75.新武器導入


 陛下はある程度話を聞いた後、今回新たにLiSMで召喚するものの話をし始めた。


 どうやら今回、作戦に参加してもらう“メランオピス”には前に渡したSIG516と SIGP226に加え新たにPDWのMP7、拳銃でのマン・ストッピングパワー(被弾させた相手の行動能力などを奪う力のこと、一般的には弾丸の質量が大きく、速度が高速なほどストッピングパワーが高い)も考え45口径(約11.4mm)のHK45もLiSMで召喚し追加するようだ。


 MP7はHK416と同じくドイツのH&K社が開発したPDW(Personal Defense Weapon 個人自衛武器)で特徴として、使用弾薬に小銃弾を短縮したような4.6㎜×30弾を使っている、この4.6㎜×30弾は9㎜拳銃弾に比べ小口径高初速なため中距離(200m)でのある程度の命中精度と威力を実現しており、全長も340㎜と短く(ストック展開時540㎜)、重量も1.6㎏と比較的軽いほうである(同社のMP5は全長550重量約3㎏)。


 そしてこの銃は低反動小型軽量(他に比べ)なので片手でも打つことが可能、その為上部についているフリップアップタイプ(折り畳み式)のアイアンサイトを倒している状態では拳銃と同じサイトになっている、そしてストックを展開すれば通常のサブマシンガンのように構えることができ、その時にはサイトを立てて使うことにより遠くも狙えるようになる。


 この多目的な任務にも対応できるMP7であれば、女性のように小柄な人でも扱いやすいだろうし、今回のような作戦もそうだが、ほかの特殊任務にも対応できそうなので選んでみた。


 HK45は上記と同じ会社で開発されたダブルアクションオートマチックピストルで.45ACP弾(11.4㎜×32)を使用し、特徴として“スパイダーマングリップ”と呼ばれる握りやすいグリップを持ち、銃後部に左右から操作できるサムセーフティがあり、そのレバーを下まで下げることによってデコッキング(ここでは撃鉄を叩くためのハンマーを倒すこと)もすることができる。


 ちなみにダブルアクションというのは、例えばリボルバーでいうと、引き金(トリガー)を途中まで引くと撃鉄(ハンマー)が起き、引き切ると撃鉄が落ち、同時に撃針(雷管を叩き撃発させる部分)も落ち、弾を発射させることのものを指し(一回一回撃鉄を起こして撃つことも可能)、これとは別にシングルアクションというものもあり、こちらはリボルバーでいうと一発一発指で撃鉄を起こして撃つことを指す、双方の利点として前者は引き金を引くだけで連続して撃つことができ、もし不発があったとしてももう一度引き金を引くだけで撃つことができる。また不意な敵との遭遇の時も素早く対応できる、後者は一発一発撃鉄を起こし撃つことで正確な射撃に向いている。


 どちらも一長一短なところがあるが、ダブルアクションの場合バネの力で倒れようとしている撃鉄を、引き金を引く力で引くので、強い力で引き金を引く分手が力み、銃本体がぶれてしまい命中精度が落ちてしまう、対するシングルアクションの場合一々撃鉄を起こして打つので昨今の対人戦闘などには向かず競技やハンティング用といえるだろう。


 このHK45に至ってはただ単にデザインの良さで選んだだけだが……


「――ということなんだけどどうかな?」

「そうですね、そうすればもとより最強な部隊が、さらに強化されること間違いなしですね!」

「そ、それは他の部隊でも、う、運用できれば我が軍もさらに強くなりますね」


 普段、もの静かなポーラが今の話を聞いてだろうか、少し興奮気味であった。


「それと、これらともう一つ召喚するつもりだけどね、それはまた今度……さて、この後、その部隊と会わないといけないし、召喚も行わなくてはならないから、ここらへんで失礼するよ」


 話がひと段落ついたので、陛下は席を立ち一人ドアへ向かってゆく。


「じゃあ、あとは頼むよ」

「ハッ!最善を尽くさせていただきます!陛下に栄光あれ!」

 ポーラと私は素早く立ち上がり敬礼をして陛下を見送った。



 俺はエレンと話が終わるとすぐに部屋を出て、“メランオピス”とベルたちの待つ場所へと向かうことにした。

 しかし、扉を開けてすぐそこに一人の女性待っていた、よく見ると猫のような耳が頭の上にのっている。


「何者だ?」


 俺は敵であることも想定してとっさに腰のホルスターにしまっていたSIGP226に手をかけた。


「驚かせてしまい大変失礼しました、私は“メランオピス”の部隊長のレナと申します。この後お会いするのが待ちきれなくて、不躾ながらここでお待ちしておりました」

「なるほど、部隊長殿直々にお出迎えとは感心したよ、ありがとう」

「さて早速ですが、向かいましょう陛下」


 彼女の行動に少々驚かされながらも、その背中についていくことにした。

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