130.会議


 ここで、行われるのは軍だけの会議ではなく、国の全体としての会議をするためで、これまで国に元首がいなかったせいで議題がたまりにたまっていた。


 1.召喚された軍艦や戦車、装甲戦闘車の構造や製造方法を国内の技術者に学んでもらい、それをもとに、軍に対してだけではなく民間向け用の物を召喚に頼らず製造していく方向性をとっていきたい(発議者:エルミナ・ユリア首相)。


 2.国土が広い為、馬車や人が何かを輸送するとき時間がかかってしまうため、そのための公共交通機関の開発の助けとして召喚を行えないか、そして同時に軍用の輸送網の構築をしていきたい(発議者:ハミルトン・エレシア陸軍大臣)。

 2-1.自動車の召喚。これを使うにあたって、自動車専用道路の整備及び高速道路を整備。

 2-2鉄道の敷設。電車やディーゼル機関車などを召喚し、同時に鉄道関連の整備も開始、将来的には大陸縦・横断、循環高速鉄道を整備(整備新幹線)。

 2-3空港の整備。最初は軍用の空港として開港し、のちに民間転用を視野に入れる。


 3.前述の議題に追加として、こちらにしか存在しない優れたもの(主に魔法)を“現代技術”に融合させ、より良いものを発明する(発議者:ワタ)。


 4.東方にある島国「出雲国」との外交交渉を開始、理由として、出雲国は現在帝国から我々と同様侵攻を受けていて、現状は何とか撃退できているものの、数に勝る帝国にいつ滅ぼされてもおかしくない状況になりえる為、こちらの海軍力が上がってきたのち同盟軍として参戦して恩を売り、その後、同盟国として関係を築きたい。

 関連して我が国の現在唯一の同盟国であるエンペリア王国に対して、できる限りの技術提供や開示を行い、今王国に対して兵員や食料を援助してくれているので、その返礼にする(発議者:カイル外務大臣)。


 5.現代知識を有効活用させるために専門の学校を新設し、それと並行して一般向けの教育機関の整備を行いたい(発議者:ヘルドル内務大臣)。


 6.議題1と2で上がった製造業や研究部門を成長させるのも重要だが、今後大規模になるであろう製造、開発、生産、修理のために使う電力や魔力を生み出すための物や水道を用意していかなければならない(インフラ整備)、同時に自然環境への急な負担にならないように極力化学系の廃棄物を抑える(公害防止策)。

 同時にその生み出された力を庶民が使用できるようにして、生活水準向上を目指す(発議者:ワタ)。


 このように各方面の大臣からいろいろな案が出てきた。

 特に1と2については俺にとっても優先して実行していきたい案だ。

 1の案は今回のように国内全周で戦いが行われている今、とてもじゃないが召喚だけでは兵器の供給が間に合わないので最優先で実施していきたい。そして安定生産や大量生産に向けて工業力も向上させていかなければならない。


 2の案は今の輸送手段が徒歩や馬によるもので、輸送量と速さが限られてしまうのでこちらも優先的に政策を実施していきたいことで、そのためにまず試験運用もかねて東部戦線手前までを結ぶ鉄道を敷設し、兵員、物資、兵器を輸送をしたい。


 そして4の案で出た東方の国との外交交渉の第一歩として、すでにこちらに出雲国から使節団がやってきているらしく、数日後にアルダート城内にある迎賓館にてその使節団との会談が行われるようだ、そこには何でも国王に嫁入り希望の人がついてきているというから驚きだ。


 一番最後に会議とは関係のないことだが、魔法のことと、この世界のことを全く知らない俺のことを思ってか、メリアが軍の士官学校に入学する事を強く勧めてきた。このことについては俺にとって願ったりかなったりで、丁度魔法と現代兵器との融合について考えてみたかったので二つ返事で了承した。


 4時間以上に及ぶ会議が終わった後、俺はやっと解放されたかと思い一息ついていたが、なぜか不機嫌なメリアに座っていた椅子ごと引っ張られ、すぐに軍幹部が集まった会議に出席することになった。


 ここでまずヴァーテ・エレン陸軍参謀総長(軍の改編に伴い総参謀本部長から変更)から何点か報告があった。


「まず私からご報告があるのでこの場を借りてお話させていただきます」

「一つ目が東部戦線の近況についてです。残念なことに陸軍東部方面最重要拠点であるウルス城とベルン海軍基地が帝国軍に占領されてしまっています、両方ともに指揮官や住民などは避難ができたようですが、最後まで残った守備隊は全滅したとのことです。そして今、帝国軍はその基地を拠点化しその周辺地域に対して航空戦力を大量に投入してきており、魔導船による爆撃が激しさを増しています、こちら側は大型のバリスタを大量に配置して対抗措置を取りましたが、それだけでは焼け石に水で効果は全くありません」


「二つ目はエンペリア王国からの援軍についてです。もうすでに東部方面の部隊と合流を果たしており戦闘行動に参加しているようです。その援軍の指揮官はエンペリア王国ローザ王女が就いているようで、敵陸上部隊に対しては圧倒的な戦闘能力で圧倒しているようですが、エンペリア王国軍も帝国軍による空爆によって損害が拡大し始めているようです」


「三つ目は、エンペリア王国の情報部の提供によって判明したことですが、王国より遥か北側に位置するイスフェシア王国がテレン聖教皇国と戦争状態になりましたが、規格外の魔法ととある人物によって戦場となった広大な土地と敵兵諸共氷漬けにしたそうです。魔法を知らない陛下からしたら現実的な話ではありませんが、魔法を身近に感じている我々にとっては異常な話でとても驚いています。そしてかの二国は戦争終結後すぐに同盟を結んだそうです」


「最後に国内から東部方面に向けてある冒険者ギルドの有志達が多数向かっているようで、今後そのメンバーが東部戦線に参加するようです、長くなりましたが以上です」


 海上でも情報を得ていたが現在はそれ以上に状況が悪化してきているようで、すぐに改善させなければこのまま帝国に押し切られ王都まで侵攻を許してしまう。

 そして、敵は豊富な航空戦力を保有してこちら側を圧倒している。

 特に魔導船と呼ばれるものによって周辺の村や町を空爆しはじめ、被害が民間人にも及んでしまっている。


 帝国航空部隊の対応策として、俺は新たに航空戦力と対空兵器を召喚することにした。

 それに伴い“空軍”を新たに組織し、空軍基地を整備していこうと思う。

 そして各軍も近代化と軍事力強化を急速に進めていく。



「それじゃあ、俺から今回の召喚と今後の軍の組織改編と“新設”のことについて話していくよ」


 この会議のメインとなる、召喚と今回の召喚とあわせて軍の大幅な組織改編についての話を俺は始めた。

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