22.空路
その1
玲奈との会談の三日後、ルコ達は都市
空港は空港付きのドローン達が整備をしていたらしく、おそらく何十年、もしかしたら100年以上、使われていないのにも関わらずきちんと整備されていた。この辺は、各都市がその機能を維持しているのと同様だった。
「ここって何でこんなにだだ広いの?」
恵那は空港に入った第一印象を述べた。少し唖然としているようだった。
「そうじゃな。それに真っ平らじゃな」
遙華も恵那に同意したが、こちらは興味深げだった。
「でも、この世界の都市も平らでしたわ」
瑠璃は珍しく二人の会話に参加してきた。この世界の自分の故郷へ行く前の期待感と不安感からか玲奈との会談の翌日からいつもより饒舌になっていた。
「で、何でこうなんじゃ?」
遙華はルコにその訳をいつものように聞いてきた。
「何でって何?」
ルコは面倒くないなあと思いながら聞き返した。
「いや、じゃから何で広くて平らでほとんど何もないんじゃ?」
「滑走路があるからじゃない?」
「かっそうろ?」
「えっと、ほら、向こう側にある長い道みたいなものの事よ」
ルコは画面に映し出されている滑走路を指差した。とは言っても、あれが滑走路かどうかはルコにも分からなかったが、中央にあり、幅が広いのでそうだと思った。
「あれ、道じゃないの?」
恵那が遙華の質問に参戦してきた。
「違うわよ」
ルコは短くそう答えた。
「じゃあ、何をするためのものじゃ?」
今度は遙華が聞いてきた。
「飛行機が飛び上がるために加速するために滑走路を使うのよ」
「速度が上がると飛べるようになるの?」
恵那はとっても不思議そうな顔をしていた。
「いや、羽ばたかないと飛べないのじゃ。鳥を見てみれば、分かるじゃろ」
遙華はそう反論した。
遙華も恵那も飛行機が飛び立っていくところを見た事がないので想像できないのは無理なかった。
「ええっと、加速する事によって、揚力を得て……」
ルコは頑張って説明しようとしていた。
「ようりょく?」
遙華と恵那はハモるように聞いてきた。
ルコは私だって詳しい原理は分からないわよと気付いたので、
「マリー・ベル、二人に説明して」
と結局マリー・ベルに丸投げした。
「承りました」
マリー・ベルはそう言うと、図解で遙華と恵那に説明を始めた。
ルコはその光景を見て、やれやれとホッとしたが、すぐに次の行動に移らないと行けない事に気が付いた。そして、
「それと、マリー・ベル。飛行機の準備はどうなっているの?」
と聞いた。
「準備万端です。現在、格納庫を出てこちらに向かっております」
「航路の天候は?」
「全く問題ありません。順調に飛行できると推定されています」
「そう、それは良かった」
ルコは安心した。
「まりぃ様は凄いですね。何人もの人と同時に話ができるなんて」
瑠璃はルコとのやり取りと遙華と恵那への説明を同時に行っているマリー・ベルについて感心していた。
ルコはAIはコンピュータだからマルチタスクは得意なのよと言おうとしたが、また説明しなくてはならないので口をつぐんだ。
そうこうしているうちに飛行機がエンジン音を轟かせながらゆっくりとルコ達の車の前を通り過ぎていった。ルコ達は圧倒されるかのようにその様子をじっと見ていた。飛行機は意外にもルコの世界の輸送機とあまり変わらない姿をしていた。ルコ達の車も奇抜という形をしている訳ではなかったので、それほど意外な事ではないのかもしれないとルコは感じた。全ての面でルコの世界と比べて技術水準が上という訳ではないようだ。
「あれが空を飛ぶのじゃな?」
遙華は空を飛ぶ原理より前を通り過ぎた飛行機の方に興味が移ったらしかった。
「そうよ」
ルコはそう答えた。
「あんな大きなものが空を飛ぶなんて信じられないわね」
恵那も遙華と同じく原理より飛行機に興味が移ったらしかった。
「まあ、飛んだら分かるわよ」
ルコがそう言った。二人の気持ちは分からなくはなかった。
「皆様、飛行機への搭乗を開始しますが、用意はよろしいでしょうか?」
マリー・ベルは次の行動を促すように聞いてきた。
「大丈夫よ」
ルコがそう言うと、車は先ほど前を過ぎていった飛行機を追うように右折した。
すると、目の前には後部ハッチが開いた飛行機が止まっていた。車は飛行機に向かってゆっくりと進んでいき、ハッチが開いて坂のようになっていたので、それを上っていき、飛行機の中へと入っていった。そして、機体内部の仕切り板の前まで行くと停車した。
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