208章

草木のないかわいた大地の上を、何10台もの戦闘車両せんとうしゃりょうが、ストリング兵の歩く速度に合わせて走っている。


その戦闘車両の名はプレイテック。


プレイテックは、その昔に南アフリカのパラマウントグループが作ったといわれる車――マローダーを思わせる外観がいかくだ。


ボディの色はサンドイエローとブッシュグリーンの2カラー(砂漠地域さばくちいきなら前者、森林しんりん地域なら後者を使う)。


全長6.4m 高さ2.7m 総重量10t


乗員は2人だが、8人まで同乗可能どうじょうかのうなので、最大で10人まで乗れる。


車両重量11,000~13,000kg ホイルスペース約3.5m 最大積載重量さいだいせきさいじゅうりょう5,000kg


エンジンには6気筒ターボディ―ゼルを搭載とうさいしていて、最高速度は100k/h。


防弾性能、対地雷防御性能にもすぐれ、ホイールは14kgのTNT火薬の爆発にも耐え、厚さ9mにも及ぶ窓ガラスは、RPG-7(ロケット推進擲弾すいしんてきだん)の攻撃も防ぐことができるため、合成種キメラでも簡単には破壊できない。


武器はインストガンの大型タイプを車両の上部に付けていて、全方位へ電磁波を撃つことができる仕組みになっている。


ある探索たんさくしてた部隊が、偶然ぐうぜんこの戦闘車両を発見し、構造こうぞうを調べ、それから改良かいりょうを加えて量産りょうさんした。


軍の遠征時えんせいじには欠かせない戦闘車両である。


そして、その上空を同じく数10台の航空機――オスプレイが飛んでいた。


ストリング帝国の科学力が誇る兵器の1つ――トレモロ·ビグスビー。


全長約17m 全幅約25m 全高約7m。


垂直離着陸型のそれは、ヘリコプターの垂直離着陸能力を持ちながら長距離飛行移動が可能であり、最大で約20人は乗員可能。


ノピアが、アンたちのいる反帝国組織バイオ·ナンバー野営地やえいちまで乗ってきたものと同じものだ。


その軍隊の前衛ぜんえいには、ジェットパックを背負せおった機械兵きかいへい――オートマタの集団。


特異とくな形状けいじょう鎧甲冑よろいかっちゅうのような姿をしている人の形したもと人間だ。


マシーナリーウイルスの影響えいきょうによって変化したストリング兵のれのてである。


ふる突撃銃とうげきじゅうを思わせる形をした電磁波放出装置でんじはほうしゅつそうち――インストガンをかまえ、そのメタリックな白い装甲そうこうが、ひかりらされてかがやいていた。


「全軍、もうすぐ目標もくひょう到着とうちゃくする。たとえそのいのちきようと我々われわれの王――ストリング皇帝閣下かっかかたきを取るのだ!」


白髪頭しらがあたま指揮官しきかん――ドレッド·モーリスが、ストリング帝国兵すべてにげきを飛ばした。


モーリスは、ストリング皇帝の後の指揮をまかされていた、古参こさん幹部かんぶの1人である。


彼は、ストリング皇帝の死を知ると、目の前にいるバイオ·ナンバー軍と和睦交渉わぼくこうしょうをした。


さいわいなことに、バイオ·ナンバーの指揮していた者はそのもうし出を受け入れた。


そして、誰よりも早くかたきたんと、クロエのいるストリング城へと向かったのである。


今のモーリスには、クロエをきにすることしか頭になかった。


それもそのはずだ。


モーリスは、ストリング帝国の黎明期れいめいきから皇帝につかえている軍人。


彼は、まだ帝国がその領土りょうどを広げる前から、この荒廃こうはいした世界をすくえるのはレコーディー·ストリングだけだと信じてやまなかった。


皇帝の持つ豊富ほうふ知識ちしき合理的ごうりてき思考しこう、そして、万のてきをたった1人で討ちほろぼすことのできる圧倒的あっとうてきな力。


モーリスにとって皇帝は、けしてけぬ夜を終わらせる太陽たいようと同じだった。


その希望きぼうの光が、クロエによってうばわれた。


それは、彼が指揮するストリング兵たちも同じ気持ちだ。


誰もがクロエを殺さんと、インストガンに力を込めていた。


ストリング城は、もう彼らの目の前だ。


「一番乗りは王き軍隊か」


その行軍こうぐんを、まるでありれでも見るかのようにながめているクロエ。


そのそば小柄こがらな男――意思いしのある合成種キメラことグラビティシャドーが、面倒めんどうくさそうな表情ひょうじょうをしていた。


「ああ~いっぱい来ちゃったよ。どうするの、ママ?」


「決まってるでしょ。わざわざここまで来てくれたのだから、歓迎かんげいしてあげなきゃね」

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