最強に恋して その4
決戦の日。ほとんどの部活動が休みの今日、河川敷には多くの人間が集まっていた。由乃の部活休みを狙っての決闘だったので、当然と言えば当然なのだが……それにしても人が多い。
もし、大人に見られれば決闘罪で二人もろとも連れていかれてしまうが……どうしよう。
「それにしても由乃遅いな……」
あと数分で指定した時刻だ。由乃のことだから五分前には来て、僕を待ち構えているものだと思っていたが。
「で、なんでお前は
隣のつかちゃんが呆れたように口にした。
「いや、時刻と同時に颯爽と登場しようと思ったのだが……由乃が来ていないのでどうしたものかと困っているところだ」
人混みに紛れながら、なんとか由乃を待っているが……はっ! まさか由乃は彼の宮本武蔵がしたと言われる遅刻戦法を使う気なのか!? だとすれば、僕に勝ち目は……。
その時、誰かに制服の襟を思い切り引っ張られる。
「ウッ!」
少し引きずられて、人の少ない場所に乱暴に放り投げられる。
咳き込む僕が少しの憤りを覚えながら影の方を見上げると、そこには今日まで特訓に付き合ってくれた旭と真人がいた。二人とも表情に余裕がない。
「な、何をするんだ二人とも。こんなことで決闘前に消耗するわけには……」
「いいか、純。今から言うことをよく聞くんだ」
立ち上がろうとした僕の胸ぐらを旭が乱暴に掴んだ。
「浅沼さんが――誘拐された」
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