第69話

人の元気は計算では量れない、酔い酒が二日続いて、眠る時間は遅れても、体は一皮剥けたように動く、すると怒りもどっと沸く、加熱する力はガソリンを比喩させる、これが前借りでなければいいと、夜の不安定と空の体力に、つと思う。


弁当におちこむ、まぶたが三重くらいに、油ものが血を奪っている、アジのフライに、湿度は鰯雲に笑っている、鮮烈な青空に、上着の中は冷え込んでいる、自律されない神経に、明日は休みの今は昼の落ち、他人の仕事を待つばかり。


予報はいく通りの計算式を休日の朝に並べる、明日考える、そう言って昨晩放った物は言葉通り条件を前に出してくる、とはいえ雨と洗濯が問題で、どのように乾かすかが解答なのだが、時間の変化とギャラリーに足は迷い、向かう前から棒立ちになる。


大気にまつられていく、雨が降るというのにどうして露天商が並ぶのか、珍しく見た景色に奪われていた常識だ、なぜか、そう予定されていたから、祭りは閉じこめられていたので、ひさびさの出現に天気予報を持ち出してしまった、そこに脳をつなげて言葉をはめれば、もう眠い。


支払い額には何ら後悔はない、時折口にのぼっても恨み節は微塵もなく、今月の過ごし方に自戒するのみ、利他にはとてもなれはしないが、時たまくらいそんな心を持ってもいいだろう、共感能力とは異なる人との関係を、今更学ぶ先輩風だ。


増えれば増えた分だけ誘いは多くなる、好きなところを知れば知るほど選択に迫られる、その動きに疲れを覚えるかもしれない、しかし喜ばしいその過程を経ることで、磨かれ、洗練せれる、情につられて尾をひきそうだが、切る時はかまわずカットだ。


いつからか休日の朝は寝坊が望ましくなっている、飲水を減らして夜中に便所へ行くことは減ったが、深く眠れなくなった、いくら疲れた気分でいても、体は覚めたがっている、これが老いか、体力の衰えか、平日の分を取り戻す、たとえ一時間ばかり遅れた起床でも。


不老不死という言葉に、ノスフェラトゥとルビをふれば、このあいだ亡くなった方が偲ばれる、一つの作品が様様に波及する、西洋への旅行にミュージアムめぐり、それに加えて国の歴史に顔立ちなど、あらゆる知識の土台を授けてくれたと、そしてまた、死なない名前の映画に想いはつのる。


ふんばる力は足りないようで、昼の真ん中に眠気と椅子に垂れても、頭の内は根詰まりを感じない、離れていた日数が栄養を蓄えさせ、どのような運びになるか形に出ていないが、脈動だけは把握している、そう焦ることなく進められる、だから睡魔も快い。


好きと嫌いの裏はがし、散散批判したくなったあとに、返すよりも掴んで回す、次の日の奥まで影響は残り、青年の感受性は一晩で人物を模様替えさせる、多くが惹きつけられてもしかたない魔力がある、エロティックでサディスティックな笑いだ。


昼に急いて弁当を買いに出れば、小雨が降ってきた、曇り空でもここまではなかった、いつもこんなタイミングだと不運を背負い込もうとすると、ふと、もしかしたら午前にこんな天気はあったように思えた、すると雨粒は止み、そのままの曇天に戻っていた。


正常はいつも気づかれず、異常になって在りし姿に問いかけられる、桁の多寡ではない分の前後に、今朝は狂った時計が早く回ったり、止まったり、地団駄を踏んでいた、丸い時刻はやたらかわいらしく、修理に抱えられるシルエットは、通常ではない。


怒る姿に観惚れたせいか、頭に血がのぼるのは、真似か、巡りが悪かったらそうもならない、流れがわりと良いから吹き上がる、くらえばたまったものではない感情だからこそ、魅惑する美しさがある、些些に顰めた額になぜ魅力が、説明のいらない表情だ。


もう天気と関わるのはやめよう、昼休み時の降り始め、弁当待ちの雨量の増し増し、濡れ手の帰宅に味噌汁のひっくり返し、しかしフタが守ってくれた、多くの良好なタイミングを見ずに、数度の悪さばかり文句する、もうやめようと思う。


休日の朝の計画的な寝坊は、明け方の雨の強さと、平日の目覚ましとベランダからの冠水によって、三度寝の頭の重さが残った、これが明日以降の調子に出ると知りつつも、今日の鈍さが予想外で、天気の激しさに理由をつけて、どれも変化に託してしまいそうだ。


男の肉体に女の心を持っているわけではない、とはいえ寝過ぎの偏頭痛が残り、雨に濡れ車内に冷えれば、温かいハーブティーを欲する、それは若者の集うカフェにあり、手に持って二階席に上がれば、曇り空はガラス窓から光を射し、ポップな音楽に合わさって、ケベック映画の才能を両性として実に感じる。


一段落の二時間は、今朝の寝溜めとほぼ等しく、一日を無駄に感じさせる、何を動かして、どのように形にしたかまるでなく、ただ空費しただけだ、いつかこの分の取り返しはあるのだろうか、今となってはままならず、暗い気分にするだけだ。


頭の中を混ぜながら外をただ見る今日は、雀が二度近くにやってきた、餌を欲しがるだけだろう、それだけであっても意味をつかもうとしてしまう、近い距離は命の目線が感じられ、あたりを小刻みに見回したあと、羽を広げていく姿を追うと、やはり目は重なって見えて立つ。


疲れをとるよりは、むしろ溜めるような二日間の睡眠となり、それだけ頭を弱くしている、暗い元気が血流をおかしくさせて、休みを経た次の日は昨日に何があったか欲する由はなく、硬直して顔はいつもと変わらず雨を見て、隙間の時間にまたもや音を聴く。


もう怒りはごめんだ、それも自らの勘違いによって、あき時間が邪推を読み、倒れ込みそうな血迷いをよけいする、もう勘弁してほしい、笑いを越えた泣きに届きそうなほど一人慌ててバカバカしく、女女しい気持ちにつまされる。

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