87話〜過去と経緯と其々の想い

 ここは名もなき城の中庭。月が妖しげに紅く光を発し、中庭に描かれた魔法陣を真紅に染めあげる。周辺は、生臭い血の臭いと、禍々しい空気に満ち溢れていた。


 ハクリュウは、リュウキの事を思い出しながら、レオン達の方を向き睨み付けていた。


 そして、クロノアは親友クロノア・ノギアの事を思い出しながら泣いていた。


 レオンとローレンスとマキシムとクロノアはハクリュウの話を聞いていた。


「……なるほど。そうか、リュウキは元の世界に戻れたのだな。ホワイトに残っているリュウキや異世界から来た者達の事について書かれた書物の中に、リュウキが残したと思われる手紙と、渡す事が出来なかったと思われる先祖の手紙が挟まっていた。」


 レオンがそう言うとハクリュウは不思議に思い聞いた。


「それはどういう事なんだ?その手紙の話はリュウキさんから聞いてない。」


「恐らく、話す事ではないと思ったのだろう。」


 クロノアは涙を拭いながら、ハクリュウとレオンの話を聞いていると、先程から2人がリュウキの話をしていて、もしかしたら知っている人なのではと思い聞いた。


「ねぇ、話に割って入るようだけど。ハクリュウ。リュウキって、もしかしてだけど。ギルド【∞ドラゴン】のマスターをしていた人かな?」


「ああ、多分そうだと思う。俺がギルドに入った時は、ギルド【∞ドラゴン&タイガーΩ】って名前だったけど。それで、リュウキさんがギルマスでサブマスがシュウさんだった。」


「ちょっと待って……そっか、あの手紙とあの時言っていた事は事実だったんだね。クロノアだけでなく、リュウキさんやシュウさん達もこの世界に来てた。」


「クロノア!?リュウキさんとシュウさんの事を知ってるのか?」


「うん、実はね……。」


 クロノアはハクリュウに自分が約3年前にクロノアとゲームをしていた事と、その時にリュウキとシュウとクレイ・ディオンとフレンドになっていた事を話した。


「……そっか。俺が、あのゲームを始める前に既にクロノアはゲームをやって……って、さっき、マリースって言ったよな?前にやってた時の名前が。」


「うん、そうだけど。それがどうしたの?」


「もしかしてだけど、2年くらい前に、クロノアを探しにゲームにインしなかったか?」


「うん、したけど。それがどうしたの?」


「ユウさんとはいつフレになったんだ?」


「ん?ユウさんとは、確かクロノアを探す為にインした時かな?でも、何で私が2年前にクロノアを探す為にインした事知ってるのかな?」


「……あー、えっとな。何でその事を知ってるかと言うと、俺はその時ユウさんと一緒にいたからなんだ。」


 そう言われクロノアはハクリュウをじっと見て首を傾げた。


「ねぇ、ハクリュウ。さっき、名前を変えたって言ってたよね?」


「ああ、名前と見た目も少し変えた。リュウキさんに少し似せてな。」


「もしかして、ハクリュウの前の名前って……コウキなのかな?」


 クロノアがそう言うとハクリュウは頷き、


「でも、まさかな。あの時のマリースが、クロノアだったなんてな。それと、ユウさんから譲り受けたギルドなんだけど。あのギルドが元【∞ドラゴン&タイガーΩ】なんだ。……。」


 ハクリュウはクロノアにリュウキが異世界から戻ってきたあと、ユウにギルドを譲りソロでしばらくやっていたが、その後行方不明になった事を話した。


「そっか、そうだったんだね。だからリュウキさんを探してもみつからなかったんだね。」


 クロノアとハクリュウが話をしていると、


「ハクリュウ様。今、リュウキが行方不明になっていると言っていたが。やはり、あの事を気にしてなのか!」


「レオン。多分そうだと思うんだけど。もしかしたら、俺のせいかもしれない。リュウキさんは、破紅龍ハクリュウという異名を嫌ってたのに。俺は……。」


 そして、ハクリュウはその事も含め、その後何があったのかを話した。

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