173.カルロゼ危機!
カルロゼ南上空
敵空軍飛行隊の襲撃が去り、一旦平穏が訪れるかと思ったのは束の間、ここにきてさらに帝国領土内から別の飛行集団がこちらの領空内に侵入してきていた。
「NRB(北セレンデンスレーダー基地)、第4・5航空団各機、現在カルロゼ北空域に敵の空中輸送隊と思われる飛行集団がレーダーでとらえた、直ちに当空域に向かい撃滅せよ!」
「第4航空団長、NRB、ラジャー」
「第5航空団長、NRB、ラジャー」
これはすでに帝国領土内に潜入しているKCIA構成員や現地協力者の情報でこの輸送隊の動きは逐一こちらに送られていたので、これに対してはすぐに動けるように爆撃演習に参加していたA-10を補給後即時待機命令が出されていた。
ただ、これには先ほどの「東カルロゼ空戦」の増援部隊として向かうはずだった完全武装の第4(F-22)・5(F-15SE)航空団がすでに飛び立ちカルロゼ上空にいたため、A-10 ではなくこちらが対処することとなった。
「NRB、第4・5航空団各機、レーダー上では敵部隊の数およそ20、上がってきた情報と照合した結果まず間違いなくこれは敵空軍の輸送隊でこれには6000を超える陸上兵力が搭乗していると思われる」
「第4航空団長、NRB、直掩機はいないのか?」
「今のところ確認されていない、ただ低空を飛んでいる可能性は否定できない、警戒は怠るな」
「第4航空団長、NRB、了解直ちに対処する」
「第5航空団長、第4航空団長、こちらは貴隊周辺の警戒に当たる、ぞんぶんに暴れてくれ!」
「第4航空団長、第5航空団長、了解!任せておけ!おい!野郎ども聞こえたか!いっちょ暴れるぞ!」
「「「「おおおっ!」」」」
一方この侵攻に対してコンダート陸軍側は、直ちにハミルトンへセレンデンス基地でとどまっていた陸軍第34兵員輸送支援師団のUH-60を向かわせ、そのヘリでハミルトンの兵力を3千(近代化武装済み)ほどをピストン輸送でカルロゼに急派、それに加えてレーダーサイト基地防衛部隊である陸軍近衛第四師団隷下第23歩兵連隊から一個大隊を送り込み、一旦は持ちこたえてもらい、ウルス城攻略後に本隊を増派させることにした。
これによりカルロゼの守備兵力は元々守備していた兵力(中世装備)5000と合わせて約1万に膨らむが、敵兵力はおそらくこれの倍以上で攻めてくると予想されているのであまりこれで楽観はできない。
そして、再びカルロゼ上空。
第4航空団各機は敵をレーダーでとらえていたので、AIM-120Dを一斉発射した。
これを食らえば一発だろうとこちら側の人間は思っていたが、そんな気持ちを帝国軍側の想定外の動きによって一瞬でぶち壊された。
「団長!レーダーにまだ反応が残ったままです!」
「なぜだ!?さっき40発も撃ち込んだんだぞ?」
「しかし、レーダー上の数は変わらずです……恐らく全弾躱されたかと」
「そんなバカな!もう一回一斉発射だ!」
団の皆はきっとまぐれで躱しただけだろうと思っていたが、次の瞬間それは覆されることになる。
「敵、二度目の一斉発射にも耐えました……さらに全機ミサイル残弾0です」
「くそ!なんてことだ、何が起きている!敵はなぜ落ちない?」
「第5航空団長、第4航空団長、どうした?敵の数が減らないようだが?」
「わからん!これより第4航空団各機で近接戦闘に移行する!」
「まて!落ち着け!もしかしたら魔法障壁で防いだのかもしれないぞ?あれはおそらく上級魔法5回ぐらいなら耐えられるがそれ以上は耐えきれずに消滅するはずだ、それならこっちが一斉発射をあと2回やれば落とせるはずだ!」
これは、あとで判明した事だが、帝国空軍の空中輸送隊に所属する飛空艇は攻撃力を持たない代わりに強力な防御魔法を持っていて、今回の輸送隊はその中でも強力な上級魔法に何度か耐えられるほどの“魔法障壁”を持っていた。
帝国空軍側も輸送中に何かしらの攻撃を受けるだろうと見越してこれを持たせたに違いない。
しかし、そんな予防策は一時しのぎに過ぎなかった。
「第4航空団長、第5航空団長、そうか、それならあとは頼んだ、こいつらを無駄死にさせたくないからな」
「任せろ!聞いたか?第5航空団の諸君!今度は我々の番だ!」
「「「「了解!!」」」」
こうして、第5航空団長の考え通り、再びのミサイル飽和攻撃には魔法障壁が耐えきれず、次々に被弾していき、これによって一気に撃ち落とされていった。
「NRB、各局、敵輸送隊消滅を確認、全機帰投せよ」
「第4航空団長、了解、RTB」
「第5航空団長、RTB!」
一時はひやりとした展開があったが、斯くして二度にも及ぶ空からの敵の侵攻を防ぐことができた。
そして、この二度にわたる空戦(一方的)によって大きな戦訓を得られた、これは今後の空軍にとって大きな一歩につながることだろう。
こうして、空の安全は何とか守ることができたが、地上にはまだ大きな問題が山積みだ。
それはウルス城とカルロゼだ。
これは、今まで以上に過酷な戦いになることを皆が思い、緊張が高まっていた。
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