第14話 幕間:ノース・サンズの人たち


 故障して居た浄水器が修理され、また汚染を除去した奇麗な水が飲めるようになったと住人たちが喜ぶ中、駅長室には数人の男女がテーブルを挟んで会議をしていた。


「今回やってきた傭兵の二人組についてだけど……セイ、同行してどうだった?」


 ノース・サンズの首長マリアが会議に参加したセイに向かって聞く。


「ん、深山という男性は本格的な戦闘訓練を受けている。指示や身のこなしが防衛部隊や食料調達部隊とは違った。桐山との会話によると、深山はメガシティのサラリーマンっていう精鋭部隊とかに所属していたと思う。あと桐山という女性は……兵士じゃない」


 セイはまず流れの傭兵の深山と桐山について率直な感想を述べる。

 深山がメガシティのサラリーマンという部隊名の精鋭部隊に所属していたという言葉に会議室がざわつく。


「あの二人……もしかしてサンアンジェルスのスパイか何かでしょうか?」


 会議に参加している一人が発言する。


「仮にスパイだとして……なぜノース・サンズを助ける? 奴らは我々に服従を求めているのだぞ! 浄水器を直したりせず故障させたまま水をやるから従えと言ってきた方が早いだろ?」


 会議に参加している別の人物が深山がメガシティのスパイ疑惑に対して反対意見を述べる。


「それは我々を油断させるために」

「貴重な爆薬まで使ってサブクアンの巣を爆発させてまでこちらを油断させる? ありえん!」

「本当に流れの傭兵だと思うか? あんな奇麗な車に武器や防具を持って?」


 会議は喧々囂々としており、深山と桐山が何者かでそれぞれが憶測を述べる。

 深山たちは知らなかったが、この世界の集落常識で見ると、二人はあまりにも身だしなみと装備が奇麗だったために怪しまれていた。


また、爆薬は銃よりも稀少品で、それを惜しげもなく使うことがノース・サンズの住民からすると気味が悪い行為だった。


「ジェーン、実際に二人と話したことがある貴方はどう思う?」

「あたしから見た印象だけど……二人はメガシティ出身者だと思う。でも、サンアンジェルス出身じゃない、どこか別のメガシティ出身者だと思う」

「ん、私もジェーンの意見に同意する。二人は何度か元に戻ったらとか、ここに来る前は何をしていたとか話し合っていた」


 会議に参加している女性の一人に意見を求められ、ジェーンは深山と桐山がサンアンジェルスとは違うメガシティ出身者だと意見を述べるとセイもそれに同意するように、工場跡地での深山と桐山の会話の内容を話す。


「首長はどう思われます?」

「私もジェーンの意見に同意するわ。実際二人に会って話したけど……男性の深山は荒事に慣れ親しんだ様子だった、でも桐山って少女の方は随分と世間知らずのお嬢様って印象だったわ。顔も全然汚れてないし、私たちの提供した食事を口にして戸惑っていましたしね」


 ジェーンに意見を求めた女性は今度は首長に意見を求める。

 首長のマリアは二人の印象を率直に答える。


「あたしの勝手な想像だけど、たぶん深山は桐山のボディガードみたいなものね、桐山はメガシティのお嬢様ってとこかしら? セイが聞いた戻れたらって言葉からしてメガシティから追放……は、あの装備を見る限りじゃないわね。駆け落ちか勢力争いとかで何か問題が起きてほとぼりが冷めるまでメガシティの外に避難したってとこじゃない?」


 補足するようにジェーンが深山と桐山、二人の関係を想像で述べる。


「今重要なのは二人の正体ではなく、このノース・サンズに益となるか、害となるかではないか?」


 会議室の奥の席に座っていた黒いスーツ姿のグランパが発言すると会議室がシンと静まる。


「ん、敵対は絶対反対! 深山はロストテクノロジーを持ってる。何もない場所からマシンガンのターレットを生み出してサブクアンの大群を殺した。敵対したらみんなあのターレットに殺される」


 セイが敵対は絶対反対と強く主張する。理由として下水処理場での出来事を説明し、深山の何もない場所からマシンガンターレットを呼び出す能力がロストテクノロジーによるものだと説明する。


「戦闘車両だけでなくロステクまで持っているのか!? そんなの我々だけで対抗なんて無理だ!」

「いやまだ敵になったわけでは……」

「本当にそれはロステクだったのか? 何か仕掛けが……」


 セイの説明を聞いて会議に参加していた者たちがまた騒ぎ始める。

 先ほどまでスパイだと騒いでいた人物も、深山がロステク持ちだと聞くと消極的になる。


「あの二人は我々の呼びかけに応じてやってきた。そして浄水器の修理に必要な部品を取りに行ってくれた。それだけではなく、サブクアンの巣になっていた場所を爆破除去してくれた……しばらくは逗留を認めてよいと思うがのう、首長?」


 グランパがそう言うと首長のマリアは熟考するように目を閉じて黙る。

 会議に参加した者たちは固唾をのんでマリアの決断を待つ。


「……浄水器が直り、我々は水を取り戻せました。ですがまだノース・サンズには数多くの問題があり、あの二人のような傭兵の力に頼らなければなりません。今しばらくあの二人にはこのノース・サンズに逗留してもらえるようにしましょう」


 マリアが目を開き、深山と桐山の逗留を認めるというと会議に参加していた住人達は頷いた。

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