212章

グラビティシャドーは、ストリング軍を全滅ぜんめつさせたクロエの姿をながめていると、ふと背後はいごから気配けはいを感じた。


現在げんざいこの空へとかんでいるストリング城にいるのは彼とシープ·グレイだけだ。


もし気配を感じたのなら、それはグレイであるはずだったが――。


同類どうるいが2つ。しかもおかしな反応はんのうがもう1つ……。出て来なよ。もう君らがいるのはわかっているんだ」


グラビティシャドーがそう言うと、彼にいた大広間おおひろまとびらが突然き飛ばされた。


そこには、みどりのジャケットを着た男――ラスグリーン·ダルオレンジと、ローズ·テネシーグレッチことロミー。


そして、着物きもの姿の女性クリア·ベルサウンドの3人が立っている。


グラビティシャドーは3人の姿を確認かくにんすると、うすら笑いを浮かべた。


「ロミーだっけ? 性懲しょうこにもなくよく来たね」


ロミーは何も返事をせずに、ただグラビティシャドーをにらみ続けている。


グラビティシャドーは、その態度たいどを見て苛立いらだちながらも言葉を続ける。


「で、そっちの緑の男はイグニスのもう1人の子供か? なるほどなるほど。すけを連れてきたわけだ」


次にラスグリーンを見たグラビティシャドー。


その視線しせんにラスグリーンは、ニッコリと笑みを返した。


「それと、もう1人は……ただの人間……? でも……そうか……精霊せいれいってやつだね。おかしな反応はその2本の剣からか」


クリアが持つ剣――日本刀にほんとうは、小雪リトル·スノー小鉄リトル·スティールという2匹の犬が変化したものだ。


白いかたな小雪リトル·スノー、黒い刀が小鉄リトル·スティール――。


この2匹2本は、彼女の亡き母がまつっていたテンプルそなえられ、封印ふういんされていたものだ。


地域ちいきに住む神々かみがみの力――クリアはその加護かごにより、マシーナリーウイルス適合者てきごうしゃや、合成種ごうせいしゅキメラみの戦闘能力せんとうのうりょくを持っている。


グラビティシャドーは、3人を歓迎かんげいでもするかのように両手りょうてを広げた。


すると、次第しだいに彼の体がちゅうへといていく。


グラビティシャドーは重力じゅうりょくあやつる能力を持っていた。


今の彼は自分にかかる重力を減らして浮かんでいる。


いわゆる反重力というやつだ。


「3対1なら勝てるとでも思ったのかい?」


宙に浮きながら面倒めんどうくさそうに言うグラビティシャドー。


そんな彼にラスグリーンはほのおはなち、クリアは2本の刀をって斬撃ざんげきを飛ばした。


緑と黒のスパイラルじょうの炎と、波動オーラやいばがグラビティシャドーにおそかる。


だが――。


「へえ~スゴいわざだな。でも当たらないと意味ないよ」


グラビティシャドーは空中を動いて、2人の攻撃をかわした。


重力を操る彼は、ヒョイッとジャンプするだけで何10メートルも飛べる軽快けいかいな動きが可能かのうだ。


グラビティシャドーをとらえることは、並大抵たいていではないと思われたが――。


「……おそい」


「なっ!? バカな!?」


いつの間にか目の前に現れたロミー。


そのりを顔面がんめんらったグラビティシャドーは、みずからの力――無重力の状態じょうたい天井てんじょうへと吹き飛ばされてしまった。


「まずは優先ゆうせんさい優先でお前を殺す。そして、次はクロエだ」


天井にさったグラビティシャドーを見上げながら、ロミーがしずかに声をあげた。

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