闇遊び

 ぶくぶくぶく。黒い重いぶよぶよしたエグさが、浮かんでは大きな気泡をハジケさせる。小さな飛沫が辺り一帯に、陰気をばらまく。心が沈んでいく。背中をゾワゾワっと、細かな泡泡に撫でられて、生暖かい沼に沈んでいく。

 息を吸えば、悪臭に魂を縛られた。息を止めれば、眠気に命を煽られた。

 ああ。抵抗すれば、絡まる。解こうとすれば、まとわりつかれる。

「うふふ。アハハ」

 赤い光の筋が一閃。黒く濁りきった世界を横切って回る。回っていく視界。今足ははえてるんだっけ。

 ピチャピチャ。バシャバシャ。

「うふふ。アハハ」

 ボクの指は5人いるか。休むなサボるな水をかけ。真っ黒な水をかきだせよ。えっちらおっちら。闇をかけ。泥を運べ。

「うふふ。アハハ」

 赤い光がボンヤリと近づいてきて、ボクの耳にキスをする。その瞬間だけ、耳の中のドロドロが溶け出して、じわーっと、流れていく。

「落ちて、転んで、沈んで、堕ちて」

「あーかいひかりが、まうほうへ」

「ヒラヒラヒラと舞う方へ」

「あなたのまぶたが閉じる方へ」

「ボクの喉仏が落ちる方へ」

 ああ。温かい。抱けば、包まれる。背を預ければ、受け入れられる。

「アハハ。うふふ」

「うふふ。アハハ」

 光といっしょに、闇さんこちら。

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