21.調査結果

その1

 村18の殲滅戦後の翌日、ルコ達は都市幌豊ほろとよにいた。ルコ達の車は誤爆により破損していたので修理工場へと牽引され、現在は修理中だった。ルコ達は都市内の建物の一区画を提供され、足首を骨折した瑠璃を含めて、四人全員がしばらく居住する事になった。

 戦いは見事に勝利に終わったのだが、当然と言うべきか、再びと言うべきか、当たり前のように四人の間には重い重い空気が漂っていた。瑠璃の朝の検診が終わった後、四人は瑠璃の部屋にいた。しばらく沈黙が続いた後、四人はついに耐え切れなくなったように、

「ごめんなさい」

「すまなかったのじゃ」

「あたしが悪かったわ」

「申し訳ございません」

と示し合わせたように同時に四人は謝罪の言葉を述べて頭を深々と下げていた。

 同時だったので、一瞬何が起きたのかお互いよく分からないまま頭を下げていたが、状況確認のため、四人は恐る恐る頭をゆっくり周りを伺うように上げた。すると、目をキョロキョロとして他の人の顔色を窺うたびに誰かと目が合ってしまった。すると、何だか急に滑稽な事をしている自覚が増大していき、最初にルコが吹き出してしまった。そして、それをきっかけに四人は声を上げて笑った。

「なんじゃか、いつも同じ事を繰り返しているようじゃな」

 一通り笑った後、遙華がそう言った。

「確かにそうね。進歩がないわね、私達」

 ルコは遙華に同意した。他の三人もルコの言葉にしみじみと頷いた。

「でも、今回も何とか生き残れたよね」

 恵那は明るく笑っていたが、それが逆に生き残れたのが偶然だと言う事を如実に表しているかのようだった。

「とは言え、瑠璃に怪我させちゃったしね……」

 ルコは瑠璃を見て済まなそうな顔をした。

「いえ、妾の方こそ、怪我して皆様に迷惑を掛けて済みませんでした」

 瑠璃はルコ以上に申し訳ないという表情になっていた。

「何言っているのよ。あの時、上から落ちてきたんだから怪我ぐらいするのは当たり前でしょ。あの時は本当にびっくりしたし、どうしようもなかったのよ」

 恵那は瑠璃が怪我をした時の事を思い出して身震いしていた。

「その怪我の原因を作ったのは私なんだけどね……」

 ルコはますます済まなそうな表情を深めていった。

「いえ、それは違いますわ。ルコ様には落ち度はありませんわ。妾がもっと色々と気を付けなくてはならなかったのです」

 瑠璃はルコを庇うように反論した。

「いえ、私が……」

 ルコが尚も何かを言おうとした時、

「はい、そこで終わりなのじゃ!」

と遙華が二人の間に割って入ってきた。そして、

「反省するのは良い事なのじゃが、謝罪し合ってばかりじゃ、話が堂々巡りになるだけなのじゃ」

と続けて言った。

 ルコと瑠璃は遙華の言葉を聞いて二人で顔を見合わせて、それ以上は口をつぐむ事にした。

「それに今回も吾にも大いに責任があると思うのじゃが、俯瞰してみると、流されるように戦いに参加してしまった事が一番の原因と思うのじゃ」

 遙華は年長ぶった口調で今回の反省点を述べた。

「そうね。遙華の言うとおり、どこかで距離を置くべきだったと思うわね」

 ルコは最後の戦いで遊撃隊を率いてしまった事を念頭にして後悔しまくっていた。

「でも、今回は仕方がない面もあったんじゃないかな?」

 恵那はいつものように違う視点からそう言った。その言葉に他の三人は一瞬思考が止まったような感じだった。そして、

「だって、元々この幌豊ほろとよに来た理由は研究所で調べ物をするはずだったじゃない。その傍で戦いが始まってしまった訳だから、これはもう絶対に勝ってもらわないといけない戦いだったのよ。そして、勝つためには私達の参加が絶対条件だったわ、惚れで言っている訳ではないけど」

と自分の真意を説明するかのように続けて言った。

 その言葉を聞いた他の三人は反応に困った。四人の中の一番のドジっ娘キャラがたまに場の雰囲気を一瞬で変える正論を言ってくるのでそのギャップに唖然とさせられるからだった。しばらく、三人は唖然として恵那を見つめていた。

「どうしたのよ?あたし、何か変な事言った?」

 反応がなかったので恵那は焦ってそう聞いた。

「いや、恵那、主がまともな事を言っていたので、吾らは驚いているところじゃ」

 遙華は唖然とした表情のままそう言った。

「何よそれ!ひどい!」

 恵那はそう言ってむくれた。

「まあまあ、恵那、そんなにむくれないでよ。恵那の言った事はとっても重要な事だってみんな思っているから」

 ルコは取りなすように恵那に言った。

「本当?」

 恵那は疑り深い目で他の三人を見た。

「本当、本当」

 ルコは面倒くさいと思いながらもニッコリと笑いながら言った。

 その言葉を聞いた恵那は遙華、そして、次に瑠璃を見た。恵那と瑠璃は見られるたびに確認されていて、二人とも恵那と目が合った時に、大きく頷いた。これ以上面倒な事にならないようにするためだった。

「なら良かった」

 恵那は機嫌を直してくれた。この辺の扱いやすさが恵那の特長だろう。

「さてと、今回の反省点としては、あまり戦いに入れ込まないように注意する事ね。ましてや、今回は私達の戦いと言うよりお手伝いという側面が強かった訳だしね」

 ルコはこの機を逃すまいと反省話のまとめに入った。放っておくと話がややこしくなる恐れがあったからだ。

「そうじゃな、今回の戦闘でもう戦いは本当にこりごりなのじゃ。横転させられた時の爆音がまだ耳に残っているのじゃ」

 遙華は左耳を押さえながら神妙な表情でそう言った。

「そうね。あたしもあの時の事は一生忘れられないと思うわ」

 恵那は遙華に同調した。

「怪我したからだけではなく、妾も一緒の思いですわ」

 瑠璃がそう言うと、場の雰囲気が更に重くなってしまい、しばらく沈黙が続いた。

「あ、それよりも今後の事を話し合うべきではないでしょうか?」

 瑠璃は自分が原因で場の雰囲気が重くなってしまったので、慌てて提案をしてきた。

「そうじゃな」

 遙華はそう言ってから、一呼吸を置いて、

「まずはここに来た目的を果たすべきじゃな」

と今後の事に目を向けるべく決意表明をするように言った。

「研究所で調べ物をする事ね」

 恵那も落ち込んだ表情から今後の事に目を向けるような眼差しに変わった。

「まずは、研究所に入れるかどうか、玲奈さんに確認しないとね」

 ルコも反省はしたのでそれを活かしつつ、今後の事に目を向ける事にした。

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