任務 暗殺 #3
「何をやっている! セイバー1!」
後ろからアックス1の語勢が聞こえてきた。
だが、ダメージと失望感と相まって、俺は膝を落とした。
「立て!! 任務は続行中だぞ!」
「実咲……」
行ってしまった……。
「役立たずか……」
アックス1の言葉が、胸に刺さった。
振り向くと、アックス1は二体目の獣人と正面から向き合い、ショットガンを連射した。
獣人の胸が、腹が、散弾で毛皮ごと粉砕し、さらに内臓、骨、血肉が見えるまで抉られる。
高速再生よりも速く、ありったけの算段を叩き込み、ついには胴体に穴が開いて獣人の二体目は大きく倒れて絶命した。
「はあああああああああああああ!」
気合の入った叫び声。別の方向を見やる。
そこには凉平が交戦していた獣人の背骨に爪を突き立て、叫ぶアックス2がいた。
「雷撃波!(サンダーボルト)」
「あがががががががががが――」
背骨から直接電撃を叩き込まれ、物人の体毛に火が着き体を焼かれ、いとも簡単に獣人は絶命した。
「ったく、面倒かけさせんじゃねーよ」
「助かったぜ、ちび助」
「ふん、楽勝だぜ」
戦闘が終わった。
俺は、一体……。
背後から、アックス1、誠一郎が呟いた。
「無様だなセイバー1」
俺は、戦闘中にもかかわらず、任務にもかかわらず……目の前の実咲にしか目を向けられなかった。
「こんな姿では、治癒してやる気もおきないな」
アックス1、誠一郎からの侮蔑。
「…………」
「いや、話しかける価値も無かったか」
チームアックスの救援が無ければ、俺たちは何も出来ずに返り討ちにあっていただろう……。
「俺は、俺は……」
「……ふん、そのまま這い蹲っていろ」
「…………」
何も、何も出来なかった。
任務も放棄して、実咲を見失い、まともに戦えなくなって。
俺は何も出来なかった。
任務は……完全に失敗した。
――――――――――
「ブレイク」
強い口調で、鈴音はブレイクを呼んだ。
「アナタ、あの桐生香澄美という女性が、本当は麻人の義理の妹の実咲だと、知っていたわね?」
離れた距離から、セイバーとアックスたちを眺めながら、ブレイクは静かに肯定した。
「ああ、そうだ」
「何故、セイバー1にそれをすぐに伝えなかったの?」
「貴重な能力者、偶然とはいえ覚醒石に選ばれた貴重な人材だ。逃がすわけにもいかん。さらに言えば、能力に目覚めたばかりの未熟な状態で、それを知ったとしたら、麻人はなりふり構わず妹の元へ向かって言っただろう。そして確実に死んでいた」
「伝えるタイミングが今まで無かった、ってことかしら?」
「いいや、そうではない。見たか、あの情けないセイバー1の醜態を」
「…………」
「そういうことだ」
事実を語るブレイクの言葉に、鈴音は言葉が出なかった。
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