第8話 旅立ち

「大樹くん、起きて・・・」

グーグー


「起きてってば」


誰だ?眠りを妨げるのは・・・

・・・って、パピ?


「どうしたの?まだ夜中の1時だよ」

「そうよ。来てくれるんでしょ?私の世界へ」

「そうだけど・・・それは明日の3時だって・・・」

「だから、起こしたの。もう日付は変わったし、もうすぐ3時でしょ?」


僕は愕然とした。


「3時って、午前3時のこと?」

「そうだよ。さあ、行こう」

「でも、父さんと母さんに・・・」

「昨日の夜、お別れしたでしょ?」

確かに、行ってくるとは言ったけど・・・


「男の子なんだから、約束は守ってよね」

「もちろん・・・でも?」

「でも?」

「まだ眠い」

「世話がやけるわね・・・チュッ」

なんだ、なんだ?

でも、目が覚めた。


「本当なんだね。人間界はかわいい女の子のキスで、男の子は目を覚ますって」

いたずらっぽく笑うパピ・・・

でも、どこから仕入れてきた?


「さっ、行こう」

「でも、まだ準備が・・・」

「何もいらないよ。こっちの物は向こうでは使えないし、服とかは手に入るから」

「わかった。じゃあ行こうか・・・」

「そうこなくっちゃ」

でも、着替えだけはしておこう。

パジャマじゃ、さすがに・・・


「パピ。行くのはいいんだけど、どうやって?」

「大樹くん、私は蝶よ。モンシロチョウ」

「空を飛べるか・・・でも、僕を背負ってじゃ・・・」

「知らないの?昆虫は人間とか哺乳類とかよりは、力持ちよ」

納得した。


一応、両親の寝室の前で、おじぎだけはしておいた。


「大樹、行っといで」

「パピさん、大樹のことを、よろしくね」

ドアの向こうから声がする。


起きていたようだ。


そして、外へ出た。

鍵は閉めておこう。


「さあ、大樹くん、私の背に乗って」

「うん」

パピの背に乗る


「大樹くん、軽いね。何キロ」

「50キロ」

「もう少し、太ろうね」

余計なお世話だ。


でも、緊張がほぐれた。


「行くよ大樹くん、私の世界へ・・・」

「OK」


僕とパピは、旅立っていった。

パピの住む、妖精界へ・・・

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