117.強襲
場面変わって、帝国サイド。
帝国海軍第一艦隊所属の第一一竜騎兵“連隊”は味方艦隊前方の偵察任務に就いていた。
この竜騎兵たちは海軍の中でも多くの武勲を残してきた最強の部隊であった。というのも敵(王国)の艦隊に対する強襲による艦船の撃破だけではなく、陸軍の上空支援部隊として内陸部での戦闘にと数多くの戦闘行動に従事し、そのすべてで優秀な記録を残している。
そんな彼らの強さの秘訣は、騎乗している兵だけが優秀なのではなく竜も優秀なのでその絶妙なコンビネーションと部隊全体の指揮統制能力の高さから来ている。そしてさらにすごいのが決して相手を侮らずいくらこちら側が優位であっても決して驕らず戦うことが彼らのモットーである。
そんな彼らに対して、艦隊に属するほとんどの兵員は今回の出撃を楽観的にとらえていて、第三艦隊は不運にも嵐にあって沈んでいったのであって決して王国なんぞに負けたわけではないと思っているようだ。
「前方上空20km先、敵影無し!水面上にも敵影見られず!」
「おいおい!流石に空から敵は飛んでこんだろう?なぁみんな?」
「あ、いえ、一応……」
「そうだぞ?流石に相手はこんな優秀で最強な部隊はいないぞルーキー?」
「だからと言って、侮らんのが我ら竜騎兵だぞ!」
長機に対してたどたどしくマニュアル通りの報告をすると、周りの先輩から竜騎兵になりたての新兵はからかわれていた。
ただ、こんな風に軽く会話しているときが戦場の最前線にいる兵たちにとっては貴重なリラックスタイムである。
この一連の報告や周りとの連携などを無属性魔法の“テレパス”によって念話のように行っていた。さらにレーダーもないのに20㎞先をどのようにして探知しているかといえば、こちらは竜が持つ探知スキルによるもので、竜の種類によっては100㎞まで探知可能なものもいるようだ。
ちなみに、このようなテレパスのように味方内の通信、レーダーの代わりをする探知スキルを使った戦闘スタイルを持つのはこの竜騎兵を運用している部隊のみで、他はまだ信用性も低く先進的すぎるものに抵抗があるらしく、あったとしても形だけだが実験部隊があるだけだ。
しかし、これから接敵する相手がこれを上回る装備を持っているなどとは知る由もなかった。
そして、そんな一時の安らぎの時間は唐突に地獄へと変わった。
「連隊長!報告!20㎞先より何かが急速接近!」
「なに!?そんなことあるか?もう一度よく見てみろ!」
「目標視認!!突っ込んできます!!」
「全機、翼をたたんで急降下!」
「「「「了解!」」」」
竜騎兵たちは巨大竜や超強力な魔法攻撃を放つ古代竜などに対抗するようにも訓練されていて、その時は急降下して回避行動をとるようにしている。
高度な訓練を受けている竜騎兵たちはきちんと統率され機敏な動きで集団行動をとっていた。
しかし、そんな彼らの後ろにはぴったりと“何か”がついてきていて、後ろを振り向くとそれはもう目前に迫ってきていた。そして、残念なことに“何か”に追尾されていたものはその後この世から文字通り消されていった。
「急降下しているのについてきます!!うわ!!」
「ダメだッ!!」
「くそっ!」
急降下して速度も出ているはずなのによけきれず、“何か”が当たり派手な炸裂音と爆音を響かせながら次々に火だるまになっていった。
こうして一瞬のうちに20もの竜騎兵と竜たちが命を落としていった。
「連隊長!今の間に20機やられました!」
「くそ!あれはいったい何なんだ!?追尾してきやがったぞ?」
「連隊長!この空域で固まっているのはまずいので二手に分けましょう!」
「そうだな、これではまた一気にやられてしまうからな」
「では自分がもう片方の指揮を執ります!」
「頼んだ……だが、そんなことよりいったんここは引き返すぞ!嫌な予感がする」
「私も同感です……全機反転、帰還する!」
しかし、彼らはこの後起きる惨事をまだ知らなかった。
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