第30話 失敗したらまたやり直せばいい
「そうですか……。そう言えば蛇の妖魔はどうなりました?」
「核を二つ壊した時点で、また妖魔界に逃げたよ」
「すみません。僕が不甲斐ないばっかりに、また取り逃がしてしまって」
「気にする事はない。失敗したらまたやり直せばいい。ただし、取り返しのつかない失敗はするんじゃない。特に人の命に関わるような失敗は……」
何かあったのだろうか? 僕には想像もつかないが、白虎は寂しげな顔をしながら語る。
「ありがとうございます。心に留めておきます」
「うむ。どうやらすっかり大丈夫なようだな」
「はい!」
「それでは茜、再び封印を……」
白虎は茜に向かって求める。
「うん。分かった。でも、白虎はそれでいいの?」
「私が望んだ事。そして茜の望みでもある。これ以上必要なものは無い」
「うん」
茜は俯き加減で小さく頷き、厳かな表情で言葉を紡ぐ。
「偉大なる神獣白虎よ。神凪茜の名において御身を封印し新たな名を与える……出でよ月白!」
茜の言葉と共に、白虎の姿はみるみる小さくなり月白の姿となる。
屋上はサングラスに黒服の、神凪生徒会長の特殊修復部隊が瓦礫の撤去と補修に右往左往している。和哉は担架に乗せられて運ばれようとされていた。
「……和哉」
僕は担架で横になっている和哉のそばに寄り添う。
「何、しけた面してんだよ」
痛々しい姿の和哉は僕を見て優しく笑った。たぶん僕は泣いていたんだと思う。頬をつたうものが止めどなく流れる。
「ぼ、僕は……和哉に……酷いことをしてしまった」
「だから、気にするなって言っただろう……って未來に言っても無理か……未來、俺に悪いと思うなら、紅緋を探して俺の前に連れてこい。俺にとって未來の本当の笑顔が一番の癒やしになる」
「うん。分かった」
それだけ話すと、和哉の乗った担架は運ばれていった。僕は和哉を見送ると手で頬をつたうものを拭い去る。
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