第24話
焼き鳥を嗅ぎながら、二度目を書いている、自動筆記のようにして間違いや損ないなどかまわずにいたのが、考えてしまって手詰まりとなる、こんなことはあまりない、弱った身を考えて、やはり手はとまりながら、つまらなく思っている。
一区切りのあとの茫漠に頭は考えてばかりいる、午後にできることと決めてかかっているので、明日の午前は何をしようかと、いらないことまで拾ってこようとする、ここは思い切って、朝から破滅しようとほくそ笑む。
閑暇にあると、急いた性格はより一層小走りを始める、予定に埋められた間を縫って繕うのではなく、無地の広間で恣意に動き回るようだ、そんな中で雑煮と赤飯を食う間は、腰を着けるも、目は時計をちらりちらり。
昼も開けて気温は暖かい、今週末のコーヒーを早早と飲みに行くと、対面で白いマスクが三つ目に入る、そうか、初めての場所ではないからこそ、こちらが配慮を口にしなければならないか、鞄に用意するだけではなく、先に着けるのだった。
袋小路にいるようだ、そんな風に思いながら、袋町公園のベンチに座っている、着けたマスクも煩わしい、西日に降りてきて、そよ風に散る桜を照らしている、出ない時は出ない、目の前の風物をただ、今は味わえということか。
逃亡の余白があるから人は逃げられる、仮になくても、やめようと思いながら気を変えて映画館へ、きっとこれでいいのだと頭の端に大きく残しながら、おそらく待つことも必要だろう、触手を伸ばして近づくか、それとも寄ってくるか、今は熱源を欲している。
桜と鶯の鳴き誇る中で、雪がたわわにのしかかる、そんな昔日もあったのだろうと思い起こさせる北風の強さだ、外は晴れても中は鈍感だから、温度調整がなされていないだろうと厚着すると、それさえ寒い朝の風。
そんなに多い車内ではなかったはず、それでもやはり人は少ないだろう、宮島はいないと聞いていたが、その通り閑が散じているのだろう、太陽の光はいつもの通り射すが、床や座席ばかりが浮かび、人のシルエットさえも消失してしまう。
開花は早いなんて騒いでいたが、まだまだ花は残っているじゃないか、平和大通りでは楠がまだ赤い葉を残すも、緑全体が吹き返している、太田川放水路は満満と水を流し、雲一辺に空を輝かせるようだ、影のかかる己斐の山も、肌をところに光らせている。
正解が常に存在しているように思っている、しかし悩み迷っている時に、なんでもない言葉を無理に取り入れて助けとするように、その辺に転がっているガラスを適当に拾い上げて、これこそ今探していた物だと解決をつけるように、ルーツを根元にしてしまおう。
数字が増加して急に伸びると、怖れも膨れ上がるらしい、などとわざわざ言わなくてもわかることが、反作用しているようだ、宣言を皆は待っているのか、気分は膿み爛れてしまい、痛覚を失って自暴自棄になっているのか、それとも飽きたのか。
なかなか暖かくならないというのは、間違いなく間違いだろう、五月の連休で腕はさらされると、体育の埃が記憶となっているから、季節は前に倒れているなんて聞くが、気ばかり進んで朝晩に寒気を感じるばかりだ。
世界を描く視点を見つけた、乳児をのせるママチャリを車の天辺に立てて、あれは何かと口を開けて近づいた、これは使われるのだろうか、赤い牛の成分飲料をのせた缶缶車ではない、ビームを発しそうな、白い目玉の十の百乗だった。
寒気と怖気は同一に晴れる、早い睡眠は多量の汗をかかせ、こもった部屋の中に四十手前の臭いを充填させる、さらば体はすこぶり、暖かさは快活だと自由に近づいた動きを照りつかせる。
憂いにもう飽きた、子供じみた発言だろう、悲しむ相手に合わせて添い、一緒になって嘆く、とてもできない、それではこちらもくさくさしてしまい、浮かばないのでは、はたして優しさとは、息を沈めて、見守ることこそ必要なのだろうか。
憂慮の糸がもつれていく、結末なのか、かんじがらめか、外部の者には触れていないこととして、網だか綱だか分からない、業界の苦慮に、体の反応ではない、見開かない眼が映っている、苦肉の策、あまりに多くて、慣れが怖い。
用事にかまけて温くなっていることを知っている、そんなとろみと話していたらこっちまで張りがなくなる、そう思いながら自らそうなっていた、うるさいくらいに隙間を狙いつける、嫌な野郎になるべきだ。
向きがどうしても一定してしまうから、細身の体を思い出そう、蔓延する世間話にとられるも、線の切れが見えた髪先を思い出そう、わずかで坩堝となる空気だから、朗らかな光景に目を細めようとするも、無理があるか。
太陽の眩しい時がある、曇り空が広がると思っていたのは見間違いだったか、寒さも思ったほどではなく、あまりに体は元気が過ぎるようだ、狂犬のように吠えて噛みついたが、やはり一人よがりだったようだ、それでも、こうも清清しいのは、どうしたものか。
自転車に乗りながら、外の景色を流していく、桜も散りだして、梢に緑が生えだしている、あれをキレたというのだろう、ニュースで知ったような若い人だ、けれどそれも古い話題のような、普段よりも遅くこぎながら、いつまでも想念がついてくる、離れるのにはまだかかりそうだ。
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