59章
アンがルドベキアと戦っている最中――。
雪の大陸の上空に、11機の航空機――オスプレイが飛んでいた。
ストリング帝国の科学力が誇る兵器の1つ――トレモロ・ビグスビー。
全長約17m 全幅約25m 全高約7m。
垂直離着陸型のそれは、ヘリコプターの垂直離着陸能力を持ちながら長距離飛行移動が可能であり、最大で約20人は乗員可能。
そのトレモロ・ビグスビーの中の1機内で、揺れる機体など気にせずに、無骨なイスに座り、
「皇帝陛下。間もなくガーベラドームへ到着いたします」
「ご苦労だ、リンベース君」
皇帝陛下と呼ばれた男――レコーディ―・ストリング。
この
ストリング皇帝は、自身の長い髪を結び、それから口髭を
その長い髭と顔に刻まれた
「久しぶりの戦闘だ。正直楽しみにしておるよ」
「恐れ多くも言わせていただきますが、わざわざ皇帝陛下が出陣するほどでもないかと思われます」
ストリング皇帝に頭を下げて進言した女性。
この部隊の副官を任されている
ショートカットで前髪だけが長く、片目が隠れている。
髪型は男性のようだが、目にかかった髪をかき上げると、彼女の東洋人的な薄顔の
ストリング皇帝は、リンベースの言葉を聞いて笑みを浮かべた。
「この辺境まで来たのは、報告であの男がいると聞いたからだよ」
「しかし、自分だけも十分片付けられるかと」
「その意気や良し。期待しているぞ、リンベース君」
それからストリング皇帝は、各機のトレモロ・ビグスビーへ指示を出して、ガーベラドームの前へと向かって行った。
「諸君、これは戦争ではない。
――その頃、アンはガーベラドームの中心部の広場で、吹き飛ばしたルドベキアと
倒されたルドベキアを見たスチームマシーンに乗った男たちが、アンに攻撃を仕掛けようと動き始める。
「てめえら、やめろ!!!」
だが、彼らを制すルドベキア。
そして立ち上がって、長柄武器の
「おい、女。てめえ、ババアのことはクロムから聞いたのか?」
「ババアとはプラムって人のことか? 自分の母親のことをババアなんて言うもんじゃない」
アンは、また腰に帯びたピックアップ・ブレードを握って返した。
再び睨み合うアンとルドベキア。
そして、打ち合う。
やはり腕力ではルドベキアのほうが上だった。
アンが
アンの腕から落ちたブレードを、ルドベキアはハルバードで頭上へ上げて破壊した。
「これで剣は壊した。あとはその機械の右手を斬り落としてやる」
ルドベキアの攻撃は止まらない。
機械の右手で突きの連打を受けながら、電撃での反撃を狙うアン。
そのとき――。
ニコを吊っていたスチームマシーンの腕が、斬り落とされたかと思うと津波のような洪水がマシーンを襲い、はるか後方へと吹き飛んでいった。
「人質とは汚いマネをするな」
ニコが地面に落ちる寸前で受け止めたのはキャスだった。
一斉にキャスを囲もうと動き出すスチームマシーンたちだったが、目の前が一瞬にして真紅に染まる。
それは、まるで生き物のように
命の
広がった
「あたしもいることを忘れないでね」
マナが笑みを浮かべながら、ニコを抱いたキャスとクロムの傍へ歩いてきた。
「アン!!!」
キャスは叫ぶとアンに向かって、自分のピックアップ・ブレードを投げ渡した。
そして両腕を組み、しかめ面をして言う。
「何故すぐに私たちを呼ばないんだ」
「そうだよアン、急にゴロゴロピカッってなったから慌てて飛んできたんだよ」
マナも頬を
それを見ていたクロムは、一体何が起きているのかがわからないと言った顔をして立ち尽くしている。
反対に、助け出されたニコはピョンピョン跳ねて、嬉しそうにはしゃいでいた。
「形勢逆転だな、
アンが、キャスから投げ渡されたピックアップ・ブレードをルドベキアへ向けた。
「いいや、これからだぜ無愛想女ッ!!!」
2人が打ち合おうとした瞬間――。
爆発音と共に、ガーベラドームの壁が崩れていた。
そして、その爆発はさらに続いていく。
「おい無愛想女ッ!! てめえの
「違う、私じゃない。これは一体……?」
アンもルドベキアも手を止めて、穴の開いたガーベラドームの壁を見ているとキャスが
「帝国のトレモロ・ビグスビーだ……。ま、まさか完成していたのか……?」
そして、何機ものトレモロ・ビグスビーがガーベラドーム内へと侵入してきた。
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