」


 ゲートが開き、俺と桐山がぼろ布のフード姿の人物の前に立つと、ぼろ布のフード姿の人物は俺達だけに顔を見せるようにフードをずらす。


「うわっ……すっごい美人……」


 フードの奥に見えた顔は桐山が言うう通り美人に入る顔だった。

 褐色の肌、整った目鼻、卵型の奇麗な輪郭、深紅の瞳をし凛としたアーモンド形の目、ぷっくりと膨らんだアヒル唇、髪はピンク色だった。


「……随分と日本人離れしているな。とりあえず、あっちに俺達の車がある。そこで話さないか?」

「うん、いいよ~」

「……あっ! まっ、待ってください!」


 俺と桐山はフード姿の女性の顔を見て見惚れてしまう。

 いち早く我に返った俺はフード姿の女性と車の中で話さないかと伝えると、フード姿の女性は軽いノリで頷いて車の方に向かう。

 まだ見惚れていた桐山も我に返り、俺達から遅れて車へと向かう。


「へぇ~……多目的機動戦闘車の中ってこうなってたのかぁ~」


 車内に入ると女性はフードを脱ぎ、顔を晒す。

 ストレートロングのピンク色の髪は艶やかで、日本にいた頃の女性用シャンプーのCMモデルのようにサラサラだった。

 ピンク髪の女性はこの車のMODを知っていたのか、物珍し気に車内を見回りながら、車両の名称を口にした。


「自己紹介がまだだったな。俺の名前は深山裕次郎、日本ではしがないサラリーマンだ」

「私は桐山環と言います。日本では聖パルセーナ女学園に通ってました。あと、深山さんがサラリーマンと言うのは嘘です、真に受けないでください」


 自己紹介をすると桐山が失礼なことを言う。


「あははは、面白いコンビね。あたいは工藤雫、日本では女子高生兼ゲーム実況配信してたよ」


 何が面白かったのか工藤と名乗った女性は笑いながら自己紹介する。


「へぇ~、ゲーム実況者ですかぁ~、チャンネル名とか教えてくれます?」

「ローマ字でSIZUKU、その名前で実況していたよ。黒ギャルゲーマー配信者って感じで結構人気だったんだし~」


 桐山と工藤は同郷の女性同士ということもあってかもう仲良く実況動画の有名な配信主の名前とかで盛り上がっている。

 二人の間で姉者、妹者とか乙子とかよくわからない単語が行き交っていた。


「盛り上がっている所すまないが、話を聞いてくれるか?」

「あ、ごめーん! 何の話だっけ?」


 パンパンと手を叩いてこちらに注目させてる。

 工藤は自分の髪の毛先をくるくると弄りながら謝罪する。


「まず1つ目、元の世界に戻る方法を知っているか?」

「……あたいもね、同じこと聞こうと思ってたし……」


 元の世界に戻れる方法を聞くと工藤はショックを受けた顔になる。


「でっ、でも! 深山さんは元の世界に戻れる方法探してますからっ! いつかきっと帰れますよ!!」


 慌てて桐山がフォローに入る。


「……何? 戻れる方法でも見つけたし?」

「いや、まだ手探りだ。メインクエストをすべてクリアすればいいのか、MODに付属するクエストをクリアすればいいのかすらわかっていない。今はノース・サンズのメインクエストに関わっている」


 工藤は元の世界に戻ろれる目処があるのかと聞いてくるが、俺はきっぱりと手探り状態だと答える。


「……そっか~……」

「大丈夫です! きっと深山さんが見つけてくれます! 凄く頼りになりますから!!」


 明らかに落胆した工藤と必死に俺が頼りになるとアピールする桐山。


「工藤と言ったか? 覚えている限りでいい、インストールしたMODを教えてくれないか? どうもこの世界、MODによってはインストールしたプレイヤーのみと世界全体に影響しているMODがあるようなんだ」

「……あー……それでかぁ~……うーん、口で言うよりぃ~、見せた方が早いし」


 工藤にインストールしているMODの種類と、MODによってはプレイヤーのみや世界そのものに影響するMODがあると伝えると、工藤は一人納得した顔になり、ぼろ布のマントを脱ぐ。


「きゃっ!? 深山さんだっ駄目です! 見ちゃだめです! 不潔です!!」


 工藤のマントの下を見た桐山が顔を真っ赤にして両手で俺の目を塞ごうとするが……身長差がありすぎて、顔にペチペチと張り手を繰り返しているような仕草になる。


 工藤がぼろ布のマントを脱ぎ棄てると、ほとんど全裸に近い状態の姿が露になる。

 今にも引きちぎれそうなスポーツブラに包まれた軽くメートル単位は超えている巨乳、鍛え上げられた腹筋には臍ピアスがしており、くびれた腰、ほとんど下着の意味をなさないひも状のTバックに包まれた安産型のヒップ、むっちりとした太腿にはラバー製のタイツブーツを履いていた。


「あー……エロ系MODか? だからマントとフードで隠してたのか」

「あはは~……まさかあたいがこんな姿になるなんて思わなかったし……コスプレでもこ~んな際どい格好しなかったし?」


 未だに見ちゃだめですと叫びながら俺の両眼を塞ごうとする桐山を脇にどけながら、工藤がインストールしたMODの正体に気づく。

 工藤は乾いた笑いをしながら遠い目をしていた。


 MODの中にはエロ系と言って大人向けのR18禁性的MODが多数ある。

 工藤がインストールしていたのはそう言ったエロ系MODがメインでこの世界に異世界トリップしたらそういったエロ系MODが全部工藤自身の体に作用した。


「あとは乳揺れMODでしょ~、格闘アクションMODにぃ~……あ、あとコンパニオンの美化に独立系コンパニオンの追加に……ごめん、さすがに全部覚えてないし」


 工藤は指を折りながら自分がインストールしたMODを思い出していくが、俺達と同じく数多く導入して全部把握していないようだ。

 全体的にエロボディや髪型の追加、美肌化などエロ系MODがメインで、格闘系ビルドで行く予定だったらしく格闘モーションの追加や格闘攻撃強化系のMODを入れていた。


 コンパニオンとはゲームに登場する主人公と一緒に冒険をするNPC達のことで、お金やクエストなどで仲間になってくれる。

 独立系コンパニオンとはMODで追加されるオリジナルNPCでMODにもよるが基本は話しかけたり最初から仲間だったりする。


「あ! 深山ッち達はもうアリの巣クエストは終わったし?」

「いや、まだだが?」


 アリの巣クエスト、ノース・サンズと隣の駅の集落に繋がる地下鉄の経路上に巨大化した蟻の巣が作られており、隣の駅の集落と交易ができなくなくて困っているというクエストがあった。


「ちょうどよかったし! 実は追加アイテムと完成拠点追加MODでアリの巣近くに拠点があるはずなんだ、そこに良い装備があるから連れて行ってほしいんだ。いくつか装備わけるから、お願い!」


 完成拠点MODとは拠点建築が苦手な人用に最初から完成された拠点を提供するMOD。意外と種類が多く、作成者の趣味やデザイン力が出るので人気だ。


 工藤はこれをインストールしており、同じ製作者の追加アイテムMODがその完成拠点にあるらしく、一緒にとりに行ってほしいと願い出る。


「あと……エロくない衣装とか余ってない? さすがにこれで人前出たくないし」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます