68章
「さっきから何なんだお前はッ!!!」
アンは、ロミーの肩を掴んで叫んだ。
立っているのも辛そうな彼女は、ウザったそうに顔だけ振り返る。
その表情が、アンをさらに
「ルーを
アンは耐えられなかった。
ロミーのために自分を犠牲にして戦ったルーやクロムのことを、どうでもいいと思わせる態度に怒りを抑えられなかった。
「……お前には関係ない」
ロミーは、冷めた顔で
そして、肩を掴んでいるアンの手を振りほどいて、ドームの外へ出て行ったストーンコールドを追いかけようとする。
「待てッ!! 話はまだ終わってないぞ!!!」
アンが再び大声を出すと、ロミーは振り返って彼女を
ロミーの赤く光る義眼が、アンの顔を照らした。
「お前のくだらない話を聞いている内にクロムが殺される。それと、お前にあたしとルー……クロムの関係をどうこう言われたくない」
アンは、それ以上何も言えなかった。
いや、言い返せなかった。
ロミーの言う通り、こんなところで文句を言う前に、早くクロムを助けに行かないといけないと思うのと――。
ルーやクロムが、自ら望んでロミーを助けているのがわかるからだった。
だが、すぐに表情を
「……わかった。だけど、私はお前を認めない。そんな大事な人を犠牲にしてまで優先することなんかこの世界にはないんだ」
そう言うと、アンは走り出した。
前にいたロミーとルーを追い抜いて、ストーンコールドのほうへと向かって行く。
「クソ……あのキノコ頭……」
ロミーは、そんなアンの背中を
――乱反射する光の粒、粉雪の嵐。
外に飛ばされたクロムは、完全に気を失っていた。
深く積もった雪の上に倒れているクロムを、ストーンコールドがゆっくりと
「お前を喰いたくはねえんだよな」
困った顔をして、両腕を組むストーンコールド。
粉雪の嵐が音を立てる中、ドームのほうからビリビリと音が聞こえ、光がバチバチと輝き、ストーンコールドのところへ向かって来ていた。
「うん? なんだよ、まだやる気か?」
ストーンコールドが振り向いた瞬間――。
アンが腹部目掛けて飛び込んできた。
「クロムから離れろッ!!!」
電撃が
8メートルはあるストーンコールドの巨体が、アンの一撃で吹き飛ばされた。
その間にアンは、気を失っているクロムを
……見たところ大したケガはしていない。
あの生意気なロミーのほうが
アンは、背負ったクロムを見て、ただ気を失っているだけだったことに
「ちょっと待てよッ!! 2度もナメたマネしてこのまま帰る気かッ!!!」
起き上がったストーンコールドが、アンの後方から叫ぶと、その場から
雪の降る空を半人半獣の
そして、クロムを背負っているアンの目の前に着地した。
その重さで、周りに小さな地震が起きる。
「
揺れる地面を両足でしっかりと踏みながら返すアン。
「
その腹部は、アンの喰らわせた電撃によって焼け
……まずい。
クロムを背負っていて、(ムカつくが)これからロミーも拾わないといけないのに逃げきれるのか?
こいつはこれだけの巨体で、あんなアクロバティックな動きをする奴だぞ。
アンは少しずつ
そして考える。
……2人を見捨てれば逃げられる……。
だけど……私にその選択肢はないッ!!!
こちらを見ているストーンコールドを睨み返すアン。
覚悟を決めて戦おうとすると――。
「ドームに向かって走れ!! 無愛想女ッ!!!」
聞き覚えのある声が聞こえたと思ったら、ストーンコールドの右腕が跳ね飛ばされた。
腹の傷も
「お、お前はッ!?」
そのときアンに見えたのは、
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