54 妖精の喧嘩と始まりの力5
太陽の光の下でも負けない、たくさんの青い光たち。
わたしたちをぐるっと囲む光は、キラキラチカチカやわらかく光ってる。
とってもキレイな光景にうっとり周りを見わたしてみると、その光一つひとつが人の形をしているのがわかった。
よく見てみると、それは目の前の妖精さんと同じ青いヒトたちだったのです。
同じような青い肌に青い髪で、青い羽が背中に生えてる。
きっとこの妖精さんの仲間で、みんな妖精さんなんだ。
「きゅ、急にどこから出てきたの!?」
イルミネーションみたいに光ってるのがヒトだってわかって、わたしは飛び上がっちゃった。
だって今さっきまでここには、わたしたち四人しかいなかったのに。
目を閉じて開けたら、たくさんの光る妖精さんたちに囲まれてるなんて。
レオとアリアもビクッとして、わたしたちはまた三人で体を寄せ合わせた。
そんなわたしたちを見て、目の前の妖精さんはニカニカと笑う。
「びっくりさせちゃってごめんね。でも、最初からここにいたんだよ。言ったでしょ? 見えてないだけだよって」
「で、でも、いたのならわかるでしょ? 気配とか色々……」
「僕ら妖精が普段暮らしているのは、他の種族とは違う階層なんだ。空間のチャンネルが違うっていうか。だから同じ場所に存在してても、そっちからは認識できないんだよ」
おずおずと質問したアリアに、妖精さんはむずかしい返事をした。
わたしもレオもポカンとして、アリアはだけはなんとなーくわかったような、でもわからないような顔をした。
「むずかしいかな。僕ら妖精は自然に寄り添い、その力の流れをコントロールする種族なんだ。だから自然に溶け込んでいて、普段は目に見えない、世界の裏側のような少しズレた場所にいる。でもこの世界に生きていることには変わりがないから、こうして認識のチャンネルを合わせれば普通にコミュニケーションが取れるんだよ」
アリアも頭を抱え出しちゃった。
頭のいいアリアでもわからないってことは、とってもむずかしい『りくつ』なんだ。
とにかく、普段妖精さんたちはわたしたちの目には見えないけど、でも見ることもできるって、そう思っておけばいいかな。
わかりませんって顔をするわたしたちを見て、妖精さんは「まぁとりあえずさ」と話を変えた。
「僕のおうちにおいでよ。大したおもてなしはできないけど、ここで立ち話もなんだしね」
おうちなんてどこに? と思って周りをよく見てみると、湖の景色はガラッと変わってた。
さっきまではカチンコチンにこおった、スケートリンクみたいな感じだった。
でも、今はその上にいくつものカマクラみたいなものがあった。
こおった湖の上が、妖精さんたちの村なんだ。それで、あのカマクラが妖精さんたちのおうちなんだ。
妖精さんたちのことが見えるようになって、村のことも見えるようになったみたいだった。
ワイワイガヤガヤ、色んな妖精さんたちが楽しそうに湖の上をヒラヒラ飛んでいるのが見える。
わたしたちは最初から、妖精さんたちの村に来てたんだ。
「付いておいで」と言う妖精さんの後を追っかけて、わたしたちは湖の上を歩いた。
カチカチにこおった湖はステンと転んじゃいそうなくらいにツルツルだったから、アリアがクツにすべり止めの魔法をかけてくれた。
村の中を『しんちょう』にトコトコ歩いてると、たくさんの妖精さんたちがわたしたちのところに集まってきて声をかけてきた。
みんなわたしたちと同じくらいの子供で、男の子も女の子もいたけど、でもやっぱりどっちも『ちゅーせいてき』な感じがあった。
大人のヒトそうな妖精さんは、一人も見かけない。
ワイワイキャッキャ、楽しそうにわたしたちに集まる妖精さん。
次々に話しかけてくるみんなとあいさつをして、ポツポツお話をしながらわたしたちは歩き続けた。
みんなとっても『ようき』で人懐っこくて、いい子たちばっかり。
ちょっと元気が良すぎるんじゃない?ってくらいに、みんなとっても元気いっぱいでした。
「ここが僕のお家だよー」
湖の真ん中くらいまで来たところで、妖精さんは一つのカマクラの前で止まった。
氷でできた扉をスーッと開けて、中にまねき入れてくれる。
わたしたちは他の妖精さんにバイバイしながら、カマクラの玄関をくぐった。
雪と氷でできてるからさむいかなって思ったけど、中は案外ほんのりあったかい。
天井には小さなランプがつるされてて、そこから青白い光がポワポワ出てて中を照らしてる。
中には雪でできたソファーとベッドがあって、でもそれ以外には何にもなかった。
『せいかつかんがない』って言うのを通り越して、これじゃおうちかもちょっぴり『うたがわしい』。
でも妖精さんはなれた感じでベッドにポンと座って、わたしたちにはソファーに座るように言った。
なんだかニコニコ、それにそわそわしてるしてて、ベッドに座ってるのにお尻がちょっぴり浮いてる。
「いなー嬉しいなぁ。おうちに人を呼ぶの初めてなんだぁ。ソファーあってよかったなぁ〜」
「他の妖精さんのお友達は呼んだりしないの?」
「呼ばないねー。妖精はね、同族は半分同一人物みたいな感じだからさ。分身って言い方もできるかな。だからほぼ自分みたいな子のうちに遊びにはいかないんだよねー」
「ふ、ふーん……?」
またむずかしい話になった。
わかる?って二人の顔を見ると、二人とも首を横にふった。
話についていけてないわたしたちだけど、妖精さんはとにかく楽しそうで、ウキウキ身を乗り出した。
「それで、何の話からしようか!」
「えっと、とりあえず自己紹介しようよ。わたしたち、まだあなたのお名前知らないもん。私はね、アリスだよ」
「自己紹介! そうだね、必要だよね。ごめん、うっかりしてたよー」
むずかしい話より大事なのは、お互いのことを知ることだよ。
わたしが名前を言って、レオとアリアもそれに続いた。
妖精さんはあちゃーって顔をしてから、うれしそうにわたしたちの顔を『じゅんぐり』見てニコニコした。
「アリスにレオにアリアだね! よろしく! 僕の名前はソルベ。わぁー、自己紹介なんて久しぶりだなぁ〜」
ベッドに座っているようで、でもちょこっと浮かんでる妖精さんは、足をパタパタさせながらルンルンで言った。
足の動きに合わせてヒラヒラしてるワンピースのスカートとか、ニコニコ笑顔によく似合うキレイな髪飾りは、やっぱり女の子っぽい。
でもなんとなく声の感じだったり『ふんいき』は男の子っぽさもあって。
だからわたしは思い切って聞いてみることにした。
「よろしくね。ソルベちゃん……? それとも、くん?」
「あ、どっちでもいいよ。妖精には性別がないから。僕は君たちでいう男の子でも女の子でもないからね」
「え???」
はははーっと笑いながら言われたその言葉に、わたしたち三人の声が重なった。
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