学校帰りに悪魔の女の子を拾ったら願いを叶えてくれた

Audience(L)

学校帰りに悪魔の女の子を拾ったら願いを叶えてくれた


 悪魔には、守らなければならないルールが3つある。

 ひとつ、人の生死に関わる願いを叶えてはならない。

 ひとつ、契約者の意向には逆らわない。

 ひとつ、契約者をその意向に背かない範囲で守る。


 悪魔は、契約者に絶対服従だ。

 どんなことをされようと、契約者の思うがまま・・・・・になる。

 その意思すら、書き換えられる。


 僕は、そんな悪魔と出会った。

 捨てられた子犬のように、学校の近くに倒れていた。

 見た目は、僕と変わらない、小学生の女の子だ。

 僕は、その子を拾うことにした。



 悪魔は、契約しないと生きていけない。

 人間から、エネルギーをもらわなければならないのだ。


 家に来た彼女は、まず、契約の内容を教えた。

 3つのルールと、ひとつだけ願いを叶えてあげるということ。


「あなたの命をいただく代わりに、願いをひとつ、叶えます」


 それが、契約の内容だった。


 僕には、叶えたい願いがある。

 でも、それはルールに触れるから、別のお願いをした。


「僕の家族になって」


 彼女は、喜んで頷いた。




 広いお屋敷の中で、僕と彼女の生活が始まった。

 彼女は僕のことを、


「ごしゅじんさま」


 と呼び、慕ってくれた。


 彼女は、なんでもできた。

 子供の外見なのに、料理も掃除も洗濯も、手際よく終わらせる。

 いなくなったメイドさんの分も、働いてくれた。


 僕は小学生だから、平日は学校に行く。

 彼女はついてきたけど、他の人には見えないから安心だ。

 会話も、心の中でできる。

 僕には友達が居ないから、ずっと彼女と話していた。


 そんな日が続いて。

 授業参観がやってきた。

 彼女は頭のいい悪魔だから、外見を自由に変え、人に化けることが出来る。


 お母さんの代わりを、してもらった。




 彼女と出会って、一ヶ月。

 屋敷の掃除をすることになった。

 大きな屋敷だから、使っていない部屋がいっぱいある。


「ごしゅじんさま、大掃除の許可をください」


 僕は迷ったけど、OKした。

 彼女は張り切っていた。


 そして、土日に大掃除をした。


「ごしゅじんさま、お父様とお母様はどうなさいますか?」


 僕は、どうしたらいいかわからなかった。

 地下倉庫には、お父さんとお母さんの死体がある。


 考える僕に、彼女は、


「お墓を作りましょう」


 と提案した。


 寂しかったけど、埋めることにした。




 お父さんとお母さんが死んだのは、彼女と出会う前日。

 夕飯の時に、突然倒れた。


 僕がびっくりして泣くと、メイドが慌てて二人を運んだ。

 メイドは二人を地下倉庫に隠し、お金と通帳を持ち去った。

 両親は殺されたのだ。


 僕はどうしたらいいか分からず、頼れる人も居なくて、地下倉庫に隠された両親をそのままにしていた。

 その両親はいま、庭の下だ。


 僕と彼女は、お墓の前で手を合わせる。


「ごしゅじんさま、本当によろしいのですか?」


 彼女は、メイドを捕まえようかと提案した。

 でも、僕は断った。

 お父さんとお母さんのことは悲しいけど、騒ぎを大きくしたくない。

 この家を離れたくなかったし、他の大人に引き取られるのも嫌だった。



 でも、それからしばらくして。

 メイドが戻ってきた。

 ニュースになっていないと知って、証拠を隠滅しにきたのだ。


 地下倉庫に死体はない。

 メイドは、僕を捕まえて問いただした。


 悪魔は僕を守ろうとしたけど、人を殺すとルールに触れる。


 僕は、彼女と一緒に逃げた。

 逃げて逃げて、遠くの街まで来た。


 彼女は、紙をお金に変えて、食べ物と寝る場所を確保してくれた。

 僕は、ずっと泣いていた。

 家に帰りたいと言うと、彼女は困った。

 帰ったら、メイドが居るかもしれない。


 それでも僕は、帰りたかった。

 あの家の大切さが、悪魔にわかるはずない。


 彼女は、僕の心を読んで、泣いた。

 お父さんやお母さんと同じくらい、僕を愛していると言った。

 けど、僕はどうしても帰らなきゃいけなかった。


 あそこには、お父さんとお母さんのお墓がある。

 メイドに悪さをされるのが嫌だった。


 悪魔は契約者の望みに逆らえない。


「わかりました。ごしゅじんさま」


 僕と彼女は、屋敷に帰ることにした。



 屋敷に帰ると、警察が来ていた。

 捜索されていた僕は、パトカーに乗せられ、警察署で事情を聞かれた。


 僕は、全部正直に話した。


 お父さんが隠れて飲んでいる錠剤があって、それを飲んだ日はたくさん遊んでくれるから、お酒の瓶にそれを入れてしまったこと。


 悪気なんてなかった。

 僕はただ、お父さんとお母さんが旅行に行くのが嫌で、いたずらしただけだ。

 遊んで欲しかっただけ。

 あれが薬なんて、知らなかった。

 本当だよ?


 警察の人は、信じてくれた。

 僕は保護され、メイドが捕まった。

 メイドはお金と一緒に、お父さんが隠していた薬を持ち去っていた。


「良かったですね。ごしゅじんさま」


 新しいおうちで、彼女はにっこり笑う。


「警察に連れていかれた時は、ヒヤヒヤしました。メイドが証拠隠滅してくださって助かりましたね」


 僕は笑顔で頷いた。


 新しいおうちにはまだ慣れないけど、あの屋敷に戻る理由はない。


 僕には悪魔が居る。

 ズルして完全犯罪をしても、楽しくない。


「僕の願いは叶ったけど、いつになったら死ぬの?」


 問いかけると、彼女は優しく首を振った。


「ごしゅじんさまの願いは、継続的な願いですから。死ぬまでご一緒します」


 ほっとする。


 僕はようやく、かけがえのない家族・・・・・・・・・を手に入れた。


 引き取り手の夫婦代わりのきく家族を殺すのは、もう、やめようと思う。

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