第46話 剣の製作
シン王国には、聖霊具という剣や防具を作る、ドワーフの血を引く優秀な鍛冶職人がいる。
僕は、その中でも特に優秀で、信頼の置ける人物をメリルキンに紹介してもらい、千年聖霊樹の加工の話を持ちかけた。
鍛冶職人の頭領が言うには、
「この鉱物は、ものすごく魅力的でなもし。しかし、多分溶けねえから、鋳造はむりだなもし。熱しながら鍛造で作るしかないだなもし」
僕は錬金術の高圧高温窯を提供し、一緒に製作に取り掛かった。芯に聖霊樹を守り抜いたあの土竜の髭を入れた。
そして出来上がった剣は、一番厚い部分でも髪の毛の断面、二本ほどの厚さ、長さはシェリー上半身程度、弾力性があり剣全体がしなる。試しに、磁器の茶碗を切ってみたら、僕でも簡単に真っ二つになった。
剣の表面には、錬金術とドワーフの象嵌技術の粋を集めて、祝福の大地を表す古代文字で ‘エルステラ’ が書かれている。
僕は、出来上がったエルステラをシェリーに渡し、誰もいない広場で使ってもらった。
「目一杯、気を通してみて。実戦で壊れたら、それこそ問題だからね」
とシェリーに言った。
「解りました」
と発勁した。剣が光り、その先に有った岩が割れた。
そして、シェリーは剣の套路を演舞し始めた。
最初はゆっくりだったけど、中頃からは殆ど目に見えない速度だ。時折、剣が光りその残像だけが見える。
アーノルドが横で、
「すげー、剣だな。剣もすげーけど、シェリーの剣技って、あんなに早かったのか。驚いたぜ」
アーノルドが言うには、これまでの剣では力を抑える必要があったため、シェリーの能力の十分の一も使ってなかったと言うことだ。
一頻り舞ったあと、こちらに来て、
「凄まじい剣です。大地からの気が集まるんです」
とシェリーにしては珍しく興奮気味で話をしてきた。
「多分、あそこを守っていた土竜の髭を芯につかい、祝福の大地の古代文字が書いてあるからだと思うよ」
と説明した。
シェリーとアーノルドは頷きながら聞いていた。僕もだんだんテンションが上がってきて、剣の制作過程を細かく説明し始めた。
まず、アーノルドが脱落した。耳を穿りながら、よそ見している。
シェリーは聞いてくれたが、
「やっぱり、これを作れるのは、今のこの世界では僕だけじゃないかな」
と言って、ドヤ顔をしたら、シェリーは、それには答えず、アーノルドに向かって
「一つ、手合わせ願いたいのですが?」
と聞いていた。
僕は、二人の対練を見ながら、アルカディアの方に足を向けることを考えていると、
「……ジェームズ……ジェームズ……」
僕を呼ぶ声が聞こえた。
振り返ると、ヒーナが手を振りながら、楽しそうに走ってくるのが見えた。
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