ブーケ

勝利だギューちゃん

第1話


「ねえ、ひろくん、これ、なにかしってる?」

「しらない。かやちゃん、それなに?」

「これはね、こちょうらんというはななんだ」

「こうちようせんせいの、はな?」

「ううん、こちょうらん。おぼえておいてね」

「うん」


ジリリリリ


目覚まし時計に起こされた。

「懐かしい夢をみたな」

幼稚園の頃に、仲の良かった女の子の夢。


幼稚園の頃は、男女の差があまりない。

関係なく遊ぶ。


でも、小学生に入ると、なぜか対立する。

男は男同士、女は女同士で遊び、悪く言えばつるむ。

そういう図式が出来上がる。


まあ、俺のように、仲間外れにされるだけの人間もいるが、

教師は、見て見ぬふり。

給料以上の事はしたくないのだろう・・・


で。俺が幼稚園の頃に一緒に遊んでいた、かやという女の子。

幼稚園を卒園してからは、音信不通になった。


生死不明。

でも、元気でやっている事を祈る。


ただ、彼女が言っていた「コチョウラン」という花は、気になっていた。

「覚えておいてね」

幾度となく、頭をよぎった。


なので、どうしても忘れる事が出来なかった。


それから数年が経ち、俺は社会人となった。

外回りが多く、あわただしい日々を送っている。


職場の近くには、白い教会がある。

そこでは、毎日のように結婚式が行われ、新郎新婦が祝福を受けている。


俺にはまだいないが、幸せを祈る。

他人の幸せを妬むほど、落ちぶれていはいない。

まあ、俺は独身なのだが・・・


ある日、いつものように通りかかると、今日も結婚式が行われいた。

また、新たなカップルが誕生した。


新婦を見ると、見覚えがあった。

他人の空似だろう・・・

そう、思っていた。


「あっ、ひろくんじゃない」

新婦に声をかけられる。

えっ、もしかして・・・


「そう、かやよ。昔、よく遊んだ、かや」

はっきりと思い出した。

確かに、かやちゃんだ。

面影がある。


「私、今日結婚するんだ」

「そうなんだ。おめでとう。

俺は、心から祝福した。


彼女が幸せになれるのなら、それでいい。


「そうだ、ひろくん、これ」

かやちゃんは、ブーケを空高く投げた。

そのブーケは、僕の手に治まった。


「ひろくん、コチョウランの花だよ」

「うん、覚えてる」

コチョウラン、花嫁のブーケに使われる花だ。


「知ってるでしょ?花嫁の投げるブーケを受け取った人は、次に結婚できるって」

「それは、お嫁さんで、女性限定なんじゃ」

「細かい事はいいの、ひろくんは、次に結婚できるから。幸せにね」

「かやちゃんも・・・」


こうして、わずかな時間の再会は終わった。

ちなみにかやちゃんの、旦那さんは職場の同僚のようだ。

後から、知ったのだが・・・


かやちゃんの投げたブーケを受け取った俺は、その場の女性たちに睨まれた。

すぐに、その場を立ち去った。


こうして捨てるわけにもいかないので、ブーケを持ったまま職場に戻る。

案の定、冷やかされた。


その相手のひとりと、恋に落ち、一年後に同じ教会で結婚した。


何が起こるかわからいものだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ブーケ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る