36話〜カプリアと水晶

 ここは名もなき城。オルドパルスとゲランはユウと共に明日の事について話をしていた。



 そしてカプリアは1人部屋にいた。


(さて、これからどうする?オルドパルスは明日にはこの儀式を行ってしまうが……)


 そう考えながら外を眺め、辺りを警戒してから隠していた水晶を取り出した。


 それを目の前に置くと、


「起きておるかのぉ〜。少し聞きたいことがあるのだが」


「これはカプリア久しぶりだね。最近話し掛けてくれないから寂しかったよ」


「前に言ったと思いますが、貴方の正体がバレてしまっては、この計画は台無しになってしまう。それ故に、しばらくは話さないという事にしていたはずですが……」


「そうだったね。それで聞きたい事ってなんだい?」


「いよいよオルドパルスは、明日魔王を覚醒させる儀式をするそうなのじゃが。前に、貴方が言っていた事が気になってな。オルドパルスが持っている水晶が2つのうちの、どちらなのかという事。そしてオルドパルスの話では、水晶はオルドパルスに指令を出しアドバイスなどをしてるらしいという事なのだが」


「そうなると……それは、あいつが封印されている方の水晶で間違いないと思うよ。封印されているから、もう1つの水晶を使いたくても使えないはずだからね」


「ではやはり、明日オルドパルスの言うように魔王が覚醒するのか?」


「カプリア、前に話したよね。あいつは魔王じゃなく魔神だと。その魔神は、自分にふさわしい器が必要だって」


「えぇ、そうなるとあの者はどうなるのかのぉ?」


「恐らく、身体を乗っ取られるだろうね。そして……」


「それでは、あの者が可哀想ではないか。それに、生贄の者も異世界の者らしい」


「そうなんだね。そうなると、なんとしても、その魔神の器にされようとしている者と、生贄にされそうになってる者を救わないといけないね」


「どうしたらいいのでしょう」


「君でも弱音を吐く時があるんだね。でも、何とかなりそうな気はするけど。今僕ね、あいつの通信用の水晶に繋がるように、もう一つ通信用の水晶を作ったんだよね」


「なるほど……では今、誰かと話をされているのですか?」


「うん。運良く、水晶は1人の気のいい男性が拾っていてくれて、今の状況を伝えたら近くにいるらしく、こっちに向かうそうだよ」


「ふぅ、そうなると……」


「あっ!そうそう。今ね、そっちの状況を少し把握したくて、城の外を見てたんだけど。面白い事に、2人の異世界の人といやもう1人……異世界の人らしいけど、何か間違ってこっちに来た感じかな?見る感じだとね。それに、王女が2人と数名の男女がいる」


「そうなのですね。では、そうなるとあの手紙が届いていればいいのですが」


「あっ!そうだ。さっき言っていた彼が、こっちに向かっているから、合流してもらった方がいいね」


「そうですね。あっ、その彼とは、何者なのですか?」


「色々と話したんだけど、確か名前は……テリオス・ブラックって言ってたけど」


「ま、まさか!?それは、本当なのですか?本当に、テリオス・ブラックと名乗ったのですね。まさかこんな偶然が……」


「彼の事、知ってるのかい?」


「えぇ、もちろんです。ブラックレギオンの王子テリオス様です」


「なるほど、そうなると。3つの国の王子と王女が全員とは言わないけど、揃うという事になるね」


「でも、こんな偶然が……確かにテリオス様は城にいらっしゃる事の方が少ないお方ですが。人助けがしたく1人で放浪の旅に出てしまうような方ですので」


「ねぇ、カプリア。そういえば、さっき僕が、ここに異世界からイレギュラーが1人いるって言ったよね。それと、この魔神の封印を解くには、条件が必要って事も……」


「えぇ。確か、先ずは異世界の勇者を3人召喚して、各国に結界をはる。魔神の器になる者を異世界から血の契約にて召喚する。そして純潔なる女を生贄にし祭壇にて封印を解く。これが魔神の封印を解く方法だと」


「うん、そうだね。でもよく考えてみると、異世界からの召喚された人は1人多い。これは、もしかしたらだけど。あいつに知られていなければ、この儀式は失敗するかもしれない。断言は出来ないけどね」


「そうですね。明日この儀式をどうやって止めるかを決めるのは、テリオス様がこちらに来られるのを待ち、それからという事にしましょう」


 そしてカプリアは、テリオスがハクリュウ達と合流するのを待つ事にしたのだった…。

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