頼もしい仲間
三年の春。
楽しかった。
野球がこんなにも楽しいと思ったことなんて、それまで一度もなかった。
チームスポーツの魅力にまったく気づいていなかった。
二年の秋、俺はキャプテンに指名された。
しかしあの時は、春の選抜出場を目指して、自分の事しか考えていなかった。
それだけでいっぱいいっぱいだった。
思ったほど球速が伸びない。
スライダーが以前のように切れない。
スプリットが狙ったところに落ちない。
なかなか長打が出ない・・・etcetc。
自分の事ばっかだ。
俺の問題が解決さえすれば、チームが強くなる。
本気でそう思っていた。
上から目線でチームメイトを見ていた。
そんなヤツがキャプテンをやってるチームが、強くなれるはずがなかった。
〝 俺が俺が 〟の思い上がりを改めて、冷静になってチームメイトを見渡すと、このチームには俺よりすごい奴がたくさんいた。
倉木、暮林、佐治、島、瀬波、桜町・・・。
倉木の足、肩、勝負強さ。
暮林のパワー、広大な守備範囲。
佐治の守備力。
島の器用さ、走塁技術。
ムードメーカー瀬波の一発。
第三投手でもある桜町の制球力とミート技術。
すぐ近くに、こんな頼もしい仲間がいる事に、丸二年も気付かなかった。
そしてこのチームには、全国制覇した強豪を沈黙させたバッテリーがいる。
こんな恵まれたキャプテンもいないだろう。
春季大会。
南洋北は相当チーム力があがっていた。
初戦は倉木、暮林が打ちまくり桜町が完投。
二戦目は瀬波にグランドスラムが飛び出し、ヒロと俺の完封リレー。
といった具合で試合ごとにヒーローが変わった。
試合中、ダグアウトの雰囲気も明るく、控えの選手も生き生きとしていた。
投手としての俺も、好調だった。
90パーセントの力で、140キロを超えるストレートをコントロール出来ていたし、スライダーやスプリットの制球もよかった。
打つ方も4割以上の高打率で、チームトップの打点を稼いでいた。
俺は中学の時から、好投するとバッティングの調子があがる傾向があったのだ。
南洋北は大沢やヒロにそれほど頼る事もなく、春の静岡大会で優勝したのだった。
そして最後の夏。
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