その5
都市
ルコ達はその事もあって、北進する事を提案したが、遙華はその提案を頑として受け入れなかった。個人的な理由で三人を巻き込みたくないという心情が働いたのだろう。手を変え品を変えで、説得を試みたが最後にはどうしても自分のためにという事に結び付けてしまう遙華にほとほと手を焼いていた。
車はすでに修理・点検整備も終わり、いつでも行ける体制を整えたというのに、出発できないでいた。また、次の都市に向かうにも一番近いのは北の都市
ただ本格的な冬に突入し、積雪は増すばかりだった。都市
今夜も遙華の説得が叶わずルコはベットで就寝に就く事となった。
「うぁ、やっぱりダメ!」
ルコは掛け布団を蹴り飛ばして思わず叫んでしまった。
「ルコ様、お静かにしないとご迷惑です」
インカムからマリー・ベルの注意が聞こえてきた。
今は車内ではなく仮住まいの部屋に住んでいた。寝る時などは自分の部屋を割り当てられていたのだが、車内のカプセルベットみたいに遮音性は高くはなかったので注意されてしまった。
「ああ、そうね。気を付けないと」
ルコは口を塞ぎながら小声でそう言った。
「また、眠れないのですか?」
マリー・ベルはいつもの無機質な口調でいったのだが、ルコには呆れているように感じだ。そして、AIの癖にとか思ってしまった。
「ええ、そうなのよ」
ルコは短くそう答えた。マリー・ベルと一対一で話していると人間と話しているような感覚に陥ってしまうので、それを防ぐためにも短く答えていた。AIに悩み事を相談しても仕方がないと思っていたからだ。だが、冷静に考えてみると、直接的に解決には繋がらなかったが解決の糸口にはなっていた事を忘れていた。
「遙華様の事でしょうか?」
「ええ、まあそんなところよ」
ルコは素っ気なくそう言った。マリー・ベルに聞いても未だに解決しない問題だと端っから思っていたからだ。
だが、意外な事にマリー・ベルから答えが返ってこずにしばらく沈黙が続いた。
ルコは何だか嫌な沈黙に感じたので、そのせいで気の迷いか、藁にもすがるというか、そんな感じで、
「何かいい案ある?」
と聞いてしまった。
「いい案かどうか、
マリー・ベルはそう話した。いつもの無機質な口調だが、ルコにとってどうにもAIらしからぬ言葉遣いに感じられた。前にも思ったが、1対1の時はこうも印象が変わるものなのだろうか?
「何かあるの?」
ルコはいろいろ思う事があったが、あまり期待はしていなかった。
「SNSに書き込みがありました」
「い?」
「ご覧なりますか?」
「ああ、はい……」
ルコがそう言うと、目の前に書き込まれた内容が表示された。しかし、今までの話の内容とは全く関係ない事を言われたなと思いながら、それを読んだルコはこれは使えるかもしれないとニヤリと笑った。
AIマリー・ベルはそんなルコを見て、もう完全に女性になったと思ったのにたまに現れる男性の部分かもしれないと分析していた。ずる賢そうな表情だった。
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