109章

その頃――。


労働者と帝国兵が正気に戻ったことで、アンたちの元へ向かっていたルーザーたちが、ノピアとイバニーズと出会っていた。


2人と向かい合うと、ロミーは手に持っていたサブマシンガンVz61――通称スコーピオンを向ける。


それをさえぎるルーザー。


ロミーは、不愉快ふゆかいそうな顔をしてスコーピオンを下ろした。


それからルーザーが2人へ声をかける。


「どうも君らは何か知っていそうだな」


「なんだ? 子供と老人がこんなところで何をしてる?」


ノピアが面倒臭そうに返すと、ロミーの義眼が赤く光り、一歩前へ出る。


そんな彼女を慌てて止めるクロム。


ロミーにつられてか、ルーも飛び出して行きそうだったのでニコが必死になって押さえていた。


「おい、ノピア。このジイさんは……!?」


どうでも良さそうなノピアのとなりで、イバニーズが驚愕きょうがくの表情でルーザ―の姿を見ている。


それから彼は、腕につけていた通信デバイスを開いた。


通信デバイスから小さな3D映像が浮き上がってくる。


「間違いねえよ。このジイさん、ルーザーだ」


「ルーザー? 誰だそれは?」


確認を終えたイバニーズが言ったが、アンと会ったせいなのか、戦闘中で度忘れしたのか、ノピアは名を聞いてもまだ誰かよくわかっていない。


それを見たイバニーズが、大きくため息をついた。


それからノピアへ説明を始めた。


ストリング帝国の皇帝――レコーディ―·ストリングが捜している人物。


コンピュータークロエの暴走を止めた英雄。


それが、目の前にいるこの老人なのだと言った。


「そうか。この老人が英雄……思っていたよりも小柄だな。それにまるで女のように細い」


説明を聞いても大して興味がなさそうなノピア。


そして、今は英雄よりもフルムーンを捜す方が先だと言って、歩き出して行ってしまう。


イバニーズが慌ててそれを止めていると――。


「まあ、待ってくれ。君らに訊きたいことがあるんだ」


それからルーザーは、アンとクリアのことを訊ねようとすると――。


怪物の大軍が、咆哮ほうこうをあげながらすさまじい勢いで現れた。


怪物は、いずれも人間と同じような姿をしていた。


だが、その手足は異常に大きかったり、長かったり。


そして、その瞳からは知性の欠片かけらも感じさせない。


その怪物を見ると、ロミーの残った片目の瞳孔どうこうが開く。


合成種キメラだ……」


合成種キメラとは、コンピューター·クロエの暴走のより生み出された異形いぎょうの化け物。


文明社会が世界が崩壊ほうかいした原因。


その大量にあふれ出てきたを合成種キメラ見たロミーは、不気味に笑い、再びスコーピオンをかまえた。


ノピアとイバニーズが、振り返ってピックアップ·ブレードを出し、臨戦りんせん態勢へと入る。


「おいおい、せっかく街の連中が正気に戻ったってのに、今度は合成種キメラかよ!?」


襲い掛かってくる合成種キメラを迎え撃とうした2人。


そのとき――。


ノピアとイバニーズに襲い掛かった合成種キメラたちは一瞬で吹き飛ばされた。


「手を貸そう。その代わりに君らの話を聞かせてくれ」


かざした手からかがやく光。


ノピアとイバニーズは、それを見て両目を丸くしている。


「すげぇなッ!! やっぱこのジイさんは本物だッ!!」


「うるさいぞ、イバ。戦場でさわぐな。それよりも早く兵たちを指揮して合成種キメラどもを片付ける」


そしてノピアたちは、ルーザーたちと共に労働者と帝国兵に声をかけて回り、大軍で現れた合成種キメラたちへと攻撃を開始した。


ノピアは思う。


……クソッ!


どいつもこいつもあり得ない力を持っていやがる。


だが、いつか……いや、近いうちに必ずそれを超える力を手に入れてやるからなッ!!!

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