222章

空へとかんでいるストリング城。


その下には、メディスンたちが声をかけた反帝国組織バイオ·ナンバー軍と、彼らの呼びかけにおうじたストリング帝国の軍がぐんまっていた。


その連合軍れんごうぐんは、先ほどの城をおそったドレッド·モーリスの軍よりもかずでははるかにおよばない。


だが、それでも連合軍は、ストリング城をとそうと攻撃こうげき開始かいししていた。


ストリング帝国の戦闘車両せんとうしゃりょう――プレイテックから発射はっしゃされる砲台型ほうだいがたインストガンの電磁波でんじは


さらには航空機オスプレイ――トレモロ·ビグスビーも続いて電磁波を放出ほうしゅつ


ストリング軍に続き、反帝国組織バイオ·ナンバー編成へんせいを組んだ歩兵ほへいたちがロケットランチャーをかたかつぎ、一斉いっせいち始めていた。


クロエはその様子ようすが見えているのだろう、玉座ぎょくざすわったまま、クスクスとかたらしている。


アンはそんな彼女を見て苛立いらだった。


「クロエ、何がおかしいッ!?」


「あら、ごめんなさい。でも、あまりにも数が少ないからつい笑っちゃったのよ」


それから、クロエはえていたのだろう、次第しだいに大きく笑い始めた。


そしてしばらく笑うと、彼女の全身ぜんしんつながっていた大蛇だいじゃのようにふと無数むすう配線はいせんはげしく躍動やくどうする。


「なんだ? あのひかりは?」


ストリング城の下で攻撃の指揮しきっていたメディスンがそう言った瞬間しゅんかん――。


空から白くおだやかな光が連合軍へとそそいだ。


その後――。


光につつまれた連合軍は、数人の生存者せいぞんしゃのぞいてほぼ全滅ぜんめつした。


それは、あまりにも一瞬いっしゅん出来事できごとだった。


反帝国組織バイオ·ナンバーとストリング帝国による連合軍は壊滅かいめつ


メディスンやブラッド、エヌエーらも生きているかどうかわからない。


「もう人間には希望きぼうなどない。あなたのお友達もみんな死ぬ」


クロエは本の朗読ろうどくをするかのように、淡々たんたんとアンへかたけた。


アンの機械きかい右腕みぎうでが、しずかかにバチバチとり始めている。


「ああ~いいわぁ。あなたの強いいかりを感じる。それはあい……愛なのね」


クロエは恍惚こうこつ表情ひょうじょうを浮かべると、手を前に出し、そのつめばした。


そして、その爪でグレイが持っていたピックアップブレードをつかむと、自分の手元てもとへとはこぶ。


「さあ、その愛を私にぶつけなさい。感情かんじょう解放かいほうするのよ」


クロエはそう言うと、持っていたピックアップブレードをアンへと放り投げた。


アンはそれを生身なまみのほう――左腕で掴む。


「あなたのいもうと――ローズのようにマシーナリーウイルスを暴走ぼうそうさせればいいわ」


アンの全身――。


その所々ところどころが機械化していく。


機械の右腕からは稲妻いなづまほとばっている。


「その後で、私の肉体ボディとして共に生き続けましょう」


クロエの言葉とほぼ同時どうじに――。


ピックアップブレードから白い光のやいばを出したアンが、彼女へと斬りかかった。


だが、グレイの手ににぎられたアンと同じピックアップブレードが、彼女のクロエへ向けたブレードをはじき返す。


「っく!? グレイィィィッ!!!」


アンのくるしそうな咆哮ほうこう


それを聞いてもグレイの表情は何1つ変わらない。


何度もクロエへと斬りかかり、そのたびにグレイにブレードを弾かれるアン。


ニコは2人の戦う姿すがたを見たくなかったのだろう、その場で両膝りょうひざをついて鳴いていた。


「いいわよアン!! あなたの力が上がっていくのを感じる!!!」


鳴き続けるニコとは反対にクロエは、うれしそうにその身をじらせ、もだえていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る