215章

「クロエェェェッ!!!」


ロミーはもだえるクロエに向かって電撃でんげきはなった。


だが、クロエの周囲しゅういからひかりかべあらわれ、あえなくふさがれてしまう。


「ああ……すごい、凄いわ……今のあなたたち……。愛と憎悪ぞうおざりあっている」


そして、クロエはさらに歓喜かんきの声をあげた。


それから彼女は、きずついてボロボロなったグラビティシャドーの体を自分のほうへと引きせる。


ロミーによってその右手を切り落とされ、左腕ひだりうでがされたグラビティシャド―。


そんな彼にクロエは、が子を愛する母親のようないつくしみでもってきかかえた。


「大丈夫……大丈夫だからね。すぐになおしてあげる」


クロエがそうつぶやくと、グラビティシャドーの体が光につつままれ、彼の両腕が再生さいせい


そして、グラビティシャドーはクロエのむねの中で、おだやかな表情ひょうじょうのままスヤスヤとねむってしまった。


その姿はまるで、眠る前に絵本を読んでもらった子供のようだった。


「こいつは……不味まずいな」


「まさか、腕まで復元ふくげんしてみせるなんてね」


「もはや神ですね……」


ノピア、ラスグリーン、クリアがそれぞれ身構みがまえていると、ふたたはげしい雷鳴らいめいり、電撃がクロエへとおそいかかった。


そして、その電撃と共にクロエへと飛び込んでいく2つの人影ひとかげ――。


それはアンとロミーだった。


アンはピックアップブレードの光のやいばをクロエへの脇腹わきばらへとす。


それと同時にロミーも、いつの間にかひろっていたカトラスで、クロエの頭部とうぶへ刃をり落とした。


だが、それでもクロエは――。


「なんだかんだ言っても、やはり姉妹しまいね」


突き刺された脇腹と切りかれた頭部からあわあふれ出て、瞬時しゅんじ傷口きずぐちが再生した。


そして、右手からほのおと飛ばしながら、さらに左手で水の刃をはなち、アンとロミーを退しりぞかせた。


2人にダメージはなかったが、クロエの圧倒的あっとうてきな力をあらためて体感たいかんし、恐怖きょうふで表情をゆがめる。


「アン、ロミー、おそれないでくださいッ!!!」


クリアの咆哮ほうこうにもた大声が、大広間おおひろまくした。


そのクリアの声と共にラスグリーン、ノピアがクロエへと近づいて行く。


「この世界に貴様きさまのような舞台監督ぶたいかんとくはいらん。さっさと始末しまつしてストリング皇帝閣下かっかねがった未来みらい実現じつげんさせる」


皇帝――レコーディ―·ストリングの形見かたみであるピックアップブレードをにぎり、なマグマのような光の刃をクロエへ向けるノピア。


「まあ~俺は世界とかどうでもいいんだけね~。……だけど、マナがあじわったくるしみをお前にもあじあわせる」


その穏やかな表情と声とは裏腹うらはらに、ラスグリーンの全身からは黒とみどりの炎が轟々ごうごうと溢れ出していた。


「私はこの世界を……いえ、子供たちの未来をために……いざ、まいりますッ!!!」


2本のかたな――小雪リトル·スノー小鉄リトル·スティール妖気ようきまとわせ、臨戦態勢りんせいたいせいへと入るクリア。


クロエはそんな3人を見ると、グラビティシャドーの体に手をかざして光を放つ。


グラビティシャドーの体が光をびると、まるでまゆつつまれているようになった。


「しばらく眠っていなさい。あとはママがやるからね」


そして、クロエは光の繭に包まれたグラビティシャドーを、どこかへ消してしまった。


そんなクロエを警戒けいかいしながら、ジリジリと近づいていくノピア、ラスグリーン、クリア。


3人が攻撃こうげき仕掛しかけようとしたそのとき――。


「さてと、じゃあ始めましょうか」

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