第78話
相貌を変える朝の陽射しに、容貌をさらにする人人の化粧か、身にまとう香りも衣更えしたくなる清涼な流れは、オレンジの芳香が馥郁と放たれるよう、紅蓮の花もこの先か、夏の終わりのイメージは長雨に掃かれたせいで、キノコがうにょうにょ伸び姿にとどまってしまった。
閃光のように青空に雲が浮く、ダイナミックに形が湧いて、塊が近づいてくる、高山の雄雄しさに、冬の深深へと、悄悄とする気分だからこそ眩く湿気と油を失いつつ、感官だけが研ぎ澄まされて消えていく。
語学の枝伸ばしも、あいなし、にはならない、いみじく興味は尽きないのだが、費やす時間を考慮してあきらめが前に置かれる、自宅の植物もそう、数年前に始めて葉葉を茂らせたが、水やりに嘆いて一枚をおとす、広げるよりも、狭めないといけない。
金曜日のいさかいだ、小さい頃は似たような歌謡曲があった、詩は知らないが、気候も影響しているだろう、忙しくないからこそ細かいざらつきになり、暗く、つぶやく、ぼそぼそと、ここに人間性が現れる、そんな視点が忌み嫌われる。
またの延長に予定は消えて、浮かぶ音の進路もある、以前の体験がなければ結びつかないだろう、いまだ響く人の出会いと紹介は、唯我に聴き知る生活に接点を生み、ないからこそあるところがある、支流を変えて今月も、後半へ進もう。
風はきっと旅行にあるのだろう、日本の地方都市の目抜き通りを、サルワルカミーズとヒジャブの夫婦が歩くだけでなく、牧歌的な民族衣装の少女もついてくれば、休日の朝は一変する、オリエンタルな和音で前後の流れを染色するように、一段落の空き地に何を落とすか、巡らし巡らされる午前だ。
ふとした時に掴めない言葉を見つけた、因習がそれだ、現代の出版には姿を消した意義も、一ページに散らばっている、会社の隠微を嗅ぎつけ、混迷する同輩の中でもがき、虚妄に取りつかれながら、迷妄に陥りつつ異邦人を自認する、ただそれは、自己憐憫とナルシズム。
休日の朝も遅刻に追われる、期限は昼前というモーニングに合わせて、のんびり自宅で過ごすゆとりはなく、トーストに尻を敷かれて支度する、これをメリハリというかはさておいて、遅れてもかまわない背後もあるから気楽なものだ、とはいえ平日も、さほど変わらない心構えもあるもんだ。
未来永劫貧血にくらくらする、血糖値の関係か、血圧に返上か、それとも虚血に関するエトセトラか、悶えとなっている、昼前から夕方にかけていつも頭は意志を裏切ろうとする、まだまだ活動できる時間は年年短くなり、老いと体力の低下に頭を抱える。
まっさらな支持体に喜んでかきなぐることはもうない、どうして無意識の表現なんか求めたのか、理解できる、たやすく即座に、もう嫌になったのだ、考えることを、薬と酔いに任せて動かしたほうが楽なのだ、作品の未来を気にしなくて済むから、とはいえ逃げられない、考えることをやめられない。
モデム壊れて頭切れそうになる、電波がないと虚無を覚える、そうつかんだ、情報の繋がりが遮断されたことによる落ち着かなさではあっても、他人からの享受だけではない、こちらの発信が滞る、良いものを観たあとだから、早く連絡したいのだ。
電波がやってくることは決まった、早い仕事だ、明日明後日とふんでいたから、あがらない気分もにわかに解消される、目に見えない情報につながることで、どうしてこうも多幸感を得られるのか、もはや肉親の絆よりも、安定剤となるワイファイだ。
休日あとに疲弊するのもおかしなもので、これといって体を駆使したわけでもないのに、底で着いている、休息は決められた日にするのではなく、心が欲した信号を受けて行われる、ワイファイをすこし操って、そうした次の日は、頭が働いていらぬ先先まで思案される。
かいわれ大根に冬の香り、結びつかないイメージから頭が割れそうだ、何ら夢想は生まれず、ぼやきのかけらも落っことせない、軽口の女性が骨抜きで重ね合わせられ、無口な男一人を配してみる、なんとなく薄暗い、やりきれない灰色がただよう。
思ったよりも尾を引いて、経験はしつこい苦しさを予期する、延長に振られたヴィスコンティ監督は、どれほど期待していたかはかられる、たかが映画が観られなくなっただけ、もう一週間は経つのに引きずり込む、それだけ待っていた、それほど待ち望んでいた、そのぬかづいた若さを喜ぶべきか。
何百分の一を常に得られると思っている、またか、はなっからのあきらめも待ちつつ、にわかに落胆する、助けはピカソかゴッホか、死んで現れ、生きて埋もれる、姿ある時から着目され、滅後もまだ変わらずにある、夢の夢だ、だからこそミーハーに都合良く、自身に解釈される。
朝一番の読み返しを終えて、映画の内容と金額に一時間未満も満たない公演を比べると、実感に及ぼす感動の存在が釣り合う、するとドラマツルギーという単語が思い出され、意味はわからない、頭を視点にコーヒーを一飲みすると、ネパール人らしい帽子と共に自転車が過ぎる、これも一時のドラマだろうか。
恵まれた間柄を忘れて、当然として感謝を失うとは、ないだろう、なくしてから気づくほど若くもない、むしろずればかり生じる関係こそ通常として、週末に近づくほどだれる相手にいやけがさすばかり、望む通りにはいかないとはいえ、毎週同じことを繰り返す。
代替品を読み間違えることはしないが、もしかしたら他の作品でも気分は紛らわせられるかも、上映前のチケットでそう思い、新作のパンフレットを手に取って気は削がれる、映画への欲求が単に集中されていただけかも、恋とは違う焦がれであって欲しい。
丸いスナック菓子を噛んでいる、後ろの女は、はたしてスナックと呼ぶべきかどうか、もしかしたら、和菓子というか堅いポンセンのように、音が老人のように響き、どんな顔をしているか振り返りたくない、それらしい風貌なら何も思わず、そうでないなら幻滅か、いやむしろ、意外な情動を期待すべきか。
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