77 レジスタンスとよくない噂1
それから、わたしたちの戦いの日々が始まりました。
女王様を倒すっていったって、子供三人でそう簡単にいくわけもないことは、さすがにわかってる。
わたしにどんなにすごい力があったとしても、ひょいと楽々できるわけじゃない。
三人でこれからどうしようかを考えた中で、わたしはまずこの国の人たちのことが思い浮かんだ。
もちろん女王様を倒してわがままをやめさせるのは大切だけど、でもまずは国の人たちが平和に暮らせることが『ゆうせん』なんじゃないかって。
だからわたしたちはアリアの案で、いろいろな町や地域を女王様から解放する旅に出ることにした。
わたしの『始まりの力』と二人の魔法があれば、国のいろんなところに『はいぞく』されている女王様の兵隊さんたちを倒せる。
兵隊さんたちを追い出したら、わたしがその場所をわたしの『りょういき』にして、女王様が手を出せないようにする。そういう作戦です。
わがままでイジワルで『おうぼう』なこの国の女王様。
国中の『ぜいたく』をひとりじめして、国の人たちには貧乏暮らしをさせて。
自分勝手な法律を作ってみんなをこまらせたり、気に入らないことがあったらバツを与えたり、殺しちゃったり。
そんな『めいわく』でひどいことばっかりしている女王様は、国のみんなからこわがられてきらわれてた。
でもこの国の女王様だし、兵隊さんは目を光らせてるしで逆らえなかったんだ。
だからわたしたちが兵隊さんを追い出すと、町の人たちはみんな大よろこびしてくれた。
もう女王様をこわがらなくいいんだって。言うことを聞かなくていいんだって。
そうやってみんなの笑顔を見ながら、わたしたちは『まほうつかいの国』の中にわたしの『りょういき』を増やしていった。
西のお花畑から、時計回りみたいに北の方から回ってじゅんぐりと。
どこの町に行っても、女王様のわがままに苦しめられてる町の『ふんいき』は暗めで、それを見るたんびに助けてあげなきゃって気持ちが強くなった。
だからわたしはがんばって戦った。『真理の
夜子さんが言っていた通り、『真理の
それに『始まりの力』のおかげで、わたしはいろんな魔法をイメージするだけで使えたし、それに人が使った魔法を自分のものにしちゃうことだってできた。
昔からずっといろんな本を読んだりして、不思議で楽しい想像が大好きだったわたしには、魔法の不思議な『げんしょう』をイメージするのは簡単だった。
いつも夢見てた楽しいこと、不思議なこと、ヘンテコなこと、それを思い浮かべれば良かったから。
だから、元々不思議とヘンテコにあふれてたこの世界の魔法は、わたしにとってお友達みたいなものだったのです。
そんな風にわたしはいろんなことを想像して、それは全部『始まりの力』の魔法で実現することができた。
あまりにも何でもできるから、わたしに『ふかのう』はないんじゃないかって思うくらいに。
もちろん、まだ『かんぺき』に使いこなしたわけじゃないから、できないこともあるけど。でも大体のことはできた。
うっかり調子に乗っちゃいそうになったことも何回もあったけど、レオとアリアが────特にレオが目を光らせてくれてたから、なんとかやりすぎたりすることはなかった。
だって、わたしが『始まりの力』でめちゃくちゃなこととか無茶なことをしすぎると、レオはぜったいいやな顔するんだもん。
わたしが使ってる力だから、それそのものを悪く思ってるってことはないみたいだけど。
でもあんまりにもとんでもないことをすると、『始まりの魔女』ドルミーレを感じちゃっていやらしい。
そのドルミーレは、あれからまったく声を聞かなくなった。
心の奥の『そんざいかん』はずっとあるけれど、でもなれちゃったらぜんぜん気にならないし。
ひとりごとみたいに声は聞こえないし、それにあの黒くてわるい気持ちも伝わってこない。
本当にぐっすりねむちゃってるみたいだった。
ドルミーレの声は重くてゾワっとするし、あの人の考え方とか気持ちはこわいから、しょうじきホッとしてる。
でももうすこしお話をしてみたいなって気持ちもあった。
だって、気になること、いろいろあるし……。
でも、戦いの旅の中ではそんなことよりも、目の前のことで頭がいっぱいだった。
この国を救いたいって思って、そうやってこまってるみんなの顔を見ると気持ちがあせっちゃうから。早く女王様を倒さなきゃって。
でも戦いそのものはそんなに大変じゃないし、それに旅が今までに比べてとっても楽になったから、余裕は割とありました。
何てたって、西のお花畑のお城を『きょてん』にできたのです。
『始まりの力』があれば、一度行ったことがあるところはワープみたいな感じでひょいっと行ったり来たりできたから。
これは野宿したり宿をさがすよりも、夜になったらお城に戻ったほうがいいよねってことになったのです。
だからわたしたちは、旅をしては夜にお城に戻って、朝になったらお城から飛び出して旅を続けるっていう旅の仕方をするようになった。
ドルミーレの『りょういき』のお花畑にはわたしたち以外だれも入れないから安全だし、あったかいベッドはあるし、今までよりも『だんぜん』『かいてき』で、それにリラックスできるようになった。
夜子さんはあの後ふらっとどこかに行っちゃったんだけど、たまに顔を出してはいつもどおり自分勝手にむずかしことをしゃべったりしてる。
けど基本的には、この豪華でおっきいお城を三人でひとりじめできて、それはそれでけっこう楽しかった。
初めて来た時は『ふんいき』がこわかったりもしたけど、なれてきたからか、それともわたしが力をつかえるようになったからか。
なんだかどんよりした暗い『ふんいき』から、周りのお花畑が似合う華やかな『ふんいき』にかわって、とってもすごしやすかった。
そうやってお城を『きょてん』にしながら新しい旅をはじめて、わたしたちはじわじわと国を解放していった。
そしてぐるっと反対側、国の東側の地域のとある町に来た時のこと。
そこではわたしたちが来る前からドカンドカンと戦いが起きていました。
よく見てみればそれは魔法使いと魔女の戦いで、町やそこに住んでいる人たちなんてお構いなしのさわぎになっていた。
逃げる町の人たちを助けながら、なんとか戦いを止めようとしたけれど、町のいろんなところで戦いが起きていたからうまくいかなくて。
そんなことをしているうちに、わたしはうっかりレオとアリアとはぐれちゃったのです。
一番最初に旅を始めた時からそんなことはなかったし、さみしいから早く二人を見つけようとしたけど、戦いのさわぎの中だとなかなかそれも上手くいかなくて。
ひとりぼっちで『ふあん』になっていた、そんな時。
わたしはとつぜん、だれかに手をひっぱられて路地裏に引き込まれたのでした。
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