243.強襲揚陸艦
ヘリから降りた俺たちは早速海兵隊総司令官のデクト・レノア海兵隊大将と海兵武装偵察連隊連隊長のフレデリック・グレン海兵隊大佐、キアサージ艦長のウィンブル・メイ海軍大佐に出迎えられた。
「お待ちしておりました両陛下、遠路はるばるお疲れ様でございます、私、海兵隊総司令官のデクト・レノアです、以後お見知りおき下さい」
レノアは海兵隊用に用意された藍色の海兵隊将校用の制服を着ていて、胸はその制服を破らんばかりの大きさを誇っていて、顔つきは凛々しくも整っていて、制服の色とほとんど変わらない藍色の髪をセミロングにして前髪はヘアピンでとめている。
彼女は海兵隊の総司令官に着任する前に、冒険者ギルドのローズナイツに所属していて、ローズナイツではエレザとミレイユ以外では一番の戦闘力と同時に統率力を持っていたようだ。
そんな能力的にも高いレノアを海兵隊の総司令官にさせたのはエレザの強い推薦によるもので、エレザはそれにとどまらずレノアを支援する為ということもあってエレザ自身が海兵隊の兵の戦闘訓練を直接指導することにもなっている。
そしてその隣に敬礼したまま微動だにしないグレン海兵隊大佐は、先ほどまで訓練をしていたのかレノアとは違って、一般兵と同じように戦闘服に身を包み、袈裟懸けにしたスリングには海兵隊の正式小銃のHK416A6が吊り下げられていた。
彼も以前冒険者ギルドで中規模のクランのリーダーを務めていたようで、リーダーを務めているほどなので実力もかなりのもので、実戦では常に先頭に立って指揮するタイプだったようなので仲間からの信頼は絶大だったようだ。
しかし、彼には大きな欠点がある。
それは本人自身そういうつもりはないのに他の人からは威圧しているように見えることだ、それに加えて彼の顔には戦闘で負った傷がそれをさらに助長させてしまっている。
「お疲れ様でございます両陛下、そしてようこそおいで下さいました我がキアサージへ、私はキアサージ艦長のウィンブル・メイと申します、ここで立ち話もなんですから艦内へどうぞ」
メイは白い海軍将校用の制服を着用し腰には海軍士官用のサーベルを佩いている。
彼女は小柄(150㎝)で程よい大きさの胸で、黒髪をハーフアップにしていて、顔は高校の学年の中で一番美人といわれる娘(こ)のようだ。
そんな彼女に案内され俺たちは一先ず艦内に入り、一旦司令官室に向かった。
その部屋で彼女からは報告を受けた。
まず航海予定だが、予定では途中どこにも寄港せず大陸を沿うように北上し、10日後に出雲国の中央地方にあるという縦須賀港につくことになっている。
その途中、艦隊は艦隊行動訓練や射撃訓練、実戦形式の戦闘訓練を行い、海兵隊は狭い艦内という場所に限られるが、射撃訓練や応急救護訓練等を行うこととなっている。
そしてこの強襲揚陸艦キアサージには、発足したばかりのコンダート王国海兵隊の中で精鋭部隊となるべく編成された海兵武装偵察連隊第一大隊と第二大隊が乗っていて、小隊ごとにローテーションしながら射撃訓練を左舷中央にある艦載機運搬エレベータで行っているらしい。
そしてこの後、レナが直接率いるメランオピス隊の中でも精鋭の一個小隊が乗ってくることになっていて、到着次第、実戦経験のある彼女らに発足したての彼らを鍛えることになっているようだ。
「メイ報告ありがとう、それ以外に何かある?」
「いえ、今のところ順調に進んでおりますのでご安心ください」
「そっか、それは心強いな!この後もよろしく頼みます」
「お任せください、陛下」
「あの、陛下、私からよろしいでしょうか?」
「ん?グレンか、どうした?」
俺は体ごと後ろに振り向くと、ちょうど後ろに立っていたグレンが申し訳なさそうな声で話しかけてきているようだが、やはり顔のせいで威圧してきているようにしか見えない。
「はい、お忙しいところ恐縮ですが、先ほどメイ閣下の話にも合ったようにちょうど下で我が部下たちが訓練を行っていますので、よろしければご覧になりませんか?」
グレンはその顔からは想像しがたいほど、物腰柔らかい青年のような話かたで俺を階下にいるグレンの部下達の訓練を見ないかと誘ってくれた。
「もちろん、行かせてもらうよ!ちょうど気になっていたんだ」
「でしたら、ぜひ」
「じゃあ、今すぐ行こうか」
「はっ!ご案内いたします、こちらへ」
先ほどから聞こえてくる銃声が何の銃を撃った時に出るものなのか気になってしょうがなかった俺は、その言葉を待ってましたと言わんばかりに立ち上がり、グレンとともに下に降りることになった。
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