40.行軍開始!
「メリア……そんなに落ち込むなって今すぐ救ってこられるだろ?」
「今、私はものすごく怖いの……また、戦場で家族を失うかもしれないから……もしかしたらあなたまで失うかもしれないから」
メリアは過去にあった帝国との戦争で多くの家臣、友人、家族、部下を亡くし、今回も今唯一残っている親族(エレシア)をも失うかもしれないという恐怖、ハミルトン城をとられ首都に迫ってくるかもしれないという焦燥感からパニックに陥っている。
「大丈夫、そんなことはさせない、俺に任せろ!まだまだ俺には秘策があるから」
俺はこの救出作戦で召喚物の“試運転”みたいなものをしてみようと思った、例えば今まで銃器だけだったが、車両や装甲車などを出してこの世界でどの程度役に立つか、自分が操縦、操作できないものはどんな感じに運用できるのかを知りたかったからだ。
「絶対に私の元から離れないで!もう家族は失いたくないの」
「わかった、戻ってくるよ」
その後、俺はメリアを抱き寄せ、何かに吸い込まれるように俺はメリアに軽くキスをしていた、最初は驚かれたが、そのまま身をゆだねてくれた。
二人はそのまま静かに出立の時を待つのであった。
アルダートからは予定通り夜に行軍を開始した、兵の顔は緊張からか固まってしまっているものが多い、この国の存亡がかかっているかもしれない責任に押しつぶされそうになりながらも“召喚された者”が同行しているという一筋の希望の光に身をゆだね一歩一歩前進していく。
「このまま、俺たちはこの国に殉じていくのか?」
「やめろよ!縁起でもない、第一今回はあのリメリア閣下の直率だぞ、そんなに勝てない戦じゃないだろう?」
「そうだといいが」
三日がたち、王都とハミルトンを結ぶ街道の中間にたどり着いた。
野営するための場所を探すため小休止させていた時。
敵の斥候部隊接近の報が届き、部隊全体に緊張が走った。
「報告!」
「何だ!」
「申し上げます、先ほど我が方の斥候部隊が、ここから約2キロ先に敵の斥候部隊と思しき集団を発見!こちらの斥候部隊に気づきそのままこちらに接近中!なお敵斥候部隊は騎兵約200程度とみられます」
「威力偵察か、面白い直ちに部隊を編成し“お迎え”してやれ!」
「はっ!直ちに出撃します!」
セレナは伝令にそう言って伝えると、自らも装備を整え接敵に備えた。
つられて、俺はもってきていたSIG716に弾を込めた。
俺は、馬に乗った完全武装のセレナに近づき戦闘に参加したいことを伝える。
「セレナ!俺にも行かせてくれないか?」
「ワタ、何を言っている!お前は下がっていろ、ここはお前の出る幕ではない!それにお前に下の名前を呼ばせる許可を与えたわけでは無いぞ!」
「ここは俺にやらせてくれ、ちょっとした腕慣らしをしたいんだ……それに名前のことぐらい今はいいだろう?」
「まぁいい、何を企んでいるか知らんが、お前の命を守れと、陛下からの厳命があるからな!そう簡単にいかせるわけにはいかん!」
「で、でしたら、わたくしがお供しましょう、そうすればいくらか安全では?」
するとベルはSIG716を取り出し、慣れた手つきでマガジンを交換し、槓桿を引き薬室内に初弾を装填した。
「これで、ワタ様をご守護させて頂きます、たとえ命に代えてでも」
それにつられたかのように、一緒に行軍に参加していたシルヴィア、キューレも同じくSIG716を取り出し、エレザ、ミレイユは無言で前に渡していたHK416を構え、全員が弾を装填する。
「私も、御身のご守護に同行させていただきます、この命、ワタ様に捧げましょう」
「みんなありがとう」
「フンッ、そんなので何ができる?確かに“銃”は私も撃たせてもらった、その有効性についてもよくわかっている、しかし、いくら何でも無策すぎやしないか?」
「大丈夫だ!こんなこともあろうかと、まだ秘策を用意しているんだ」
「閣下、あのエルベを窮地から救ったワタ様なら何とかしてくれると思いますが」
横からセレナの部下であるミントとサクラがやってきた、ミントはエルベでの出来事を知っていたらしく、助け舟を出してくれた。
「わかった、わかったよ!そんなに行きたきゃ行ってこい!ただそんなんでは足りんだろう?サクラ、ミントお前たち二人もついて行け!」
「「ハッ」」
セレナはまだ不満が残っているようだが、渋々了承してくれた。
「こんなわがままな俺のためにありがとう」
「そ、そんなことより、さっさと行かんか!もうお前らのことなんかは知らん!一応この後向かってはみてやるがな、そのころにはもうくたばっているだろう?……でもそんなことしたら許さないんだから」
最後に何か聞こえたような気がするが小さくて聞きとれなかった。
そうして俺ら計8人は斥候部隊撃破に向け進軍を開始した――――
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