78話〜ハクリュウとマキシム

 ここは結界の城の地下の部屋。鏡に月灯りが映し出され、床に書かれた魔法陣と共鳴し合い妖しげな光を発し始めていた。


 アルフレッドとニックは魔法陣を挟むように両側に立っていた。


「ニック、いよいよだな。オルドパルスの儀式は間違いなく失敗する。前にも言ったが、それでいい。僕はこの日の為に、この計画を練ってきたのだからな。」


「ただ、少し気になる事が……グレイルーズのバイオレット家の者が動いていると、情報が入ってきたのですが。」


「今は放っておいても問題ないだろう。余程イレギュラー的な事でも無ければ、もうこの儀式は誰も止める事は出来ないのだからな。さて、そろそろ我々も始めるとしようか。」


 アルフレッドがそう言うとニックは魔法陣に向かい呪文を唱え始めた。



 場所は移り、ここは名もなき城の中庭。ハクリュウは水晶目掛け突進していた。だが、目の前にマキシムが現れ遮られた。


「悪いな。この先にお前を行かせる訳にはいかない。まぁ大人しくしていろと言っても、流石にしてくれる訳ないよな。」


 そう言われハクリュウは警戒しつつマキシムをみた。


「お前は誰なんだ?オルドパルスの手下なのか?」


「ふっ、俺がオルドパルスの手下?勘弁して欲しいが。まぁそう思われても仕方ないがな。」


「じゃ、いったい何者なんだ?それに何をしようとしている?」


「俺はマキシム。まぁ、何をするかは、これから起きる事を黙って見てれば分かる事だがな。」


「それは、どういう事だ!?」


「さあな。その前に、お前は勇者側って事は、ん〜見た目からするとホワイトの騎士か?」


「はぁ。何処をどう見たらそうなる。俺はハクリュウ。そしてラシェルに召喚された異世界の者だ。」


「今、何て言った!?まさか……ラ、ラシェル様が勇者を召喚したというのか。何故そんな事になった。そういえば先程グロウディス様がラシェル様の事を言ってはいたが。何故この事に気づかなかった。」


 そう言うとマキシムは頭を抱えた。


「お前いったい何なんだ?さっきからずっと戦うそぶりも見せず質問ばかりしてるけど。と言うか、お前こそ何でラシェルを知ってるんだ?」


「それはな。俺はレオン様直属の騎士だからだ。そして悪いがこの件にラシェル様を巻き込む訳にはいかない。ハクリュウだったな。お前もこの件から手を引け。そうすればお前を殺さずに済む。」


「それはどういう事だ?お前達は何をしようとしてる?」


 マキシムは剣先をハクリュウに向け睨み付け、ハクリュウはそれを見てとっさに細身の刀を握った。


「その顔は、手を引くつもりはなさそうだな。」


「当たり前だ!?友達が2人とも、この儀式で死ぬかも知れないっていうのに、ここで見捨てて逃げろって言うのか!幾ら何でも、そんな事できる訳ないだろ!?」


 そう言うとハクリュウは瞬時に中腰になり目を閉じ刀の柄に手を添えると、すかさず鞘から抜きマキシムの足目掛け水平に斬りつけた。


 マキシムは一瞬、何が起きたか分からず、それに気づいた時には両足を斬られ動けなくなった。


「っう。これが、異世界の勇者の力。って言うか、一瞬過ぎて攻撃が見えなかった。だが、何故足をわざと狙った?」


「何故って。俺は誰も殺したくないし、お前の目的も分かっていない。殺す理由も無いしな。」


 そう言うとマキシムは呆れた顔になり、


「ハクリュウ、1つ聞きたい事がある。お前はこの世界をどうしたいと思っている?」


 そう言われハクリュウは困惑した。


「それはどう言う事だ?この世界をどうしたいっていきなり言われても分かる訳ないだろう。それに今はこんな事をしている場合じゃ無いだろうし。」


「ふっ、お前の回答次第で、あの方の考えも変わると思ったんだがな。っう。お前は強い勇者なのだろうが、この儀式を失敗させるだけじゃダメなんだ。奴らを……。」


 そう言いかけた時、空からマキシム目掛け氷の剣が無数に降り注いだ。


 それを見てハクリュウはとっさにマキシムを庇い盾を天にかざし、


 《守護龍の結界!!》


 と言うと盾が白く光りを放ち龍の声が、


「ガオォォーン!!」


 と、辺りに響き渡り龍が現れ、ハクリュウとマキシムの周りを螺旋を描きながら下降していき、結界を作り出し2人を覆った。そして、無数の氷の剣を防いだ。

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