62話〜マリアンヌ=ルーチェ

 場所は移り、ここはマリアンヌの屋敷。


 シェイナルズ城下町より北西に位置する海の見える高台にマリアンヌは家の者数名と暮らしている。


 白い建物で赤い屋根。門には監視用の水晶が数ヶ所置かれている。


 門の扉を開け中に入ると庭には草花が生い茂っている。手入れはしているのだろうが無造作に物が置いてある。


 玄関には、監視用の水晶が見える所に1つ、見えない所に2つある。玄関のドアは水晶に魔力を注ぐと開く仕組みになっていて、それが鍵の代わりになっている。



 マリアンヌは、唸るような地響きと城の方からドラゴンの鳴声がしたので慌てて外に出て城の方を見た。


「これはいったい?何が起きたというの!何故ドラゴンが城にいるのでしょうか?」


 ハングがヴィオレを抱えマリアンヌの前に現れた。


「マリアンヌ様。計画は失敗しました。ですが、この地響きとあのドラゴンは……いったい何が起きたというのでしょうか?」


「奥様、申し訳ありません。ブラットは恐らく城に……。」


「ハングにヴィオレ。ご苦労様です。計画は確かに失敗しました。ただ、今はあのドラゴンが気になります。それでなのですが、ヴィオレは私と残り、ハング貴方は城に向かい状況を確認してきて欲しいのですが。」


「分かりました。状況が分かり次第、戻って参ります。」


「ハング、もし城の状況が悪いようでしたら。分かってますね。」


「はい。ブラットは恐らく、あの城にいると思われますので状況次第では、ここに連れて来るつもりです。」


 ハングは急ぎ城に向かった。


「奥様、私は……。」


「ヴィオレ。怪我は大丈夫なのですか?」


「はい。しかし……あの、エリーゼとかいう女。私の事を知っていた。そして、協力してくれていた店長はレオルドと揉めていました。その後、レオルドとエリーゼが言い合いをしていたのですが。その直後、私はエリーゼに刺されました。ですが、これは不思議なのですが、遠くから、私に誰かが何らかの魔法をかけてくれたらしく。その為か軽傷で済んだのです。」


「レオルド……あの賢者はかなりのくせ者のようですね。何を考えているのでしょうか?ですが、私もブラットの力が何なのか気になりますね。」


「それなのですが。本当にブラットは人間と魔族とのハーフなんですよね?」


「ヴィオレ。ええ、ガルドとカトレアの子供という事はそうなりますね。何か気になる事でもあるのですか?」


「それは……ブラットを昔から知ってますが、本当に魔族の血が混ざっているのかと思ってしまったので。」


「それは、どういう事なのですか?」


「ブラットは昔から弱くて頼りなく。どんな奴でも、どんな言葉でも馬鹿みたいに信じてしまう様なお人好しだし。そんな力があって魔族の血が流れているなんて、どうしても私には思えないんです。」


「でも、これは事実なのです。」


 マリアンヌはヴィオレを見た後、屋敷の中に入って行った。


 そしてヴィオレは、ブラットが心配で少しの間シェイナルズ城を見ていたが溜息をついた後、屋敷の中に入って行ったのだった…。

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