178章

グラビティシャド―の重力じゅうりょくあやつる能力から解放かいほうされたアンは、クロエに電撃でんげきびせると――。


「どうやらこっちも動けるようになったみたいだな」


――シックス。


「ルーには料理を食べられたりとか色々いろいろあったけど……あたし、絶対ぜったいにあなたをゆるさないッ!!!」


――マナ。


「これで4対1だ。すぐにルーの後を追わせてやるぞ、クロエッ!!!」


――キャス。


頭をかかえてくるしんでいた3人が立ち上がって、クロエのほうへと向かって来ていた。


「まあ、こうなるってわかってたけど……やっぱりムカつくな」


それを見たグラビティシャド―が口元くちもとゆがませていると、ルドベキアの斧槍ふそうハルバードが彼の顔をかすめる。


ほほからは血が流れ、ルドベキアが笑みをかべた。


「やっと当たったぜ」


「……かすっただけでそんなよろこぶなよ」


グラビティシャド―はつまらなそうに顔をしてから、ルドベキアをにらみつけた。


そのとなりでは――。


アン、マナ、キャス、シックスの4人が、はげしい稲妻いなづまつつまれたクロエをかこんでいた。


それから笑い声が聞こえ始めると、アンはふたた機械きかいうでかざして電撃をはなつ。


「よし、俺たちも続くぞッ!!!」


シックスはそうさけぶと、両手のてのひらを合わせてから、それを大きく振りぬき、その動作を繰り返した。


すると、無数むすうの風がやいばとなってクロエへと向かって行く、


マナも体からあふれるほのお火球かきゅうへと変えて、次々に直撃ちょくげきさせ、キャスも腕からき出した水を、水圧すいあつカッターのようにして飛ばした。


4人によるすさまじい攻撃により、大広間内のかべ破壊はかいされ、その衝撃しょうげき室内しつない爆風ばくふうに包まれる。


「これ無事でいるはずはねえ。次はてめえだ」


ルドベキアがグラビティシャド―へそう言うと、彼はあきれて顔をしてフッとはなで笑った。


ルドベキアが口にした言葉。


アンたちも同じことを思っていた。


全員で全力ぜんりょくの攻撃をらわせたのだ。


当然かなりのダメージをあたえられただろうと。


だが――。


「フフフ、こんなものかしら?」


立ち上げる土煙つちけむり


その中からデジタル処理しょりされたクロエの声が聞こえてくる。


そして、やがて土煙がれると、そこにはクロムの体を抱えたエネルギー体――クロエの姿があった。


体中の血管けっかん破裂はれつしている状態じょうたい――血塗ちまみれで意識いしきまったくないクロム。


クロエは、そんな彼の顔にキスをすると、いとおしそうにきしめる。


「や、やめろッ!!! 何のつもりだッ!!!」


グラビティシャド―によって、ゆかに押さ込まれているロミーがさけんだ。


「今はとりあえず体がしいからね」


クロエがそう言うと、クロムの体に彼女の光かがやく体がい込まれていく。


そして、すべての光がクロムの体に入ると――。


「ふぅ~これで消滅しょうめつせずにすむわ。それにしてこの服、そで邪魔じゃまね。長すぎる」


気をうしっていたはずのクロムが1人立ち上がって、着ている大きめのチュニックの両袖りょうそでかたから引きいた。


それを見たその場にいた者全員が気が付いた。


その声はクロムのものではない。


「ま、まさかクロムの体を……」


アンがうめくようにつぶやいた。


その呟きを聞いて、アンたちの目の前にいるクロムが、とても彼とは思えない不気味ぶきみな笑みを浮かべる。


あのいつもおだやかな笑顔を見せていたクロムはもうそこにはいなかった。


「ええ、だってテラ……じゃなかった、クロムは私の子供だもの。なんならそこの3人の体にも入って見せようかしら?」


そう言ったクロム――いやクロエは、マナ、キャス、シックス3人を順番に人差ひとさつきき立てた。

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