任務 襲撃 #1

 昼間のひなた時計は加奈子の元気な「おっはよーございまーす!」から始り、彼女の頑張る姿とその笑顔で店内が華やかになった。

チームセイバーはそんな加奈子との何とも無い営業で時間が進み、また緩やかに終わった。


チームセイバー

 

 洸真麻人 コードネーム セイバー1

『地』の能力者

 砂、土、石、岩石はもちろんの事、訓練であらゆる無機物を支配し操り、また武器にも盾にもできる。精神面では『斬る』事に意識が強く、さまざまなものを容易く切り裂く能力を有している。

 5年前、航空機のハイジャック墜落事件の唯一の生き残りであり、その後、ソーサリーメテオに所属する。


 鳥羽凉平 コードネーム セイバー2

『光』の能力者

 光の長所短所をしっかりと見極め、また光熱エネルギーを多彩な形で打ち出す事ができる。主に中距離遠距離を得意とし、また物質に光のエネルギーを付与して打ち出す事も可能。

 先代のチームセイバーと交流があり、全滅した事をきっかけにソーサリーメテオに所属する。セイバー2の立場を獲得。


 五十嵐防人 コードネームフレイム=A=ブレイク または セイバーA

 チームセイバーのリーダー 

『炎』の能力者

 あらゆる炎と熱エネルギーを使いこなし、第二呪文(セカンドスペル)を習得している。第二呪文の種類はアザーセルフ、火炎の龍を呼び出し使役する。

 現在と先代のチームセイバーのリーダーであり、A~Zのスペルを持つソーサリーメテオの幹部。組織最強の炎使いでもある。


 ――――――――――


 ジリリリリリリリリリ――


 非常ベルの音と回転する赤いランプがけたたましく響き渡る中。セイバー2こと凉平がクラフトセリネーゼ製薬を襲撃していた。


 今は地上から3階のあたり。そこから上はチームアックスが暴れ周り、本命である地下階へはセイバー1麻人が進撃していた。


 アサルトライフルと防弾装備とゴーグルで固めたクラフトセリネーゼの兵隊が凉平に向かって攻撃をする。


 一斉掃射を浴びる瞬間、凉平の姿が消えた。


 光の屈折を利用した透明化、さらに光の能力を使ったレーザー掃射で兵隊達をあっさりとなぎ倒していく。


 銃とは違い、正確な光の能力による攻撃は、的確に人体の急所を狙って撃ち込み、一人ひとりと倒していく。


「なあ、麻人よぉ……」

 凉平が呟く。


「俺たちは裏の住人、闇の人間だ。だけどな……」


 透明化した状態で兵隊がうろたえる姿を見ながら、一射一射、的確に兵隊を撃ち殺していく。


「『殺し』をしている俺たちだからこそ、『心』大事にしなきゃならないんじゃないか?」


 凉平のきつく引き縛ったような眼光が次の兵隊を射抜く。


「『心』を無くしちまったら、おしまいだろ? 俺たちはただの『駒』でしかなくなる。人殺しの道具でしかなくなる……だからこそ、殺し殺されるを覚悟して、その十字架を背負って、この闇の中を進んでいかなければ、ならないんじゃないのか? 『殺し』が出来る俺たちだからこそ、そんだけ自分の心を消してしまわないように、そうしなければならないんじゃないか?」


 兵隊が固まって慎重になった。無駄な発砲はせず、見えないこちらに警戒を集中して全方位に銃撃を浴びせる形を取った。


 そして凉平は唱える。


「流れる星は――」

 両手の平から急激に強い発光現象が起こる。

「炎の如く――」

 その光熱のエネルギーを、密集した兵隊たちに向ける:

「流星斬!(シューティングセイバー!)」


 無数といえるほどに、放たれたいくつもの光熱波が兵隊たちの陣に叩き込まれる。

 連鎖する爆裂音。煙の中から飛び出る血しぶき。悲鳴。断末魔の声。


 光熱波の連射が終わる頃には、クラフトセリネーゼの兵隊たちは一人残らず市外と化していた。


 床には大勢の兵隊の死体に血の海。

 自分で作った光景を目の当たりにし、凉平は最後に呟いた。


「……こんな地獄の中でも、心だけは失っちゃいけねえんだ」


 耳につけていた無線機でブレイクに報告する。

「セイバー2よりA(エース)へ。雑魚の第一波の掃討を完了。引き続き場所を移動しつつ、出来る限り多くの兵をひき付ける」


『セイバーA了解。セイバー2の行動を肯定する』

「…………」


 死体をかき分け、グチャリグチャリと血の海を歩き、硝煙の匂いで充満した中を、セイバー2凉平は歩き進んで行く。


 その手に持った能力(ちから)をもってして。

 歩き続ける。


 ――――――――――


「アンタのチームは無難に任務を進めているようね」

「あたりまえだ」


 闇色の衣を纏った女性。エア=M(マスター)~ダークサイスはブレイクの返事に肩をすくめた。


 チームアックスのリーダー。エア=M=ダークサイスこと、村雲鈴音。


「ウチの子たちも順調に上を掃除しているわ。一時間も要らないでしょうね」

「そこまで時間をかけることなのか?」


 吸っていた煙草の紫煙を吐いて、ブレイクは冷たくあしらった。


「ウチの子達は偏屈だからね。アンタの所は従順でうらやましいわ」

「ふん……」


 ビルの中にまぎれる、闇の獣たちの施設。チームセイバーとアックスが任務をこなしているビルの隣で、麻人たちからの報告を待ち、指示をする二人のリーダー。


「問題は、ブラッドアイズで肉体強化された人間……強化人間がどれだけの完成度で現れるか、かしら?」

「問題ない」

「はぁ……」


 鈴音は額に手を当ててため息をついた。


「相変わらずつまらない男ね。せめて会話ぐらい弾ませなさい」

「それは任務に必要か?」

「コミュニケーションって人として重要だと思うけど?」

「……そうか。黙ってろ」


 鈴音は諦めたように静かに首を横に振った。

 ブレイクの鉄面皮は鈴音の軽口ですら一ミリたりとも微動だにしなかった。


 ――――――――――


 チームアックス


 葉山誠一郎 コードネーム アックス1

 希少な能力『治癒』の能力を持つ。

 あらゆる傷も怪我も治し、さらには他者に自分の活力を与えることも出来る。現在の実力では、死亡直後の状態でも復活させることができる。

 またこの能力により肉体操作も可能であり、一時的に超怪力状態にもなれる。

 出自は一切不明。


 羅(ロウ)シュウジ

 『雷』の能力者。本名は 羅 星花(ロウ シンファ)

 生まれは某小国の姫。十二歳になるまで女性として育てられた、獣計十三掌という十三種類の拳法の一つ『虎の拳』の達人でもある。

 また、裏社会の組織『大崑崙』の一人息子でもあり、チームアックスは大崑崙と独自のつながりを持っている。

 能力の操作はまだ未熟なものの、共に生まれ育ってきた拳法を駆使し、任務にあたっている。


 村雲鈴音 コードネーム エア=M(マスター)=ダークサイス 

 または アックス=M


 チームアックスのリーダー

 『風』の能力者

 風、大気がある場所全てが彼女の支配領域になるその規模は最大で周囲約1キロメートル。真空の刃もしくは風の圧力を極小化して切り裂き、穿つ。あらゆる風の操作から、極小の分子原始まで動かすことから、副能力で熱も操る。

 第二呪文(セカンドスペル)はヴァリアブル。高気圧の不可視の壁を体中に展開する、一種の変身能力。

 課図少ない女性の能力者でもある。


  ――――――――――


 ガガガガガガ――

 アックス1こと誠一郎が、敵陣に向かって弾丸の雨を照射する。


 確かに機銃なのだが、異形で大きく無骨なマシンガン。兵器会社『大崑崙』の試作機……多目的変形型機銃『RZ3-EXDEAHT(エクスデス)』


 カードリッジが尽きて乱射が止まる。そして誠一郎は廊下の角に隠れ、その試作機銃のパーツを外し始めた。


 ガシャ、ガシャガシャガシャ、ガチン!


 まるで立体パズルを組み替えるように、機銃の形が変形する。そして、手の平以上も大きいカードリッジを取り付けて、エクスデスを肩に担いで廊下に飛び出した。


 その機銃の形は明らかに、ロケットランチャーの形だった。


 正面にいる兵隊たちがたじろいで、一斉に背中を向けて逃げ出した。

 その背中に向けて、エクスデスのロケットランやーを放つ。


 慌てて逃げ出した兵隊の背中に弾頭が着弾し、大爆発が起こった。


「ふむ……」


 どうやら弾頭の中には細かい弾丸が詰まっていたらしい。爆発の威力と同時に、周囲に向かって細かな散弾が飛び散って、兵隊たちに等しく死をもたらした。


「爆破の威力は低いが、殺傷能力は十分か……」


 自分が作った惨状を冷静な目で見つつ、誠一郎は呟いた。

 そこで、背後から気配がした。


「む……」


 現れたのは一人、だが身長が2メートルほどもあり、体中の筋肉の盛り上がり過ぎで、対比して頭が小さく見えるような異常な姿――


「ふむ、レッドアイズ服用者か」


 ガシャガシャガシャガシャ。


 誠一郎はまたエクスデスを変形させる。

 腰だめに構えたその形は、明らかにショットガンの形だった。


「試してやろう。人口女神(クラフトセリネーゼ)の庇護、服用者(ドラッガー)の力とやらを」


 相手は興奮しきって、防弾マスクからふぅふぅと息づかいが聞こえていた。軽く見積もっても自分よりも2倍以上はある体格の相手に、姿勢を低くして誠一郎は様子を伺う。


 服用者は両腕に鋼鉄の塊、巨大なナックルガードを装備していた。それを胸で拳をかち合わせる。

 これだけ筋肉が肥大化しているのならば、銃器などではなく、単純な接近格闘戦の方が似合うのだろう。

 手から肘までを覆う鉄の塊のようなナックルガード。一撃でも食らえば、筋肉も骨も関係なく粉砕される。


 相手が巨大なら、低い姿勢の相手とは不利になるだろう。さらに腰を屈め、低い姿勢のまま服用者に向かって疾走する。


 接近肉薄し、硬いブーツでありながらも、誠一郎は素早く精密な足捌きで動き回る。服用者がめったやたらに拳を振るうが、誠一郎のスピードに追いつけず、空ぶるばかりだった。


 そして誠一郎は難なく服用者の背後を取った。

 至近距離で相手の右腰のやや上に銃口を向け、


 ドンッ!


 ショットガンを放った。


「がああああああああああああっ!」


 内臓の腎臓と肝臓どころか、大きく抉られ、右腰部位を丸々ショットガンが吹き飛ばした。


 まるで勢いのついたシャワーの用に、服用者の無くなった右腰から血が一気に吹き出た。

 服用者は激しい高血圧状態になる。その圧力から開放された血液が、絶え間なく吹き出し、体がどんどん縮んでいった。


 最後にトドメといわんばかりに、誠一郎は相手の後頭部に銃口を当てて・


 ドンッ!


 服用者の頭を後ろから吹き飛ばした。

 絶命した服用者の体が倒れ、もう人の形にもなっていない服用者をまじまじと見つめた。


「散弾型は少々威力と反動が強いようだな……」

 あくまでも冷静に呟き、多目的変形型機銃エクスデスを持ち直し、誠一郎はその場から移動した。

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