番外‥⑫〜ギャップと沈黙

 光は着替え家を出て自転車に乗り、駅前のコンビニまで急いだ。


 外は日が沈みかけ、薄暗くなって来ていた。


(リュウキさんも心配だけど……ユウさん大丈夫かな?クレイさんは大丈夫だと思うけど。やっぱ、早めに着いて待ってた方がいいよな。)


 そう言うと光は更にスピードを上げ自転車のペダルをフル回転させた。



 その頃。ユウは電車の中の隅の方に座っていた。


(はぁ。やっぱり来なきゃよかったかなぁ。人混みは苦手なんだよなぁ。はぁ。早く着かないかなぁ……。)


 そう思いなるべく人を見ないように外を眺めていた。



 場所は移り、ここは駅前のコンビニの外。光はユウやクレイよりも早く着き外で待っていた。


(ユウさん。本当に大丈夫なのかな?でも、まさか流石に、ここまで辿りつけないって事はないよな。)


 帽子を深々と被り、黒いサングラスをかけ、その上から黄色のトレーナーのフードを被った身長165位の外見かわいい感じの男性が、周りを気にしながらコンビニの方に向かって来ているのが見え、


(………ま、まさかと思うけど、あれって……。)


 そう思い光は試しにユウのSNSに書き込みをしてDMを送った。


 すると、その男……いやユウの携帯から「ご主人様メール届いてますよ♪……」と可愛い声が辺りに響き、ユウはそれに驚き携帯を落とした。


 光はそれを見て慌てて駆け寄り、ユウの携帯を拾い渡した。


「あの〜もしかしてユウさんですか?」


 ユウはそう言われ頷き携帯を受け取った後、じーっと光を見ていた。


(思っていたイメージは、もっと、子供っぽい感じだったんだが。ん〜身長は175ぐらいか。見た目はそうだな……一応イケメンの部類に入るな……あっ!てか何で俺は、こんな所で光の品定めしてるんだ?)


 そう思っていると光は、コンビニで購入した缶コーヒーを渡した。


「ユウさん。これ良かったら……。」


 そう言われ勇聖は缶コーヒーを受け取り、


「あー……え、えっと…あ、ありがとう……それと……名前なんだけど……。」


「あっ、そうだ!自己紹介まだでしたね。俺は白城 光しろき ひかるです。」


「あっ、お、俺は………え、えっと……灰麻 勇聖はいま ゆうせい……よ、よろしく………。」


「勇聖さんかぁ。良い名前ですね。」


 そう言われ勇聖は顔を赤くして深々とフードを被った。


「そう言えば、クレイさん遅いですね?」


 光がそう言うと勇聖は頷いた。


 すると、駅の方から1人2人3人と後から後から女性を引き連れこっちに向かってくる男がいた。


 身長は約180㎝、首にはシンプルなシルバーの首飾りをしていた。


 癖毛で纏まりがなく肩上まで長い明るめの茶色い髪。目にかかる前髪が邪魔なのか、手で払いながら歩いている。


 そこから微かに見える優しい目は辺りの人の足を止めるほど魅力的で……現にその人の周りを若い女性達が囲んでいた。


「勇聖さん……あ〜えっと、まさかとは思うけど。あの人ってクレイさんじゃないですよね?」


「……ど、どうなんだろうな……。」


 するとクレイは助けてとばかりに大声で叫んだ。


「……ユウ頼むわ。見とらんで助けてくれや。お前がアカンかったらコウキで構えへん。……コンビニの前におるんはお前達なんやろ?」


「……って、ま、まさか目の前の奴が……クレイなのか!……。」


「勇聖さん。やっぱり目の前の人って……。」


「……そうみたい、だ。はぁ、でも、流石になぁ……。」


「じゃ、俺が行ってきます。」


 そう言うと光はクレイの元へ向かった。


 そして何とか光とクレイはその女性の輪の中から抜け出してきた。


「コウキ悪かったな。……で、ええんやんな?」


「あっ、はいそうです。俺がコウキで本名は白城 光しろき ひかるです。」


「俺は、草壁や。下の名前は前に引かれた事があって秘密にしとる。んで、こっちがユウか?」


「あっ、えっと……うん。……灰麻 勇聖はいま ゆうせい……。」


「なるほど、ホンマにコミュ障みたいやな。」


 そう言うと勇聖は頷いた。


「そうだ。そろそろ行かないと。」


「そやな。ここからそれほど離れとらんし、歩いて行ける距離や。」


 そう言うと光と勇聖は頷き、クレイと共にリュウキの家に向かった。


(勇聖さん。自分で言ってた通りコミュ障だったんだ……でも、いつまでこの沈黙が続くんだ?草壁さんも何か話しづらそうにしてるみたいだけど。何か話した方がいいのかな?)


(2人は俺の事をどう思ってるんだ?はぁ、てか何を話したらいいか分からないんだが……。)


(何や!この沈黙は……流石に耐えられへん。そやけど、何を話したらええねん?まぁリュウキの所に行ったら少しは楽になるやろ。それまで辛抱せなあかんな。)


 そう思いながら3人はひたすら歩いていた。

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