第75話 強敵撃破

《ブラッド・ドラゴン》の火炎攻撃を受けながらも僕は決して攻撃の手はやめない。

 新たに足を踏み込むとき、転がったままのレイジさんの声が聞こえた。


「ユウキくん! 行け! 君なら――出来るッ!」


「はいッ! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」



 4901!! 5182!! 6099!! 4222!! 3757!! 2997!!

    5644!! 4896!! 5311!! 4789!! 4519!! 3356!!

4998!! 6321!! 5862!! 4792!! 5443!! 5161!! 4481!!

      5001!! 4458!! 5124!! 6011!! 3799!!

  4967!! 5188!! 4576!! 431!! 378!! 512!!――



 MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! 289!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! 1180!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! 745!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! 688!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! 1206!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! MISS!! 1011!! MISS!! MISS!! MISS!!――



 僕が与えたクリティカルダメージと、回避した攻撃、受けてしまったダメージのログが嵐のように視界へ押し寄せては流れていく。

 後はもう、全力でボスを叩きのめすだけだった。

 MPが尽きるまでスキルを連発し続け、ブーストが効いている間に一気にダメージを稼いでHPゲージを半分まで削る。

 MPが尽きたあとは、ひたすら相手のスキルを妨害しながらクリティカルダメージの通常攻撃を繰り出し続けるのみ。ある程度はひかりが受け持ってくれたけど、しかし取り巻きの呪文によるダメージはどうしても止められない。やがてHP用のポーションも底をついてしまう。


 ――僕のHPが尽きるのが先か。ボスのHPが尽きるのが先か。


 ここまで来たら、気合いの勝負だ――!


「ユウキくーん! メイさんのカタキをとって~っ!」

「そんなのさっさと倒しちゃえよな!」

「ユウキくんならやれるよ!!」

「ふん、男ならやってやれ!」

「ファイトよ~ユウキちゃ~ん♪」

「が、頑張って下さいっ!」


 倒れているみんなの声援が聞こえる。


「ユウキくん、みんな一緒にいますよ! 《プリエ》!」


 そばにいるひかりの声は、中でも一番大きく聞こえた。

 みんなやられてはいるけど、パーティープレイだからこそ感じられるこの楽しさ。

 みんなと一緒に――みんなのために、全力を尽くせる。

 ソロで戦っているときよりも、こっちの方が僕には断然楽しい!



「はああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」



 両手の剣を振るい続ける。

 ドラゴンの鱗を裂き、火炎を薙いで、その腹へ跳び込む。



 そして――――――

 ――――――

 ――――

 ――





「――――勝ったああああああああああっ!」



《ブラッド・ドラゴン》が地面を揺らすように崩れおち、同時に全ての取り巻きも消えていって、直後に僕は仰向けに倒れた。達成感からか思わず叫んでしまった。


「ユウキくんっ! 《ヒール》! ――あ、え、MPがありませんでした」

「ははっ……つ、疲れた。ひかりは、大丈夫だった?」

「はい! ユウキくんが守ってくれましたからっ」

「良かった……でも、さすがに限界だ……」


 視界に残る僕のHPゲージは残り数ミリ。真っ赤に染まっており、瀕死の状態を表している。後一撃でも貰えばノックダウンしていた。一方ひかりのゲージは残り四分の一というところ。ひかりもだいぶ危なかったけど、とにかく、ちゃんと守りきれてよかった。


「ひかり。僕はいいから、とにかく先にみんなを起こしてあげて」

「は、はーいっ!」


 うなずいたひかりは、早速みんなに復活薬を投与し、みんな瀕死の状態で復活。その後、ナナミさんがカートから取り出した回復剤でみんな無事に全快。僕とひかりはみんなからお褒めの言葉を頂いてすごく嬉しい気持ちになった。ちなみにボスレアは何もでなくてがっかりしたけど……でも、あれを倒せただけでも収穫だと思う。

 でも、アイテムも少なくなったし、時間も時間だ。

 さすがに今日はこれ以上ダンジョンを進むのは難しい――そう判断したレイジさんがみんなに撤退の話をして、みんなも納得してワープアイテムで帰還することに。


「今日はとても良い冒険が出来たね! それじゃあまた街で!」

「ふん、なかなかの勝負だったな」


 まずはレイジさんとビードルさんがワープアイテムによって帰還。粒子となって消えていく。


「うふふ、とってもエキサイティングな一日だったわね~。けれど、私たちになすりつけてきたあの子たちは絶対に許さないわよ~うふふふ?」

「か、楓さん笑顔が怖いです……。そ、それではまた」


 続けて楓さんとるぅ子さんも。


「はー疲れた。つーか! マジでさっきなすりつけてきたヤツら何なんだよ! あいつら次会ったらぜってーぶちのめすかんな! デスペナの慰謝料ふんだくるぞ!」

「あはは、まぁまぁ落ち着いてよナナミ。けどそうだねぇ。おかげでメイさんたちMPKされちゃったわけだし、マナー違反は困っちゃいますなぁ~。っとと、それじゃあまたあとでね♪」


 ナナミとメイさんも手を振って消えていく。

 残ったのは、僕とひかりだけ。

 ひかりは僕の手を握って言った。

 

「ユウキくんっ、今日は、とっても楽しかったですねっ!」

「はは、かなりギリギリだったけどね。でも、そのおかげで楽しかったな」

「はいっ! それに……えっと、すごくかっこよかったですよっ!」

「ほ、ほんと?」


 笑顔でうなずいてくれるひかり。

 この顔が見られただけで、頑張った甲斐はあったなって思えた。


「ありがとね、ひかり。よし……じゃあ僕たちも帰ろうか?」

「はいっ!」


 僕たちは手を繋いだまま、それぞれにインベントリからワープアイテム――『ルーンの翼』を使って帰還。

 その間にも僕は思っていた。

 確かにさっき僕たちになすりつけてきた人たちのプレイマナーは困ったけど……でも、おかげであんなに熱い戦いが出来た。

 何より。

 

 ひかりやみんなと一緒にこんな戦いが出来たことで――僕はとても満足していた。

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