59.修羅場?

 

 ベットから起き上がると隣にはリレイが寝ていて、着ていたものが脱げており、いろんなものが見えてしまっている状態だった。


 (いかん!朝から俺のビックマグナムが大変なことに!)


 隣の生々しい(ものすごくいい意味で)状況をみて俺は主に下方面がプチパニックに陥っていた。


 そんな状態をつゆ知らず、昨夜ここまで案内してきたメイドが気を利かせて、リレイ用に服を持ってきてくれていた。


 もちろん昨日着ていたもののリレイが持っていた予備ものなので、この間の黒い軍服だ。

 目のやり場に困る隣のリレイを起こして、申し訳なさそうにしているのをよそに着替えさせる。

 着替えさせている途中、不可抗力で俺はリレイのあんなところやそんなところに触れてしまう。


「あっ、そこは」

「ご、ごめん」


 (や、柔らかい)

 俺は理性を何とか保たせながら、着替えを済ませる。

 こうしていると主従がもはやどちらかわからなくなる。

 朝から予定されていたセレナ達本隊との合流をしなくてはならない。


 そんな朝と昨晩のおかげでちょっとした寝不足であったが、LiSMから例の翼を授けるとかいうドリンクを飲んで何とかなっている。


 居館から出て城壁の門前まで行くとそこにはすでにセレナ達が待っており、そのすぐ近くにシルヴィア達をはじめエレシア、アナスタシア、ノア、ローレンス、ユリーシャの一団が集まっていた。

 ただ一人だけ異様な気(・)を発しているのがいた――


「ワタ様ぁ、やっとアエマシタネー、ところデそ、ソの、オンナァァァァァ!」


 そんなカオスモード(今命名)で絶叫をしながら抜刀してこちらに突撃してきたのは、普段は天使のような姿をしているベルだ(背中から生えている羽のせいで自然にそう見える、それが今や堕t)。

 今はいつもの面影はなく、恐怖と絶望、嫉妬、妬みのすべてを身にまとったかのように、今では真っ黒な霧を周囲に発生させていた。


「ソイツハだ~れ?新シイ、オンナ?シラナイ?コロス?……死ネェェェェェ!」


「ベル止まれ!待たせたのは悪かった、この子は昨日から俺の直属になった部下だ危害は加えないでくれ!」


 カオスモードになって剣を振りかざしているベルを止めるべく、寝床の隣の机の上においていたコンバットナイフで軽く受け流しそのまま抱き留める。


「どうした?せっかくの可愛い顔が台無しじゃないか」

「も、もう、申し訳ございません、私はワタ様に何たる無礼を……どうか無礼を御許しください」


 さっきまでまとっていたものは文字通り霧散し、今のベルは俺の腕の中で全身を縮込ませて、アイドル事務所に面接に行ったら問答無用で合格しそうなルックスの子が上目使いで謝ってくる。


「もう、済んだか?そろそろ説明してもらおうか?そいつを」


 待たされたことに少しイラついているのか、少し語気の荒いセレナがリレイについて説明を求めてきた。

 困った俺は、リレイに目配せするとうなずき、リレイが話してくれた。


「久しぶり?とでも言っておこうかリメリア・セレナ?敵として戦場で戦うことがなかったのが残念だったな」


「吠えるな負け犬、リレイお前はもう“お情け”をもらっている身だ、せいぜい“こいつ”の下で頑張ることだな!」


(話すも何も悪化してません?)


 二人の間に稲妻でも走っているのではと感じさせるような目線のぶつかり合いが始まってしまった。


「「「リメリア(閣下)!こいつとは何(ですか)だ!こいつとは!」」」


 そんな俺に対する救世主?が異口同音にベル、エレシア、アナスタシアがリメリアを怒鳴りはじめた。


「そうだぞ!セレナ!このお方は国王となる身、そんなお方に“こいつ”とはなんたる不敬か!恥を知れ!」


「……」


 急な口撃になんの反論も出来なくなった、しかも皆正論だ、そのせいでセレナは下を向いたまま動かなくなってしまった。


「だって、ワタが相手にしてくれないんだもん!!」


(えーーーー!嘘でしょ?!セレナってもしかして、ツンデレ??しかもまた呼び捨て……)


 セレナの問題発言?により、その周りにいた全員は目が点になり口も開いたままだ。


「え~と、とりあえずその話は置いといて、今回ここにみんなに集まってもらったのは他でもない、今後使う兵器の召喚と訓練でだ」


「(ほら、また放置)」


 ぼそっと何かが聞こえたような気がしたが、そのまま流した。


 今回の召喚で選んだのは10式戦車とレオパルト2A6・M1A2エイブラムスの3種類だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る