第3話 ブレイクアウト ―2


<鎮圧執行システムの破壊を地下武器庫で感知。周辺にいる兵士は速やかに侵入者の排除に向かってください。データベースに該当しない人物、6名を発見……1名を排除。残り5名、現在処理プログラム実行中です……繰り返します、。周辺にいる兵士は速やかに侵入者の排除に向かってください>


「スカベンジャー側の誰かがやられたみたいだな……」


 武器庫を出て廊下を走る。

 研究所内はレッドアラートが鳴り響き、廊下は緊急事態を告げる赤いランプが点滅していた。 


<周辺にいる兵士は速やかに侵入者の排除に向かってください>


 電子音声が侵入者の排除を繰り返し放送する。


「えーっと……確かエレベーターに乗ったんだよな!?」


 クエスト内容の進行を思い出す。

 本来ならクエストログにイベント内容と進行状況が表示され、ゲーム画面には目的地までのガイドビーコンが展開されていた。


 だが、現実ではそんなものはなく記憶を頼りに廊下を走り、エレベーターホールを目指す。


「っ!?」


 進行通路の天井がスライドし、エリミネーターが2機出現する。

 即座に拳銃を向けて引き金を引く。

 二度の銃声と共にエリミネーターの中心部に銃弾が命中し、エリミネーターは破壊される。


「エイムMOD入れててよかったよ!」


 エンドレスホライズンは1人称型FPSRPGでエイム(照準準備)が必要なゲームだ。

 この手のエイムが苦手な人のためのMODがあり、ある程度射撃を修正してくれる。

 このエイムMODを導入しているおかげで走りながら動体目標の弱点を撃つなんて技が使える。


 自画自賛しているとウィィィン、ガコン!とどこかでエレベーターシャフトの移動する音とロックが解除させる音が響く。


 続いてキュィィィンとモーターの駆動音がどんどんとこちらに近づいてくる。


「ちょっと待てえええ! 初期レベルで出ていい敵じゃねえぞおお!!」


 次に立ち塞がったのはダチョウのフォルムによく似た逆関節型の2足歩行の警備ロボット、ガーボットだ。

 ゲーム中盤の軍事基地の遺跡などに出てくる警備ロボットで、本来このイベントクエストには出てこない警備ロボットエネミーだ。

 ガーボットにはいくつかのモデルがあり、今回出てきたのは両腕がバルカンになっているタイプだった。


 ただ、保全機能が完ぺきではなかったのか、装甲部分には錆が目立ち、動作もぎこちない。

 だが両腕部に一体化したバルカンは逃げ場のない通路では最悪の脅威にかわりはない。

 ゲームだったらクソゲーかよと言ってゲームパッドを投げ捨ててただろうが、ここは現実。投げ捨てれるのは希望と命ぐらいだ。

 

「これでも喰らえ!」


 俺は肩にかけていたライアットショットガンを構えて、対戦闘義体用スラッグ弾をガーボットの脚部に撃つ。

 警備ロボットガーボットは軍事施設用の警備ロボットだけあって、その耐久性は民生用をはるかに上回る。特に胴体は厚い装甲と避弾経始が利いた曲線的なデザインによって、特に頑丈である。

 だが可動の問題上脚部の装甲が薄い間接部分が弱点という設定があり、ゲームでもそこを攻撃すると大ダメージと脚部を破壊することができる。


 そんな所に対戦闘用義体の4番ケージこと、口径25mmクラスのスラッグ弾が直撃したらどうなるか?

 着弾と同時に片足を破壊されてバランスを崩したガーボットの砲口が天井へ向く。

 射撃中止プログラムが間に合わず、搭載火器のバルカンから発射された大量の散弾が天井を砕き、瓦礫がガーボットに降り注ぐ。


 ガーボットはプログラムに従い、残る片脚で姿勢を復帰させようとする。


「させるかよっ!!」


 ガーボットが起き上がる前に俺は武器庫で手に入れた単分子の日本刀を抜刀し、装甲の傾斜に対し、垂直方向からぶつかるよう角度を合わせるように刺突させる。


(うっわ、刺すときの抵抗感がほとんどないぞっ!?)


 全く抵抗感を感じさせずに深々と突き刺さった刃は、ロボットの中枢を正確に貫いた。

 突き刺さった刀身との隙間から小さく火花を散らしたのを最後に、ガーボットのカメラアイから光が消えた。


「へへどんな……ふっざんなあああ!!」


 ガーボットから刀を抜いて納刀しようとした瞬間、またどこかでどこかでエレベーターシャフトの移動する音とロックが解除させる音が響く。

 進行方向先の両側の壁がスライドしたかと思うと大漁のガーボットが姿を現した。


 新たに表れたガーボットは俺の姿を認識すると両手のバルカンをこちらに向けて空転を始める。

 発砲の寸前、曲がり角に飛び込むと同時に轟音と共に先ほどまでたっていた場所を埋め尽くす銃弾の雨嵐。


 射線から外れていなければどうなっていたか、俺は考えたくもなかった。


<データベースに該当しない人物……更に4名を排除。残り1名、現在処理プログラム実行中です……繰り返します、周辺にいる兵士は速やかに侵入者の排除に向かってください>


 大量のガーボットから逃げている最中、警告を繰り返す電子音声が俺以外の侵入者を排除したことを知らせる。


「よしっ! エレベーターだ!!」


 エレベーターがようやく見えてきたが、その一方で後方からも多数のガーボットと思われる警備ロボ達の駆動音が聞こえてきていた。


「クソッ、電子ロックがかかってる!」


 エレベーターの呼び出しボタンを押すが【現在緊急事態により稼働を停止しております】という電子文字が階数を表示するディスプレイに表示されていた。


「えーっとクエストではどうしてたっけ!? そうだ、ハッキング!!」


 何度エレベーターの呼び出しボタンを押しても反応せず、俺は必死にクエストをどうクリアしたか思い出そうとする。

 エレベーターの呼び出しボタンの近くにターミナルが置いてあり、それをハッキングすることでエレベーターのロックを解除していた。


 ターミナルを起動させてハッキングを開始する。

 ゲームではターミナルのディスプレイに映る複数のワードから正解をクリックするとロックが解除されるシステム。


「入れててよかったチートMOD!」


 どのワードを選んでも正解になるハッキングチートMODを入れていたおかげで一発でハッキングに成功し、エレベーターのロックを解除する。


 ロックを解除すると同時にポーンという到着を知らせる電子音と同時にエレベーターの扉が横へスライドした。

 エレベーターのドアが開くと同時にエレベーター内に飛び込む。


「早く閉まれって!!」


 エレベーターの鋼鉄の籠の中へ転がり込むと、『閉じる』のボタンを連打する。

 エレベーターの外側の扉が閉まっていく刹那、通路に再出現したガーボット達が機銃を構えるのが見えた。


「頼むから閉まってくっれええ!!」

 

 間一髪、ガーボット達が発砲するよりも先にドアが完全に閉まり、すぐに見えなくなる。

 閉ざされた扉に向かってガーボットたちが一斉に発砲する轟音が徐々に遠ざかっていく。


「死ぬかと思った……」


 俺はその場に崩れ落ち、安堵の息を吐く。


「何だよ、あのガーボットの大群は……クソゲーすぎるぞ……」


 しばしエレベーターの中で休憩し、バックパックからミネラルウォーターを取り出す。

 ずっと緊張状態で走り続けていたせいか、喉が渇いており、ミネラルウォーターが美味く感じた。


 半分近く飲むと残りの水を頭からかぶる。


「この後は……特殊車両用区画に到着して……運良く残ってたジープに乗って地上に脱出するんだったな」


 エレベーターの壁に寄りかかりながらクエストのこの後の展開を思い出していく。

 このエレベーターは特殊車両用区画というエリアに直通しており、そこにジープと地上に繋がる搬入口があり、そこから脱出した所でクエストが終了という展開だ。


 ポーンという到着音と共にエレベーターのドアが開く。

 特殊車両用区画は広大な地下駐車場のような構造で本来なら整備士がいきかい、多数の特殊車が駐車されていたかもしれない。


「ジープが……置いてない?」


 本来ならジープが置いてある駐車場にジープはなく、代わりに小窓付きの大型コンテナが駐車場エリアに放置されていた。

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