第58話「9月の風」
さて9月、内閣は麻野新首相をトップに据えることでスタートし、国会も臨時国会がスタートし再び復興問題を中心に話し合いが始まった。
簡単に現在の政局を見ていこう。
衆議院……(与党)民政党 282(橋置派が離脱、他一名が離党)
民自党 93(大泉派 約20名が離党)
創明党 21
(野党)日本革新同盟 43
共産会 9
社平党 7
我らの党 5
新党国民 4
無所属 15
見てわかるように、復興のためという名目で民政党と民自党が奇跡の合体を果たした結果、圧倒的に与党が議席を占めている状況であった。それがなくとも過半数は民政党が占めており、野党の価値はかなり希薄なものと言えた。
しかし一方で世論は、日本革新同盟への期待度が高く、相変わらず地方議会での躍進は続いており、革新同盟待望論のような空気は出来上がっていた。国会の数字と世論では大きな乖離がある状態と言える状況だった。
そんななか、震災のために選挙を遅らせることにした岩手県知事選挙が間もなく始まろうとしていた。
岩手県は、民政党の党首大澤の地元であり、また現職の知事も民政党の人間という民政党にとって圧倒的なホームである。さらには民自党が選挙協力をするため、知事選で民自党からは候補が出ず、対立候補は、日本革新同盟が推す新人「
民政党にとっては盤石な戦い、革新同盟にとっては圧倒的に不利な戦いになると思われた。
しかし、岩手県選挙直前、夕方のニュースで記事を読み上げるキャスターの山西クリスタルの口から大澤を震撼させるような一言が出てきた。
『巨大な汚職事件に発展するかもしれないニュースです。民政党の大澤党首にかかわる笠笹建設からの不正献金の事件で警察の再捜査が始まりました』
テレビ画面のクリスタルは鋭い目線でニュースを続ける。
『笠笹建設からの不正献金にはなんと、民自党関係者の関与が疑われており、民自党議員から笠笹建設を迂回して、大澤党首に流れているという捜査関係者からの話が浮上しています。笠笹建設の現場に中継が行ってます』
テレビ画面は、笠笹建設と書かれたビルの周辺をたくさんのパトカーが止まっている映像を映し出していた。
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