第16話◆戦闘訓練
しばしの勉強ではない自由な時間を1時間ほど挟んでから、最後の戦闘訓練が始まる。
この授業は一対一のトーナメント制でやるそうだ。この最初の訓練の成績で新学期からのクラスの序列が決まりそうだな……と何となく感じていた。
メリッサ教官に連れられ、全員は戦闘場まで移動する。入試の時に使った、あの戦闘場だ。
さて……ここでどれだけ力を発揮出来るか……? 自分のステータスは……と。(ステータス……)
視界に自分のステータスが表示される。
名前:ソータ・マキシ 年齢:12
職業:グラディエーター見習い
Lv:13 HP:335/335 MP:125/125 SP:121/121
攻撃力:91 防御力:80
魔攻力:82 魔防力:90
敏捷力:88 精神力:125
ゴッデススキル:経験値10倍/天賦の才
通常スキル:【槍術マスタリー:Lv1】【拳術マスタリー:Lv2】【炎属性魔法:Lv2】【氷属性魔法:Lv1】【反骨心:Lv1】
ここから実戦とゴッデススキルの効果で一気にレベルアップを狙いたいところだ……。
「さて、全員準備は良いか? 今回、装備は全員同じ物だ。魔導士志望の者は今年は居ないので、魔法の使用は禁止とする。純粋に近接戦闘技術のみで戦ってもらおう」
なるほど……。
まずは、男女兼用の
そういえば、戦鎚を得意としてる子が一人いたような……周囲を見回す……
「私の時代の始まりですわ……!!」ロッサがニヤリと笑っていた。あぁそうだ……ロッサの得意武器が戦鎚だった。
なるべくロッサと当たりたくはないな……いや、こんな時にフラグを踏みたくはない……無心無心……!
そこへ、メリッサ教官が箱を持ってくる。入試の時に使ったチーム分けの表があった場所に、今度はトーナメントの形の線が書いてあり、一番上には★のマークがあった。
「よし、順番にこの箱の中の紙を一枚取り出せ。同じ番号の奴が対戦相手になるからな!」
……よし、俺の番だ! ……3番……第三試合か。
ソータが引いたのは四番目だったが、まだ他に3番の紙を引いた人は居なかった。
順番に引いていき、トーナメント表に書いてある番号の所へ名前が書き込まれていく……
そのトーナメントを見ると、後ろから「えっ……」という声が聞こえてきた。振り向くと、ポニ子が紙を持ってジッとしている。
「どうした? ポニ子」そう声を掛けると「あぁ、えっと……」と言いながら“3”と書かれた紙を見せてきた。
今回の対戦相手はポニ子か……
「お互い手加減無しだからな!」
「う、うん……」ポニ子はこの時点で絶望していた。この時既にゴッデススキルの能力透視でソータの能力値を見ていたのだ。勝てるわけがない……そう思っていた。
「――よし、全員引き終わったな! ではトーナメントを読み上げる! 第一試合――」
第一試合は、ゼルゲル vs アリオス……この二人は貴族だ。ゼルゲルの得意武器は両手剣、アリオスは片手剣と短剣だ……どちらかに分があるとするならば、重量武器が得意なゼルゲルだろう……。
第二試合は、エルディア vs ピッティア……エルディアは言うまでもなくトトラーシュ家の三男。ピッティア・エレティナ……彼女も貴族の一人だった。
第三試合は、ソータ vs クレリア……友人同士の戦いだが全く手を抜くつもりはないぞ!
第四試合は、ライトラ vs ナティーレ……ナティーレ・ヴァルゼルド……彼女は中流階級街の出だが、その中で有名な刀使いの一族として有名だ。……ライトラは上手く立ち合えるだろうか?
第五試合は、エゼルト vs ロッサ……これはロッサの一人勝ちの可能性が高いな……それにしても、ロッサ……狙ったかのように一勝するだけで決勝だな……。
第五試合に関しては、まだ戦闘は始まっていないし、真剣勝負の戦闘であれば何が起こるかは分からない為、エゼルトが勝ってしまう可能性だってある。ロッサは運良く得意武器で戦えるわけだし、ここはエゼルトを応援しよう。そんな事を考えているとメリッサ教官がトーナメント表を見て口を開いた。
「ロッサ・パルセノス。お前の得意武器は戦鎚だったな……だが、相手は全員同じタイミングで入学したメンバーだ。実力にハッキリとした差は無い。慢心せずに勝つつもりで行け。エゼルト・ケレス、お前はそんなロッサに負けないように、お前も勝ちに行くんだ。いいな?」
「「はっ!」」二人は気合十分といった表情で敬礼をした。
その後、それぞれ戦闘場の端へ集まり、配られていた軽鎧を装備し、戦鎚を持つ。やはりというべきか、一番様になっているのは、ロッサだった。
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――十数分後。
「そこまで! 第二試合、勝者エルディア・トトラーシュ!」メリッサ教官が号令をかけて、戦闘を終わらせた。
現時点で勝敗が決しているのは、一回戦第一試合のゼルゲル vs アリオスと、先程行われた一回戦第二試合のエルディアvsピッティアだ。
第一試合で勝利したのは、ゼルゲル。そして先程の第二試合で勝利を収めたのはエルディアだった。
意外とエルディアは苦戦していたようだった。やはり重量級の武器を使い慣れていないのだろう。いや、それは俺も同じか……。
「――では続いて、一回戦第三試合を始める! ソータとクレリアは戦闘エリアへ!」
クレリアと対峙するソータ……能力透視は、上手く扱えば弱点を見極めて戦況を有利に進める事が可能だ……手は抜けない!
「そ、ソータ! 本気でいくから!!」戦鎚を構えて少しへっぴり腰になっているクレリア。あの態勢でよく戦鎚を持てるなぁ……。
「では……一回戦第三試合、ソータ vs クレリア……始め!!」
俺たちは同時に戦鎚を構えて走り出す! まずクレリアが繰り出した攻撃は、横に構えて、横薙ぎにする攻撃。
それを、戦鎚の柄で防御する! しっかりと足も踏ん張って防御態勢をとっていたが、上手く衝撃が足から地面へ通らず、重い衝撃を身体全体で受けてしまった!
「ッ……!」多少のダメージを負ったが、慣れない重量級武器の扱いで、連撃の前動作に手間取るクレリア。
クレリアを見ていると、足運びが重要であることが分かった。ソータはテコの原理を用いて戦鎚を持ち上げ、クレリアへ横薙ぎの攻撃を繰り出した。やられたらやり返す!
クレリアも先程のソータと同じく、しっかりと防御態勢を取っていたが、違う点は、クレリアはその防御の為に立てている戦鎚をソータの方へ押し出した!
ガンッ! という重い金属音と共に戦鎚が弾かれてしまう!
「うおっ……と!?」よろけそうになるソータ。
しかし、ポニ子には負けたくない! そのまま軸足を入れ替えて、弾かれた勢いを利用して振り向きざまにクレリアが防御している方向と反対側へ強力な横薙ぎ攻撃を繰り出す!
その薙ぎ払い攻撃はクレリアに直撃し、鈍い打撃音が聞こえた。
「ぐはっ……!!」身体の軽いクレリアは1,2メートルほど吹っ飛ばされる。
気を抜いてはいられない! すぐさま、戦鎚を構えるソータ。
「いったぁ……! 本気で殴ったわね! もう許さない!!」立ち上がって怒りながら戦鎚を振るってくるクレリア。
その戦鎚の攻撃を躱して、今度は戦鎚の柄で突き飛ばす。……なるほど、重さは断然違うけど、メチャクチャ重い槍だと思えばどうにか……!
実際のところ、そんな考え方にするだけでどうにかなるような武器ではないのだが、ソータはそのように脳内で置き換えをして戦っていた。
……だが、それこそがソータの持っているゴッデススキル【天賦の才】の効果の片鱗だった。
「うぐぅ……! 負けるもんかッ!!」立ち上がってまだ向かってくるクレリア。彼女のHPはどうなっているのだろうか……?
錬成学院へ入れたという慢心ではなく、本気で強くなろうとするクレリアの姿を見たソータ。だが……次で終わらせよう。
「くらえ――」「でやぁっ!!」クレリアが戦鎚を上段から振り下ろしてきたのを躱して、脇腹に強烈な横薙ぎ攻撃を食らわせた。
「がっ……!!」目を見開いて吹っ飛ばされて気絶するクレリア。
一瞬死んでしまったかと心配したが、息があるようで、すぐに治癒魔法をかけられていた。
「そこまでッ! ……勝者、ソータ・マキシ!!」手を挙げて合図をするメリッサ教官。
クレリアからの最初の横薙ぎの攻撃による衝撃意外無傷のソータは、ふぅっと一息つくと、すぐさま「大丈夫かッ!」とクレリアに駆け寄る。すると治療師の教官に止められた。
「
そう言うと、治療師の教官の周りにマナが集まりだした……!
「――マハルフェット!」手から白い光が出てきて、クレリアを包むとバチッ! という音が鳴った!
その瞬間、クレリアは驚くようにハッと目を覚ました。
「大丈夫か、ポニ子?」目を覚ましたクレリアの顔を覗き込むソータ。
「う、うん……アンタ本当に強いわよね……素直に負けを……痛っ……!」ゆっくり起き上がろうとするが、上手く起き上がれないクレリア。まだ怪我が治っていないからだ。
「……ヒール!」そのまま立て続けにHPを回復させる効果の魔法を使ってくれた治療師の教官。教官に礼を言って立ち上がると、ソータとクレリアは学生が待機している場所へと向かった。
ソータ・マキシ……やはり勝ち上がったか! だが、勝つのは俺だ……!!
……と、今にも聞こえてきそうな表情でメラメラと闘志を燃やしているのはエルディアだ。次に戦うゼルゲルのことは、初めから眼中に無いようだ。
何て分かりやすい奴なんだ……。それが、ソータの素直な気持ちだった。
「続いては、ライトラ vs ナティーレだ! 両者戦闘エリアへ!」
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結局、ライトラとナティーレの試合は、ナティーレが勝利した。決め手はナティーレの素早い足
それで後ろを取られたライトラは背後から強烈な戦鎚の攻撃を食らってノックダウン……ナティーレを相手にするのは中々に大変そうだ……。
「では、次は一回戦第五試合、エゼルト vs ロッサ! 両者戦闘エリアへ!」メリッサ教官が号令をかける。
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