216章

そう言ったクロエは両目りょうめつぶった。


それを見たノピアとクリアは、こののがすまいと同時どうじに飛びかる。


だが、みどりと黒のほのおによって、2人の行く手をはばんだ。


ノピアはピックアップブレード――。


クリアは小雪リトル·スノー小鉄リトル·スティール――2本のかたなでなんとか炎をふせぐ。


「おい、なんだいきなりッ!?」


「っく!? どうしてあなたがッ!?」


ノピアとクリアはおどろきをかくせなかった。


それは味方みかただと思っていたラスグリーンが、クロエをかばうように2人へ攻撃こうげき仕掛しかけてきたからだ。


そんな2人を見てクロエはうれしそうに微笑ほほえむ。


「それはそうでしょう? だってラスグリーンこの子もマナと同じイグニスの子なんだから」


そう――。


ラスグリーンはいもうとであるマナと同じくクロエが作り出した意思いしを持つ合成種キメラの子。


前にマナ、キャス、シックス、クロムが、彼女に手を出せなかったときと同じように――。


いや、それ以上にひど状態じょうたい――クロエのあやつ人形にんぎょうに、ラスグリーンはなってしまっていた。


クロエはラスグリーンを背中せなかからき、そのほほへキスをする。


そして、ようやくこの身体からだ――。


クロム·グラッドスト―ンの身体に馴染なじんできたのだと言う。


「あなたたちもさっき見ていたでしょう? 人間たちが死んでいくさまを」


クロエはラスグリーンを抱きながら話を続けた。


自分の本来ほんらいの力がもどってきている。


先ほどのストリング軍との戦闘せんとうでそれを自覚じかくしたのだと。


クロエの作り出した合成種キメラの中に、精神攻撃せいしんこうげき能力のうりょくを持っていた者がいた。


それは、ストリング帝国のローランド研究所けんきゅうじょにいた青年――ロンヘアの力だった。


クロエは本来の力が戻ってきたことで、彼の以上の力をみせ、ラスグリーンを操作そうさしてみせたのだった。


だれ相手あいてだろうが関係かんけいあるかッ!!!」


だが、たじろいていたアンたちとはちがい、ロミーが咆哮ほうこう


その顔はもう、誰が見てもいかりでくされているのがわかるものだった。


ロミーの機械化きかいかしている部分ぶぶんが、全身へと侵食しんしょくし、まるで斑模様まだらもようようになっていた。


彼女はわれわすれているのか、自分に戦い方を教えてくれた――ともいうべきラスグリーンさえ殺そうとしている。


そんなロミーに向かって、クロエはクスリと笑みを見せた。


そして――。


「もう~そんな顔しないでよロミー。ボクをそんなにこまらせたいの?」


その一言ひとことだった。


クロエの言葉によってロミーは突然デジタルなさけび声をあげ、完全かんぜんに機械化してしまう。


何故ロミーが機械化してしまったのか?


それは、クロエがロミーの半身はんしんであったクロムの声とその姿で、彼の言いまわしを再現さいげんしたからだった。


「っく!? マシーナリーウイルスは感情かんじょうたかぶりに反応はんのうする。クロム·グラッドスト―ンの声がローズ·テネシーグレッチのスイッチになったのか」


ロミーの姿を見てノピアがそうつぶやいた。


彼女は今度こそ完全に自我じがうしない、近くにいたアン、ノピア、クリアをおそい始めた。


続けてラスグリーンやクロエに向かって電撃でんげきはなつなど、その攻撃目標こうげきもくひょう無差別むさべつだ。


それからラスグリーンも動き始める。


その手をかざし、緑と黒のじったスパイラルじょうの炎をそこらじゅうに放ち始めた。


半壊はんかいした大広間おおひろまで、電撃の雷鳴らいめいと炎のたける音がひびく。


クリアは苦悶くもん表情ひょうじょうかべ、どうしていいかわからずに、ただ放たれる攻撃を防ぐだけだった。


「それじゃ私たちは場所を変えましょうか」


クロエがそう言うと、突如とつじょ灰色はいいろ空間くうかんあらわれた。


「アン、あぶないッ!?」


「早くけろッ!!!」


ノピアとクリアの叫びもむなしく、その灰色の空間は、ニコをかかえて逃げ回っていたアンの体を飲みんでしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る