213章

吹き飛ばされたグラビティシャドーの目の前にロミー。


そして、左右さゆうからはラスグリーンとクリアが向かって来ていた。


かこまれたグラビティシャドーは表情ひょうじょうゆがめる。


彼は手をかざし、向かって来ているロミーへ重力じゅうりょくをかけ、身動みうごきが取れないようにしたが――。


「おいおい、こっちも気にしないとあぶないよ」


「私たちがいるのことをおわすれなく」


ラスグリーンとクリアがそう言うと、緑炎りょくえん斬撃ざんげきふたたはなたれた。


グラビティシャドーはロミーにかけた重力をいて、反重力でかるくなった状態じょうたいちゅうへと飛び、その攻撃こうげきをなんとかかわした。


だが、ラスグリーンとクリアの猛攻もうこうは止まらない。


グラビティシャドーは、そのあらしのようなほのおと斬撃をけることしかできず、防戦一方ぼうせんいっぽうとなった。


そして、すきを見せればロミーがふところへ飛びんでくる。


ストリング城の石壁いしかべ破壊はかいしながら3人の攻撃は続く。


「おいグレイッ!! どっかで見てるんだろッ!!! 早く手をせよッ!!!」


「あいつは女のしりを追いかけるのにいそしいんだろ」


さけぶグラビティシャドーへ、笑みをかベたロミーの片目かためが、突如とつじょはげしく点滅てんめつし始めた。


すると、彼女の顔が次第しだい機械化きかいか


片目から、まるでロミーのことを侵食しんしょくするかのように、顔のいたるところに金属きんぞくおおい始めた。


「あれは……アンと同じウイルスの影響えいきょうですか……?」


クリアが攻撃の手を休めずに、ロミーの姿を見て言った。


ノピアが前に説明せつめいしていたことがあった。


「マシーナリー·ウイルスは感情かんじょうの高ぶりに反応はんのうする。特にいたみやにくしみなどがスイッチになるんだ」


以前にアンは、マシーナリーウイルスの力で全身が機械になりかけた。


今のロミーにもそれに近い現象げんしょうきている。


だが彼女は――。


「いい気分だ……。まるであたしの感情と呼応こおうして、それがそのまま力となっている」


アンとはちがい、すこぶる調子ちょうしが良さそうだった。


その機械化した手足からは稲妻いなづまほとばしっている。


「ロミーも彼女……アンと同じで電撃でんげきはなてるのか?」


ラスグリーンもクリアと同じく、攻撃の手を休めずにいたが、おどろきはかくせないでいた。


ロミーは人が変わってしまったかと思うほど口角こうかくを上げ、グラビティシャドーへ向けて電撃を放出ほうしゅう


いくら無重力の中を自由に動いているようなものとはいえ、炎、斬撃、電撃3つの同時遠距離どうじえんきょり攻撃は、さすがにけきれない。


グラビティシャドーはロミーの電撃をもろに受けてしまい、ビリビリとしびれながら石壁にたたきつけられてしまった。


肉のげるにおいが大広間おおひろまただよい、ロミーはさらに笑った。


無様ぶざまだな。お前はママがいなけりゃ何もできないのか?」


「っく!? ただの入れ物の分際ぶんざいでッ!!!」


グラビティシャドーは不用意ふよういに近づいてきたロミーへ、再び重力をかけようと手を翳した。


だが、ロミーはこしびていたカトラス(大航海時代だいこうかいじだい中南米ちゅうなんべいで使われていた農耕用のうこうようなた改良かいりょうした刀剣類とうけんるい一種いっしゅ)を投げ、その手を切り落とす。


「うぎゃぁぁぁ!!!」


手首てくびうしなったグラビティシャドーは苦痛くつうの叫び声をあげた。


それを見たロミーは、おそろしい形相ぎょうそう――いや、強張こわばった笑顔で彼へと近づいて行く。


「こんなもんじゃない……。お前の両手両足りょうてりょうあしを切り落とし、芋虫いもむしみたいにしてクロエへ見せつけてやる。そうすればクロムとルーも少しは笑ってくれるだろ」


そして、ロミーはグラビティシャドーののこった手をつかみ、電撃で黒焦げにした。


そのねつで彼に体から流れている血液けつえき蒸発じょうはつしていく。


痛みで叫び続けるグラビティシャドー。


ロミーは次に彼の足へねらいをつけると――。


「やめろローズッ!! それ以上やって一体何の意味があるんだッ!!!」


その声を聞いたロミーの笑みは止まり、舌打したうちをした。


そして、彼女がり向くと、そこにはアン·テネシーグレッチとノピア·ラシックが立っていた。

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