67話〜狐と狸の化かしあい

 グロウディス達は、途中まで爆音がした方に向かっていたが儀式が行われる中庭の方にも誰か行かないとまずいだろうという事になり、爆音がした方にはグロウディスとテリオスだけが向かった。



 ……そしてそのほんの数分前、クレイマルスとアキリシアは、ミスティとベルモットと戦っていた。


 クレイマルスは先程の槍は威力がありすぎると思い、別の槍と交換し戦っていた。


 アキリシアは、相変わらず逃げながら持っているもので何とかしのいでいた。


 するとベルモットが不思議そうにアキリシアをみて、


「ん?先程から気になっていたのですが。アキリシア様、何故本来の力を使わないのですか?」


「ベルモット。それはどういう事なの?」


 そう言うとミスティはベルモットを見たあとアキリシアをみた。


「別にたいした理由はないよ。ただ、面倒だから使いたくなかったんだけどなぁ。」


「アキリシア様。面倒って……この状況で何を言っているんですか。本当の力があるなら使って下さい!」


「クレイの言う通りだと思いますが、それとも他に使えない理由でもあるのですか?アキリシア様。」


「べ、ベルモット。何が言いたいの?」


 そう言うとベルモットは不敵な笑みを浮かべながら、


「なるほど、まだ自分の手の内を誰にも見せたくない、か。アキリシア様、相変わらず貴女は何を考えているのか分からない人だ。」


「ふぅ〜ん。そう言う貴方も人の事を言えないんじゃないのかなぁ。ドルマニール・ベルズ。」


「アキリシア様。何を言っているの分かりませんが。」


「元僕の直属の親衛隊の隊長であり。ん?あ〜そうか。そういえばシグマは、なるほどねぇ。何となく分かってきちゃったかなぁ。君たちが何をしようとしてるのかが。」


「アキリシア様、そういう貴女こそ何をしようとしているのですか?本当は、クレイの素性もうすうす気づいていたんじゃないのですか?だから側で監視していたのでは?」


「さぁ〜どうかなぁ。その前に、何でクレイマルスの監視を僕がする必要があるのかな。」


「どうなっているんだ?いまいち話が呑み込め無いんだが。アキリシア様が俺を監視って何の事だ?それも理解できない。」


「あっ、そう言えばこんな話をしている時間はなかったんだったな。」


 そう言うとベルモットは複数の魔法のカードを両手に持ち、


 《トリックア カード シュート!!》


 と言いいきなりアキリシアめがけ投げつけた。


 そのカードは、一瞬消え直ぐに目の前に現れ、アキリシアを襲った。


 それを見たクレイマルスはアキリシアを助けようとした。


 しかしアキリシアは不敵な笑みを浮かべながら、


「ドルマニール。さっきさぁ〜僕が本当の力を使って無いって言ったよね。じゃ、分かってた筈じゃないのかな。ただ、逃げ回ってた筈が無いって事を。それとも昔過ぎて忘れたかなぁ。」


「ま、まさかあれをやるつもりなのか?そうなると、不味いこのままでは……。」


 そう言い逃げようとしたが、既にアキリシアは右手を挙げていて、


 《爆炎術式 業火爆柱炎!!》


 呪文を唱えると指をパチン!!と鳴らした。


 そう、アキリシアは逃げながら気づかれないように、大きな魔方陣を書いていたのだ。


 すると、ドッォーーン!!っと、鼓膜を突き破るような爆音と共に、魔法陣から炎の柱が現れ、ベルモットとミスティを爆風と爆炎が襲った。


 だが既に、それに気づいた時には2人は間に合わず、カードは燃えつくされ、ミスティはショックで気絶をしてしまい、ベルモットは、かろうじて耐えたが動くのがやっとだった。


「な、何故だ!何故この事に俺は気付かなかった。それに、アキリシア様がここまで強くなっていたとは思わなかった。」


 ベルモットがそう言うとフラフラになりながら気絶しているミスティを抱え、


「く、悔しいが今はここから撤退した方が良さそうですね。そして俺達には、やらなければならない事がありますので。アキリシア様、悪いが貴女に構っている時間がないので、これで失礼します。」


 そう言うと指をパチンと鳴らしミスティを抱えたまま姿を消した。


 アキリシアとクレイマルスは、慌てて追いかけようとしたが、今自分達が何処にいるのか分からず、とりあえずその場で少し休む事にした。


 するとその爆音を聞きつけ、グロウディスとテリオスが駆けつけてきていた。

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