第149話 調査
小ゴーレムに頭を押さえつけれている敵のゴーレムを、シェリーさんは、エルステラと言う剣を使って、事も無げに切った。それも、いつ鞘から抜いて、いつ鞘に修めたのかも分からないくらいの速さで。
アチキは
「えー、あんた凄いね。ナウムの蛮刀じゃ歯が立たなかったよ」
と何気に聞いてみた。
「ほら、甲冑を来ている奴は、関節や首が、弱いじゃないですか。だから此奴もそうかなって、思ったんですよ」
とシェリーさんは答えてくれた。
でもあの剣の速さは尋常じゃない。アチキと一緒に見ていたサリエも驚きの表情だ。
’やっぱり光る人ってシェリーさんの事じゃないのかなぁ’
と思っていると小ゴーレム達が列を為して、先に進んで行く。ピョコピョコと可愛らしい。さっきジェームズさんから命令を受けているところなど、小さな子供が、お父さんとお話をしている様だった。
’サリエの子供が欲しいな’
となぜか心の中に暖かな希望が溢れた。
そんな事を思っていると
「おい、おい、ナウム、見たか? さっきのシェリーさんの剣、すげぇな」
とサリエが耳元で囁いた。
「そうね。サリエも剣の修行が必要じゃない? 」
と何故か反発した事を言ってしまった。
するとサリエは、アチキの顔を見て
「もっと旅をして、精進しなければ」
と真顔で答えた。
アチキは、なんとなく不満になり、つい顔に出してしまった。
「ナウム、何か不満なのか?」
と聞いて来たが、プイと顔を横に向けてやった。
◇ ◇ ◇
――― 無機質なドーム状の天井。床から天井に向けて、壁に沿って何本もある線状の筋から、光が青白く漏れて、その筋は天井の一点で交差している。そこからシャンデリアの様なライトが吊り下げられて辺りを照らしている。床も天井も材質は金属の様だが、何かの塗装がされて、サビなどは全く見えない ―――
僕たちは、入り口から続く緩やかな階段を上がって、このドーム状の部屋についた。ちょっとした広場にも見える。
「ご主人様、このドーム状の部屋は行き止まりに見えます」
とシェリーが辺りを注意深く見回して教えてくれた。
「確かに何もねぇな」
アーノルドは大エルフラーマを肩に担ぎ、キョロキョロしながら相槌をうった。
「
とサリエさんは、天井を見ながら答えた。
それを聞いたアーノルドが、サリエさんを見ながら、
「そんな話、
何となく、アーノルドは勘違いしている様に思うが、僕は横目でアーノルドを見ながら聞くことにした。
「いや、
とサリエが訂正したが、アーノルドは、
「おう、あるぞ、人属の昔話だと、出てくるのは魔王だぜ。魔族は如何なんだ?」
と、悪気がないが、ちょっと失礼な事を聞いていた。
サリエさんは僕の方を見て、ちょっと笑いながら、
「太った、醜い人属の王だ」
とサリエもさらりと答えた。
「デブの醜い王か。ちげぇねぇ。大体、そう言う奴が市民を苦しめるって、相場は決まっているよな」
とアーノルドは頭の後ろを掻きながら答えた。
’アーノルドが言う様に、世の中が単純なら世話ないけどね’
と僕は思いながら、
「まずは小ゴーレム達を展開してみよう」
とゴーレム達に進んでいく様命じた。
そして、数体が簡素なシャンデリアの下あたりに来た時、周りのドームの数カ所が開いた。それは、開いたと言うより、壁が消えたと言う感じだ。
アーノルドは、開いた中に何かの気配を感じて、
「おっと、サリエの言う通り、お出ましだ。デブ王の言葉はなかったがな」
と言いながら、大エルフラーマを抜き、正眼に構えた。
シェリーは、まだ、鞘に収めたまま、左手を柄の上に置いたままだ。
カツカツカツ
―――金属同士が当たる音―――
入り口で見たゴーレムが八機出て来た。
三つの目が周り、光線で僕たちの小ゴーレムを攻撃し始めた。数体がやられた。しかし残りの小ゴーレムが、ファイヤフレームで応戦し、一体の頭を吹っ飛ばす。
シェリーは素早く、敵ゴーレムの後ろに、次々と瞬間移動し、エルステラを一瞬だけ抜いて、三つの頭を落としていった。
アーノルドは、敵の放った光線をエルフラーマで鏡の様に反射させ、高音の火炎を纏った重力波を当てて、頭を切り飛ばした。
そして、斜め右から長く鋭い腕を使って、切り込んできた敵ゴーレムの懐に入り、顎の下から大エルファーマを突き刺した。
敵ゴーレムがナウムさんに光線を発射したが、ナウムさんは半身を斜めにして躱した。そこをサリエさんが、低い姿勢で間合いに入り、蛮刀で首の付け根を狙って切り上げた。
ガッ
と金属がすり合う音がして、首が半分もげて、ブラブラしていた。
残り一体は僕が三つの目に時空矢を立て倒した。
ナウムがサリエに向かって
「今度は、上手く言ったわね」
と労りの言葉をかけていた。
「ああ、しかし、アーノルドさんも、シェリーさんも驚くほど強いな。俺はまだまだだなぁ」
とサリエはナウムの方を抱きながら、二人を見ながら答えた。
「いや、おめぇの大したもんだ。シェリーは別として、お前と俺は互角だろう」
とアーノルドがエルフラーマを鞘に収めながら答えた。
武術家たちの論評会を余所に、僕は敵ゴーレムを観察した。
「表面は何だろうな。見た事ない金属だ。いや金属じゃないかも」
と言いながら、顕現させたハンマーで叩いて見た。
’関節以外は非常に硬い。ここでは中が見れないから、工房に持って帰って調査したいところだな’
などと考えていると、
シャー
という音と共に上に上がる階段が現れた。
「
とアーノルドが顎で示しながら言ってきた。
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