119.レーダーの弱点 2


「「はっ!」」

「それとお前らは後ろで立って見てろ!」

「「……」」

「返事は!」

「「はっ!承知しました!」」


「よろしい、EB1、指揮はたった今俺に移った、これより俺の指示に従え」

「EB1了解、何かあったのでしょうか?」

「何でもない、現在の敵との距離は?」


「敵との距離現在50海里、なおも接近中、いかがされますか?」

「戦闘隊全機のミサイルをもって撃破しろ!一匹たりとも撃ち漏らすなよ!」

「EB1了解、作戦実行いたします」


「EB1、オールWE、ボギー40シップス、ブルズアイ1-8-0、フォー0-4-0、ターゲット・エンジェルス6、ベアリング0-2-0(貴機より20海里)、フォー0-4-0」


「EB1、オールRR、ボギー40シップス、ブルズアイ1-8-0、フォー0-4-0、ターゲット・エンジェルス6.5、ベアリング0-3-0、フォー0-4-0」


「WB1、ウィルコ(了解)」

「RR1、ウィルコ」


「EB1、全機攻撃開始!」


 その命令が発したのと同時に、すでにワタの操作によって割り振られていた目標に対してミサイルが一斉に飛んで行った。

 第一斉射で50機を落とした、それを受け流石に敵もこちらの攻撃だと気づいたのかこちらに突っ込んでくるようにスピードを上げてきていた、ただそれも次の攻撃によって沈黙させられていた。

 この攻撃によって敵は成す術もなくこの空に消えていった。


 現場にいる兵にとっては今起きていることと自分が行った結果人を殺めたという実感がわかず、さらにはまたさっきと同じことが起きるのではないかと思い疑心暗鬼に駆られている。



 ときは少しさかのぼり、二手に分かれた竜騎兵連隊は味方のいる方向を目指していた“はず”であった。

 というのも、さっきの攻撃による混乱で方向を見失ってしまっていて、今は本来戻るはずであった方向とは逆の方向に進んでいってしまっていた。つまりは自ら敵陣に意図せず突っ込んでいっている状況に陥っていた。

 しかし、前方のことがレーダーのように感知できるといえどたかが20㎞程度なので方向があっていることを確認することに全く寄与しない。

 そんなことを思っていると再び、レーダーもどきにさっきと同じ“何か”が近づいてきているのが反応を示したようだ。


「副隊長!またです!」

「何がだ!」

「さっきとおんなじものが飛んできています!!」

「何だと?こっちは味方の艦艇がいる方向だぞ!?」

「反応さらに接近!回避!回避っ!」


 回避行動を行い始めた時には時はすでに遅く、次の瞬間には副隊長が引き連れていた40機がすべて消え去っていた。

 それと同時に隊長が率いている方にも攻撃が殺到し10機に着弾した。


「隊長!今ので10機がやられました!」

「副隊長応答しません!ほかの隊員からも応答ありません!」

「あっちは全滅したか……もしかしたらこっちの方向は敵の部隊がいる方向なのかもしれん!」

「隊長!意見を具申します!残る30機で反撃を仕掛けましょう!さすれば敵も驚いて浮足立つに違いありません!」

「そうだな、そうしよう、やられたままではやられていった彼らに示しがつかないしな!」

「また来ます!」

「なっt」


 再びの攻撃によって帝国第一偵察竜騎兵連隊はこの世から完全にいなくなってしまった。



「敵機全機撃墜を確認!全機帰投を開始せよ!」

「EB1、ラジャー、当機は燃料が切れるギリギリまでこの空域を警戒監視します」

「わかった、RR1から順にWE20まで着艦せよ」

「ラジャー、RTB(Return To Base:帰投する)!」(全機)


 これによって、コンダート王国にとって初の、そして歴史的な一戦を勝利で飾ることができた。しかし、今回のようにレーダーを信用しすぎることが原因による敵の数の誤認、さらに指揮や運用面でも問題がまだあり、このままだともっと複雑な戦闘がおこったときの対処ができなくなることや陸軍との連携がうまくいかなくなる可能性が出てくる。


 しかし、彼らもこの後、これ以上の予想外の出来事が起こるなどとは夢にも思っていなかった。

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