258.面会
「エミリア閣下、キアサージから迎えのヘリが到着しました」
通信がきてから数分後、大和の後部甲板にはキアサージに搭載しているSH-60Bが迎えのため着艦した。
「報告ご苦労、では琴音閣下お迎えが到着したようなので、そちらに向かってください、数分後には我らが国王陛下並びに女王陛下がいらっしゃいますので、ではお気を付けて」
「エミリア殿、いろいろとありがとう、ではまた後程」
琴音と侍従と側近たちは皆、エミリア以下大和乗組員に深々と頭を下げ、用意されたヘリへと向かっていった。
琴音や彼女の周囲を守る女性の侍者たちはヘリに乗るとき、ヘリから発せられる爆音と踏ん張らないと飛ばされてしまいそうな強風に恐怖を感じていたようで、皆怯えた小鹿のように小さく震えていた。
琴音達は大和へ来る途中も着いた時もそして今も驚かされてばかりであった。
というのも、すべて鉄でできた船や空飛ぶものが自重によって沈んだり落っこちたりしないかが不思議でならないし、兵士が携行している武器が皆刀を持たず銃のみだったからだ。
銃の存在自体は“火縄銃”として彼女たちの国ではすでに実用化されているため何ら驚くことはなかったのだが、小型の銃自体はあるものの、あまり実用的ではないので軍隊で大量に配備するものは存在しない為、それを平然とやってのけていることに驚いていた。しかも、このことについて質問した出雲国関係者を驚かせたのは、小型である上に連射も可能で且つ慣れた兵士であれば数秒あれば再装填可能ということだった。
キアサージに到着し、ヘリからまるで逃げ出すように降りた琴音達一行は予想していなかった人物に出迎えられていた。
「お待ちしておりました“閣下”、空の旅はいかがでした?」
「あ、ああ、実に奇妙な体験だったよ……、ところで貴殿はこの船の艦長かい?」
「いいえ、艦長は艦橋にいらっしゃいます」
「そうか、ちょうどよかった、妾をコンダート王国国王陛下がいらっしゃる場所まで案内してもらいたいのだが?」
「そうですか、その国王陛下と呼ばれるのはこの私ですよ?」
その言葉に琴音はあまりの驚きで、その場で目を大きく開けたままフリーズしていた。
それは、一介の他国の将軍の出迎えにまさか国王が直々に出迎えてくるとは考えもしなかったからだ。
「……、貴方様が、こ、国王陛下で、すか?」
そういわれて琴音は、急なことで理解が追い付かず混乱し、人が変わったような話し方になりながら目の前の人物に本人かどうか確認をしていた。
「その様子だと驚かせてしまったようですね?そうです、私がコンダート王国の国王です」
「し、失礼しました、陛下とは知らず不敬な言葉を使ってしまい、面目次第ございません、それと恐縮ではございますが小生のことは琴音と呼び捨てて頂いて結構ですので」
「わかったよ、琴音、ここで話のもなんだからとりあえず中に入ろうか、中では連合艦隊の首脳たちも待っていることだから」
「救ってくださった妾達をお出迎えしていただいた上にご案内してくださるとは、貴方様はなんと器の大きい方なんでしょう、この恩はこの身をささげてもお返しいたします」
「いや、礼には及ばないよ、ただ俺が個人的に君に興味を持って来ただけだから、さ、行こうか?」
「ありがとうございます」
琴音はいまさらながら出迎えに対しての感謝とこれから国王自ら案内してくれるということに、頭を深々と下げ感謝の意を示し、部下もそれに習い一斉に頭を下げていた。
そのまま、ワタに案内され首脳陣が待つ会議室へと向かっていった。
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